パーティから追放された雑用係はスライム無限増殖スキルに目覚めた! レベルアップして見返すために永遠にスライムを作って倒してを繰り返したら、世界がスライムだらけに! だから、責任取って全て駆除します!

うんこ

第1話 何も出来なかったいくじなしの私は、パーティをクビにされて、今日もソロ。

 ギルドは今日も人でごった返していた。

 人混みをかき分け、私は掲示板を目指す。


「危ねぇな、ねぇちゃん!」

「すっ、すいません!」


 肩がぶつかった男に頭を下げる。

 その拍子に自分の白銀の髪が頬にパラりと当たる。

 両親から譲り受けた自慢の髪。

 私は両親のことを思い出すと、自らが戦う理由を再認識し、気持ちを奮い立たせる。

 掲示板には今日も仕事の案件が沢山貼り出されていた。

 仕事の案件はクエストとも呼ばれる。

 案件の依頼主は村の村長だったり、裕福な金持ちだったり、規模の大きいクエストになると一国の王だったりする。


「えっと……」


 私は上から順に自分が求めるクエストを目を皿の様にして探す。

 ランクはクエストの難易度を表している。

 一番難易度が低いランクKから始まってJ、I、H、G、F、E、D、C、B

……そして最高難度のAに向かう。


「あった!」


 スライムをメインにしたクエスト発見。


『ランクF イスタル村を襲うスライム討伐』

『ランクE マウ洞窟に巣食うウオータースライム討伐』


「私じゃ無理だ……」


 私の様なレベルの低い治癒魔法使いはランクJかIのクエストをこなすのが関の山だ。

 私のレベルにピッタリの、スライムをメインにしたクエストはないのか。

 更に探索する。


『ランクJ コンヤガヤマダ村を襲うゴブリン討伐』

『ランクI イタヲ海岸に出現するサファギン討伐』

『ランクH タオ山に巣食う子竜チャイルドドラゴンを討伐し、その牙を手に入れる』


 私はスライムと戦いたい。

 それが私の目指してる戦い、否、復讐だ。


「何だよ、最近、スライムばっかりだな」


 聞き覚えのある声。

 私は少しだけ振り返り確認する。

 そこにいたのは道着に黒帯を締めた武闘家。

 

「仕方ないでしょ。ここ半年でスライムが異常繁殖したんだから」


 そう言ったのは、武闘家の隣にいる妖術師の女だ。


「あれ? メディアじゃねぇか?」


 武闘家の男が私に気付いた。

 私は緊張と気まずさで肩に力が入った。


「あら、出来損ないの治癒魔法使いがこんなところで何してるのかしら? まさかソロでクエストに挑もうとでも?」


 妖術師の女が嫌味を言ってくる。


「くっ……」


 私はローブの裾を握り締め、怒りを堪えた。

 悔しい。

 だけど、あの時、私は何も出来なかった。

 倒すのを夢に見たほど、憎らしいスライムを目の前にしたのに。


「おい、お前ら、油売ってる暇なんかねぇぞ!」

「はっ、はいっ! ブラウン様!」


 武闘家と妖術師を敬礼させたのは、黒光りする鉄の甲冑を着た戦士だった。

 彼の横には白いローブを着た治癒魔法使いの女がいた。

 2メートルはある大男のブラウンは一瞬だけ私を見下ろすと、踵を返しギルドの受付に向かって歩いて行った。

 妖術師と武闘家があたふたとその後を追う。


「ほっ……」


 私は昨日まで彼らのパーティ『社の畜』に所属していた。

 だけど、


「お前は使えない」


 という理由でクビにされたのだ。

 ブラウンの横にいたのは新しい治癒魔法使いだろうか。

 どちらにしても……ソロになった私はこうしてフラフラしている。

 仲間と自らの戦いを求めて。


つづく

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