第3話
夕刻、カミラは鐘楼の上に来ていた。一人で見下ろす、赤く染まりゆく街並みはお気に入りの風景だった。頬を撫でる風が心地よい。
カミラはふと、違和感を覚えた。よく見ると鐘の向こう側に人影がある。
「誰か、いらっしゃるのですか?」
「これは意外なところでお会いしましたね、カミラ様」
「まあ、コリー様」
鐘の向こうにいたのはコリーだった。
「貴方もこの場所がお好きなんですか?」
「ええ、コリー様も?」
「はい」
夕暮れ色に染められたコリーの髪は美しかった。
「カミラ様、お一人でこのようなところにいらっしゃっては危ないですよ」
「私は大丈夫です。コリー様こそ、一人でこんな所にいらっしゃって大丈夫なのですか?」
コリーは優しく微笑んだ。
「たまには一人の時間を楽しみたいのですよ」
「そうでしたか」
二人は何も言わず、青く染まっていく街並みを見下ろしていた。
カミラとコリーは夜になる前に塔を降りた。
塔を降りるとカミラはコリーに言った。
「先日はコリー様のおかげで、この身長を誇らしく思う気持ちになれましたわ」
「そうですか。それは良かった」
カミラは遠慮がちに聞いた。
「コリー様は……身長で悩まれたことは無いのですか?」
コリーは少し考えた後、答えた。
「そうですね。あまり気にしてはおりません」
コリーはカミラを見つめていった。
「カミラ様は美しいですね。舞踏会でも目立っていましたよ」
「そんな。からかわないでください」
カミラは目をそらした。
「それに、趣味も合うようですし。また、お話出来れば嬉しいです」
コリーはにっこりと笑った。カミラはその笑顔にドキリとした。
「それでは、またお会い致しましょう」
「ええ、ごきげんよう」
コリーは王宮に向かって歩いて行った。
カミラは顔のほてりが冷めるまで、その場に立ち尽くしていた。
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