王子、婚約破棄してくださいね

アーエル

もう何もかも手遅れです

「王子、婚約破棄してくださいね」


王子と婚約させられてから窮屈すぎる日々を過ごしてきた。

そんな日々から自由になりたい。

そんな私は我慢の限度を超えていた。


「えっ……? あ、ちょっとまって」

「何故ですか?」

「何故って……そんなこと私は認めない」

「そんなことって? 婚約破棄にあなたの意見なんか関係ないんですよ」


私が婚約の際にひとつだけ望んだこと。

それは『正当な理由がある場合、下位である私から婚約破棄ができる』というもの。

この国では同じ人と再婚約は結べない。

私が婚約破棄を申し出た時点で縁は切れている。

昨日の時点で陛下に申し出て認められたのだから。

切れた赤い糸は二度と結ばれない。


「正当な理由……そんなものはない」

「本気でそんなこと仰っているのですか?」

「……何が理由だ。私が直せることなら」


まだやり直せると思っているのだろうか?


「王子。…………もう何もかも手遅れです」




*:,.:.,.*:,.:.,.*:,.:.,.。*:,.:.,.。*:,.:.,.。*:,.:.,.。*:,.:.,.*:,.:.,.*:,.:.,.*:,.:.,.。*:,.:.,.。*:,.:.,.。*:,.:.,.。




私は自室で謹慎させられていた。


婚約者からつきつけられた婚約破棄が信じられず、学園を抜け出して父に理由を聞き出そうとした。

しかし父は理由を教えてはくれず。


「自分の罪と向き合え!」


そのひと言で私は自室に謹慎させられることに。

その日からすでに5日。

いくら考えても自分の罪に心当たりはない。


「私が何をしたというのだ」


いくら考えても思い当たることはない。

しかし、私の有責による婚約破棄は成立されている。

では何が悪かったというのか。


「アントニオ王子、食事をお持ちいたしました」


私の従者だったグレン。

今の私には従者はいない。

「王族でいる資格はない」として外されたからだ。


「グレン。私は一体何が悪かったというのだ?」

「それはご自分でお考えください」


今まで親身になってくれていたグレン。

彼の様子は何故かよそよそしい。

部屋から出してもらえず、食事も部屋に運ばれるようになった。

隣に風呂とトイレがあるから食事さえ運ばれれば生きてはいける。

しかし、誰からの世話も受けられない。

グレンも食事を乗せたカートを持ってきただけで去っていった。


「私がいったい何をしたというのだ……」


独りつ。

それに返る声はない。

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