とある商人の男と、その妻となった化け猫の娘の、その馴れ初めからの一部始終を語った物語。
アジア風の世界が魅力のハイファンタジーです。
連作シリーズのうちの一作という位置付けではありますが(シリーズ一覧は作品紹介文を参照)、エピソードそのものは独立しているため、それぞれ単品で楽しめます。いずれも短編で読みやすく、また魅力的な作品なのでお勧めです。
魅力はやはり舞台設定、そのリアリティというか説得力の凄まじさ!
単純に設定の練り方・詰め方が徹底されている、というものももちろんあるのですけれど、でもそれ以上にその書き表し方、「その世界に住む人間(の語り)」の皮膚感覚がすごい。
まったく作り物めいたところがなく、そのうえできっちりファンタジーを感じさせてくれる、この魅力はやはり本作(あるいは本シリーズ、ひいてはこの作者さん)ならではのものだと思います。
危険な怪物退治を宿命づけられた人の物語なのですが、でも本作そのものはラブストーリーであるところも好き。
どこまでも優しく穏やかな恋のお話。さりとてただの惚れた腫れたのラブロマンスではなく、ファンタジーなればこその恋愛を描いているのがたまらない作品でした。