5. 心の準備とダンダラココと粉とんとん
あ……すみません、続けます。
おほん。
ユエさんは朗らかでしたが私はどぎまぎしてました。雨宿りしようと入った家にユエさんがいて、日は暮れてて、二人きりです。私にも心の準備が必要でしたが「早くこっちあがっておいでよ」とユエさんはその暇をくれません。
高床の中二階なんて普通は寝床ぐらいしかありませんから、私は期待半分、緊張半分で急な
中二階では、
「気をつけろって言ったのに。わたしがいなかったら、朝にはこの世とさよならしてたよ。ほら、座って」
そして、ユエさんは
「ダンダラココ。家オバケ。わたしたちはそのお腹の中にいます。このモノの怪のいいところは、
「すごいですね、住みたい」
「ね。で、悪いところは、まぁ、モノの怪だしね。中に入った人を食べることです。そうならないように、今からきみに粉を
両の瞳が近いです。薄暗い所なので、猫の瞳も丸く開いています。一年ぶりにうわーっ、となりまして「近づきすぎだと思うんですよね」と言いましたら「目ぇ閉じて。粉が入るよ」と返されましたので、従います。おでこに粉袋をとんとんされました。
「変わった匂いしますね。
「いろいろだね。この匂いでダンダラココを誤魔化して、朝までぐっすり」
「モンチャンには何もしなくていいんですか?」両の瞼にとんとん。
「モンチャン
「ユエさん、いつもモノの怪の腹ん中で寝るんですか?」鼻の頭にとんとん。
「まさか。ダンダラココは季節モノだよ。今日は運がよかった」顎の先にとんとん。
「あの、ユエさん」
「なに?」
「私と暮らしませんか?」
「──はい、おしまい」
おしまい、が、粉
雨と心臓の音ばかり聞こえていたのを覚えています。
頼りなさげにユエさんが私から目をそらし、目を泳がせ、ぎゅっと目をつぶり、再びその両目を開いた時には、力の抜けた、呆れたような笑みが浮かんでいまして、こう言われました。
「きみは、急に、そういうこと言うよね」
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