化け猫をまつ
帆多 丁
1. 平笠と鎖骨と鼻
妻は美しいひとでした。
いや、過去形で語るのもおかしいですね。妻は存命です。
美しいひとですよ。
右目に猫の魂を、下腹に魔女の魂を抱えて妻は生きています。
美しいひとですよ。
さてですね、今から始まるのは私のノロケ話なんですが、お
──そうですか。では、こっぱずかしくもありますが、こんなところで出会うのも何かの巡り合わせでしょうから、お迎えが来るまでの間、精いっぱい語らせていただきましょう。
おほん。
いま出会いだの巡り合わせだのと申し上げましたが、私と妻の出会いは痛みを伴うものでした。
鎖骨と鼻が、ごつんと。
忘れもしません、雨季が明けたばかりのカンカン照りの日でしたよ。私は内陸から港の方へと下っていましてね。盆地で買い付けた
あ、
で、その
それでまぁ気分も懐具合もよくなりましたし、なんか面白い物でもありゃしないかと、
そしたら、空に
ああ、
よーく見て、よーく狙って、それ。
すぽん。
ごつん。
「ぎゃ!」
これが初めて聞いた妻の声でした。
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