魔性の湯
第20話 退屈は人を殺すと言いますが
私は、彼を何度か
「冒険者?」
窓の外を見やる私の
聞いたことがある。誰も立ち入れないような魔物ひしめく秘境や
そう聞けば、
九割九分、王宮と関わりがない奴らである。
そんな奴が、なぜ王宮にいるのか?
「何でも、オンバの森の奥にある黄金の果実を取ってきたようです」
「へぇ」
オンバの森といえば、アドベント国の南の方にある、立ち入らずの森である。その
ほんの
けれども、そんなふうには見えないけれど。
「その
「お兄様が?」
物好きだな。
ロビン第一王子は、次代の王として、文武ともに優秀な男だが、ごろつきと遊ぶわるい癖があった。王としての品格が
あれも、その一人というわけだ。
「ねぇ、チシャ。あいつ、私より強いのかな」
「私に武術の
「そうよね」
結局のところ、あの冒険者も、王宮の外でそこそこ強いという程度の話。ロビンの遊びの
「ねぇ、チシャ。何かおもしろいことはないの?」
「今日はバイオリンのお
「ラスキンか。私、嫌いなのよね」
「ラスキン様は、背も高く、雄々しく、武術も
「なんか
「アリス殿下より強いお方となると、この世には存在しませんから、あの世から探すことになってしまいます」
「あはは、おもしろいこと言うわね、チシャ。そうね、歴代の英雄と手合わせしてみたいわ」
「手合わせではなく、お見合いの話をしているのですが」
「冗談よ。まったく、お母様みたいに、お見合いお見合い言わないでよ。もう耳タコなんだから」
「ご心配されているんですよ」
「はぁ、そもそも結婚っておもしろいの?」
「さぁ、私はしておりませんので」
「無責任ね」
「申し訳ございません」
きっちりとした制服を着こんだ騎士団長と並ぶと、冒険者のみすぼらしさが余計に目につく。それはそれで、少しおもしろいけれど。
はぁ。
「退屈ね」
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