大日本帝国に転移したから、初手ソ連やるわw

リヒト

中国協調

「満州を認める。ただこれだけでいいんだよ。蒋介石くん」

 俺は自分の目の前に座る蒋介石に冷たい視線をぶつける。

「それが我らにとってどれほど厳しい選択か……!」

 蒋介石は目を血走らせ、俺を睨む。

「ふむ。ならば我が国と戦争するか?」

「望むところだ!日本など!中国大陸から叩き出してくれる!」

 蒋介石は力強く宣言し、拳を机に叩きつける。

「ふふふ、そんなこと。朽ちた獅子にできまい」

「中華をなめるなよ……!」

「ふっ。そのとおりだな」

「何?」

 俺が蒋介石の言葉にうなずいたことで、蒋介石は疑問の声をあげる。

「なぁに。その言葉通りだよ。中国の人口は膨大。我が脆弱なる帝国陸軍で滅ぼせるかどうか……」

「な、なんだ……?」

「何をそんなに怯えている?俺は貴国のことを高く評価しているのだよ。膨大な人口を以て頑強に抵抗されてしまえば、貴国を落とすよりも先に日本が音をあげてしまう」

 ただひたすらに蒋介石は俺の発言の意図が読めず、困惑する。

「だが、中華をボロボロにするくらいならできよう。さぁ、そこで問う。中国共産党に勝てるのか?」

「な、何?」

「なぁ、蒋介石くん。君の敵はなんだね?日本か?」

「あ、あぁ!そうだ」

「いや、違うよ。蒋介石くん。君の敵は中国だ。中国統一。それこそが君の目的ではなかろうか」

「あ……」

「安心したまえ。我らが認めるように言っているのは満州だけだ。何も華北に第二の満州を作ろうとしているわけではない。中国の統一それを成し遂げるにはまず何をすべきか。よく考えることだ。日本と戦い、現在の優位性を捨ててまで国土を荒廃させたいか?戦後、ソ連の支援を受けた中国共産党に負けないと良いな。民主主義である貴国が頼るべき、英仏は戦争を恐れ、弱腰だ。ナチスのラインラント進駐を見ても明らかであろう。わざわざ向こうが貴国に対し、支援をしてくれるかな?それに戦争は国土を荒廃させ、労働者を苦しめる。苦しめられた彼らが革命を起こさないと良いな」

「それは……」

 蒋介石も知っているのだ。ラインラント進駐での英仏の弱腰外交を。俺の言った未来もあるということをよく理解してくれたはずだ。

 というか、実際に未来には中国国民党は負けているからな。

「蒋介石くん。あなたに与えられた選択肢は2つだけ。敗北か。日本との協調か。さぁ、どちらを選ぶ?」

「わかった。……従おう。私は日本との共存を選ぶ」

 はい、キターーー!日本と中国の共存ルート!

 もともと蒋介石は親日的な人だったから、行けると思っていたのだ。

 まぁ、予想以上に抵抗があって、どうなるかとヒヤヒヤしたものだが。

 これで俺のハーレム構築に一步前進だぜ!

「えぇ。これで我々はすでに運命共存体です」

 俺は今まで蒋介石に見せていた冷淡な表情を和らげ、温かい笑みを浮かべる。

「はい」

「では、早速ですか。あなたに日本の生命線を託します」

「何?」

 突然日本の生命線を託すと言われた蒋介石が眉をひそめる。

「なぁに。簡単な話ですよ。日本の生命線と言われている満州の防衛。これをあなた方日本に頼みたい」

「満州の防衛を我らに……?一体何を?」

 俺の発言の意図を理解できない蒋介石はただただ困惑し、首をかしげる。

「先程、赤の脅威についての話はしましたよね?」

「あ、あぁ」

「その赤の脅威から中国を守る簡単な方法。最も効果的な攻めの一手」

「ま、まさか……」

 ようやく俺の意図を理解した蒋介石が体を震わせる。

「そうです。我らはソ連に対し、宣戦布告します」

「無茶だ!」

 蒋介石は立ち上がり、叫ぶ。

「そうでしょうね。シベリアの不毛な大地を進み、モスクワに到達するなどとてもとても」

「あぁ、そうだ」

「だが、ドイツからなら?」

「な、何を?ソ連とドイツは現在友好的な関係を」

 そうだ。ドイツはソ連と友好関係を構築しているのである。

 俺がヒトラーに頼み込み、ソ連との友好関係の構築を最優先で行って貰ったのだ。そして、1937年時点で不可侵条約の締結まで行ってくれている。

 だからこそ、だからこそ、

「であるからこそ、東方の兵力は薄くなるのです。。もうすでにドイツからに軍事通行権は貰っており、秘密裏にドイツへの日本陸軍主力の輸送が完了しています」

 まだ実際には完了していなが、完了していると言い切ってしまったほうがインパクトがあるだろう。

 それに、日本の主力がもうすでに欧州にいる。その事実が日本の信頼の証になるだろう。多分。きっと。おそらく。

「なるほど。だからこその満州の防衛」

「はい。そのとおりです。日本軍主力がソ連の重要都市を落とすまでの時間稼ぎをしてもらいたい」

 わざわざ日本で初手ソ連をやるために多くの根回しをしてきたのだ。

 諜報部隊を設立。それを使い、トロツキーを守り、トロツキーが日本と協力してスターリンに反旗を翻そうとしているという話を流しておいた。

 ちなみにだが、もうすでにトロツキー暗殺は行われ、そして失敗している。トロツキー暗殺計画を推し進めたのも日本の手のものだし、暗殺を阻止したのも日本の手のものだ。

 トロツキー暗殺失敗。これを受け、スターリンのことだ。大粛清を更に過激に行ってくれるだろう。

 そして本を警戒させ、ソ連の兵力を極東に集めさせた。

 これで更に東方の部隊は減り、攻略がしやすくなるだろう。

「なるほど。確かにそれならば……!」

「我々は英帝や米帝に数多くの辛酸をなめさせられた。多くのアジアの同胞が奴らの植民地と化した。今こそ、アジアの反逆の時です!アジアを開放し、大東亜の開放を!世界の頂点に立つのは我々だ!白人が絶対ではないと!それを証明してくれる!」

「おぉ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る