ドッペルさんが普通に存在したようです
遊真野 蜜柑(ゆまの みかん)
それは突然現れた?
「もしもーし、ねぇ、今暇ー?隣町に居るんだけどこれから遊ばない?」
F県M市に居た私は隣町の地元S市でバイト終わりであろう仲良しの友人へ携帯電話から電話をかけていた。
当時20歳前後だった。
「はぁ?え?ふざけてんの?」
私はバイト中に何か嫌な事でもあって機嫌が悪いんだろうくらいにしか思っていなかった。
「マジマジ、今M市に彼氏と居るんだけど、バイト終わりでしょ?ご飯食べながら遊ぼーよ。」
「冗談やめてよ、今さっき会ったじゃん。」
私は何故友人が今さっき会ったと言い出したのか分からず困惑する。
「え?なになに?どゆこと?」
「だーかーらー、今ドラッグストア居るんだけど、そこで会ったじゃん。喋ってバイバーイってしたばっかじゃん。」
若干怒り気味の口調で説明してくれる友人に私はちょっと血の気が引いた。
「……今日、彼氏のトコに遊び来てるから午前中からM市に居たんだけど……マジで。」
ちょっといつもみたいな明るいテンション高めの声ではなく真剣な声で友人へと告げた。
「うん、だから彼氏と二人で私と今、会ったでしょ?」
友人はだから私に今、会ったと言う。
私はますます困惑する。
「いや、会ってない、今M市のゲーセン前だもん。何なら自撮り写真送ろうか?」
友人が困らせる為の冗談として言ってるのかとも一瞬考えたがこんな訳の分からない冗談や嘘を言う様な人では無い。
「何でそんなとこにいんの?30分かかるのに!?え?会ってから15分も経ってないよ?」
的確な場所を告げた私に今度は友人が困惑しだした。
「どうしたの?誰かと間違えた?」
「間違うわけ無いじゃん!!喋ってるんだよ?」
似た人でも居て適当に話合わせたのかと考えたがどうやら違うらしい。
私は頭が混乱した。
私は今、M市に居る。
なのに友人はS市で私に会ったと言う。
なんだこれ?
考え込んでしまい黙りこくっていた私に友人が口を開いた。
「あ、ほらやっぱり嘘じゃん、まだドラッグストアに居るじゃん」
はいぃぃ???
「え?ドユコトー?」
もう訳がわからなくてカタコトの様な喋り口調になってきた。
なおも友人は続ける。
「駐車場に彼氏と二人で居るんでしょ?もう、人の事からかってー………って電話してるよね?私達」
ネタバラシしなさいよーと茶化していた声がいきなり真剣味を帯びて電話中の私に問いかけた。
この頃の私はどうやらオカルト系に勝手に突っ込まれていた様で私の意思に関係なく来るもの拒まず状態の歩く電波受信塔だったらしい。
それはそれはもう、肩凝りやら頭痛やら何から何まで大変でした。
「電話してるねぇ、カケホーダイしてるねぇ」
もうこの時点で私はオカルト認定して少し落ち着いてきていた。
「目の前でアンタ私に手ぇ振ってくれてんだけど電話持ってないわ」
私のオカルト系に理解合った友人は不信感をあらわにした声で話す。
「だから私はM市に居るんだって」
そして私は隣町に居る事を話す。
「じゃぁあの、駐車場から手ぇ振ってるアンタは何よ」
「生霊?会いた過ぎて飛んでった?」
もう、軽口を言える位には落ち着いてる私に友人がちょっと大きな声を出す。
「えー、何これ??マジで意味わかんない」
「私も意味わかんな…あ!!」
ふと、思い付いた答えが出来て思わずあ!と声に出していた。
「何?」
「ドッペルゲンガーだ!!それ、私のドッペルゲンガーだよ。私その内死ぬんじゃない?」
よく聞くじゃないか。
ドッペルゲンガーに会うと死ぬって。
「ドッペルゲンガーとか嘘だと思ってたけど……ホントに居るんだね。てゆーかアンタと彼氏、歩いてどっか行ったよ」
「車までは流石にドッペルゲンガーとか出来ないんじゃないかね(笑)」
もう完全に私は楽しんでいた。
ドッペルゲンガーの目撃情報なんてそうそう有るもんじゃないし何故かわくわくしていた。
会ってみたいよ、ドッペルゲンガーに。
「ホントにさっきのアンタじゃないのね?」
友人はまだ信用出来ずにいるのか念を押して聞いてくるので私は素直に答えた。
「ドッペルゲンガーさんだね。」
「声とかアンタだったよ」
「でも私はそこに居ないからなぁ、ドッペルゲンガーと遭遇とかすごいレア体験だね」
おめでとうと告げるとはぁーとため息が聞こえ、数秒沈黙した後、友人が
「…考えんのめんどくさいから今日はパス。大人しく帰るわ。」
と告げてきた。
「わかったー、気を付けて帰ってね。」
友人に帰宅したらメールしてくれる様に告げてからこの日は電話を切った。
その後、この友人だけが私のドッペルゲンガー(とたまに彼氏のドッペルゲンガーも一緒)と数回遭遇しその度に電話で確認される事になるのだが半年程でドッペルゲンガーさんとの遭遇連絡は無くなりました。
これは本当にあった、嘘みたいなお話。
ドッペルさんが普通に存在したようです 遊真野 蜜柑(ゆまの みかん) @yukiusa09
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます