イベルメクチンは機序が不明

 現在、疥癬カイセンつまりミクロサイズのダニによる皮膚疾患の治療や、糞線虫症という寄生虫を駆除することを目的とした「イベルメクチン」にスポットが当たっています。


 インドでは新型コロナウイルス感染症患者にイベルメクチンを投与し、軽症者の回復に役立っていると断片的に伝えられています。


 ここで気をつけなければならないのは「なぜイベルメクチンが新型コロナウイルス感染症に有効なのか」の機序がわかっていない点です。


 つまり「どのような仕組みで効果が現れているのかが謎のまま」


 実際インドでは大量の感染者を出していたものの、イベルメクチンを経口摂取すると感染と死亡を劇的に減らせたとされています。


 でも抗寄生虫薬のイベルメクチンがなぜ新型コロナウイルス感染症に効くのか。仕組みがわかっていないのです。


 日本でもテレビに出ている医師が「イベルメクチンを投与させろ」と訴えています。

 それを口実に政権攻撃を繰り広げているさまは、まるで戦争を起こそうとしている主戦論者のようです。



 日本の医療では、因果関係のわからない薬を投与してはならない、という医師法があります。


 ですが「効果があるんじゃないか」と言われているものがあるのに、なにも手を打たないのも間違いなのは確かです。



 そこでまず「臨床試験」つまり「治験」を積み重ねてはいかがでしょうか。


 ある程度限られた患者に対して実際に「イベルメクチン」を投与して、実際に感染者や死者が減るのかどうか。かえって重篤な症状が出るのかどうか。

 不明な効果を期待されているイベルメクチンにどれほどの効果があるのか。


 東京都で実験をすると、日本の人口の1/10ほどの規模になってしまうため、人体実験としては規模が大きすぎます。


 これは提案ですが、現在インドよりも感染状況が悪化している「沖縄県」を治験対象とし、県民すべてにイベルメクチンを配布してはいかがでしょうか。

 まぁこれでも規模が大きすぎるんですけどね。


 少なくともイベルメクチン自体の安全性は、認可した段階で確認されているので問題はないはず。

 ですが、新型コロナウイルス感染症にイベルメクチンを使ったときの安全性は確認されていません。

 もし本当にイベルメクチンが新型コロナウイルス感染症に有効であっても、生命や身体に危害が及ぶようなら認可できない。

 これが厚生労働省の認可基準です。


 「沖縄県」が大きすぎるのなら「沖縄市」だけに限ってもよいでしょう。

 少なくとも、イベルメクチン推進派は、この治験で死者や重篤者が出ても文句は言わないはずです。自分たちが言い出したことなのですから。

 自分たちで囃し立てたにもかかわらず、万一死者が出たら政府を攻撃する。

 現在の医療現場を見ると、それがまかりとおっているのが現実です。


 「イベルメクチンを寄越せ」と言いながら、もし自分たちが投与した患者が死んだら「なぜイベルメクチンを寄越した」と難癖つけるのが今の医療です。



 これでは政府もイベルメクチンには慎重にならざるをえません。

 実際、インドで効果があったとされていても、治験が行なわれたわけではないのです。

 おそらく効くんじゃないかな、というインドの医療現場がたまたま投与していて効果があった、と言っているだけ。

 もしかすると新たな変異で感染力と致死率が下がっている可能性もあります。


 だから日本で「イベルメクチンを使わせろ」と言っている医師は、全員責任をもって治験に参加してください。

 自ら手を挙げてでも「治験をやらせろ」と言うべきです。


 責任を負うつもりもないのに「イベルメクチンを使わせろ」は、ヤクザの言い分と大差ありません。


 どうしても「イベルメクチンを使わせろ」というのなら、そういう医師たちを集めて「大規模治験をやらせろ」と言うべきです。

 まぁ実際に治験をやるのはイベルメクチンを開発した大村智氏か、販売している会社でなければなりませんけどね。

 当の大村智氏もイベルメクチンがなぜ新型コロナウイルス感染症に効くのかは謎だと語っています。

 ただ「効果がありそうだ」と伝え聞いて「それなら治療に使ってはどうか」と提案しているだけ。

 そう思うのなら、あなたが主導して「治験」を行なうべきなのです。


 ノーベル生理学医学賞の方をつかまえてなんですが。

 少なくとも開発者には、「イベルメクチン」が本当に新型コロナウイルス感染症に効くのかどうかを確かめる責任があります。

 もし効かないのなら「イベルメクチンは効きません」とデータを元に主張できるからです。

 効くとわかれば、世界中が新型コロナウイルス感染症に怯える生活から脱却できます。



 今必要なのは「イベルメクチン」の治験を行なって機序を明らかにすることです。

 噂だけで「イベルメクチンを使わせろ」と難癖つける医師たちも治験の計画に参加させればよい。

 そうすれば、自然と治験人数を増やせますよね。


 問題は「効きそう」と言われている薬を試しもしないことにあります。

 厚生労働省が主導できなくても、医師有志に治験をやらせて厚生労働省がデータを管理するだけでも前進できるはずなんですよね。


 治験をどう乗り越えられるのか。

 医学界は感情論でない落としどころを見つけてください。



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