第8話 黙々と

 恵太郎がダイエットを開始してから二日。

恵太郎の努力はまだまだ続く。

恵太郎が毎日していることは、毎朝10キロのランニング、そのカロリーのマイナス400キロカロリーの朝食。

そして登校時にまた走る。

一昨日からこの繰り返しだ。


「恵太郎、お前……汗凄えぞ?」


「え? ああ、うん。走ってきたから……」


「はあ? なんだよそれ。どういう風の吹き回しだよ。ほら、タオル。」


「ああ、ありがとう、良太郎。」


恵太郎は良太郎からタオルを受け取り、汗を拭った。


「しっかし、お前がダイエットねえ……昔からお前、ぽっちゃりしてたからさー、アレだけどよ……なんでやり始めた? 急に。」


「あー……色々あってね……」


「あー、なんか言ってたな、恵太郎。その人に振り向いてもらいたい、ってオチか?」


「そうそうそう。……その人は……死ぬほど努力してるから僕も負けてられないな、って。」


「ガチインキャのお前が恋、ってなかなかねえだろ……まーでもいいんじゃねえか? 恵太郎がやっと前に進んでくれたってだけでよ……俺は嬉しいよ。何年恵太郎と一緒に居たと思ってやがる。……でも俺も負けてらんねーな。……絶対に剣道部のエースになってやるって、思わねえとよ。頑張れ、恵太郎。……だってよ、デブのお前が変わろうとしてんのに友達《ダチ》の俺も頑張らねえでどうすんだっつの。」


「アハハ、ありがとう良太郎。……そうだね、本気で……頑張ってるってこと、見せたいから。」



恵太郎と良太郎は、その後は相変わらずアニメのことで談笑していたのであった。






 さて、学校から自宅に帰るときも恵太郎はランニングを欠かさない。

そして間食も摂らないという徹底ぶりだ。

そのカロリー計算も怠らない、まさにストイックぶりは目を見張るものがある。

その後でいつもの腕立て、腹筋、背筋、スクワットも欠かすことがなかった。

慣れてきたのか、最初よりは出来ているのではあるが、それでも目標の30回には遠く及ばない。

だがそれでも恵太郎は、弱音を吐かずに黙々と熟していく。

食事の管理も母に無理を言って、動いたカロリー分マイナス1000キロカロリーの食事を用意してもらっていた。

目標体重は今はとりあえず80キロ。

恵太郎は一歩ずつ、前へと進んでいくのであった。

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