第7話 出来ることからまず始めよう。
恵太郎は、ダイエットを決意した。
凛花に振り向いてもらうために。
アレだけの努力の塊だった凛花だ、秘密を知ってしまったからには彼女に「一人の男」として振り向いてもらえなければ男が廃るだけだった。
だからこそ死に物狂いで努力し、あわよくば凛花に告白するということを考えていた。
恵太郎はスマホでダイエットと検索し、ダイエットの方法を調べる。
しかし、悉く出てきたのは食事を使ってのダイエットだった。
これでは結果が出ても、良太郎から心配されるだけなのは明白ではあった。
しかも恵太郎は見た目通りの大食いだ、食事制限をして痩せることが出来るとはとてもではないが思えなかった。
悩んだ恵太郎は自宅に一度帰り、考えることにしたのだった。
決意したはいいものの、思い浮かばずに頓挫しかけていた恵太郎。
と、ふと目に入ったのは剣道の竹刀だった。
恵太郎はケースのチャックを開け、柄を持って取り出した。
「……懐かしいな……2年前までは死ぬほど振ってたっけな……」
実は恵太郎も剣道経験者で、今よりかは痩せていた。
元々ぽっちゃり系だった恵太郎だが、剣道を右肘の靭帯を試合中に断裂したことで断念し、その辞めた反動と不完全燃焼で終わったストレスで太ってしまったのだ。
これが恵太郎が肥満体型だった事の真相である。
都大会準決勝までは行ったのだが、これに勝てば良太郎との同門対決、というところで面を打とうとして、ブチン!! という恵太郎にしか分からない音と共に逆に面を打たれて一本負け。
それが恵太郎の剣道生活の終焉となった。
手術をしてある程度治ったのだが、完治はしていない。
動かすだけでも恐怖はあった。
「……久しぶりに振ってみる、か……」
恵太郎は恐怖感を押し殺して竹刀を構える。
ゆっくりと挙げ、ビュッ!!! と振った。
だが。
「いっ………!!!」
右肘に鈍痛が走った。
これでは剣士失格だな、恵太郎はそう思ったが……剣道への熱も、ダイエットをする気持ちと共に再燃していった。
そして閃いた。
「筋トレをしてのダイエットをやってみるか……! で、腹筋、腕立て、背筋、ランニングを毎日やって……!! その消費カロリーをスマホで精算して、摂取カロリーをそれより500キロカロリー減らすようにすれば……!!」
恵太郎は水を得た魚のように、ノートに自分がやるべき事を書き記していく。
そしてそのページを丁寧に破き、冷蔵庫にマグネットを挟んで貼り付けた。
「まずやってみよう…! 僕でも出来るんだって事を、出来る範囲で証明するんだ!!」
しかし、現実は残酷だった。
その日はそれぞれ15回程度しか出来なかったのだった。
これがツケか……そう思ったと同時に、今はこれでいい、と恵太郎は思っていた。
徐々に慣らしていけばいいと思っていたからだ。
恵太郎のダイエット奮闘記が幕を開け、それと同時に恵太郎の孤独な戦いが始まったのであった。
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