面影(短編)

KH

第1話

〇喫茶店(朝)

 客の少ない店内で、ひとり腕時計と睨めっこをしている永芳礼(28)。時刻は十

 時十五分前。

 そわそわとしながら動揺を隠すようにコーヒーを一口飲む。

 そこへ店の入り口が開くチャイムの音。

 礼、慌ててコーヒーを零しかけながら

 入り口を見る。

 入ってきたのは、中年の男性でがっくりと肩を落とす礼。


礼「……らしくないぞ、私」


 礼、ため息をつきながらハンドバックから一通の封筒を取り出す。宛名は「永

 芳礼様」とあり、裏には「岸野涼介」と書いてある。

 その文字に触れて目を細める礼

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