第2話

○沖原高校・外観

 年季の入った校舎の公立高校。


○同・グラウンド

 グラウンドの真ん中で体操服姿の男女生徒が集まっている。そこで二人組でストレ

 ッチをしている燈子と遠藤広実(17)。


広実「それでさ、今度彼氏の家に行く約束になって、どうやら親不在らしいのよ」


燈子「へぇ」


 燈子、地面に座り足を開いて広実に背中を押してもらっている。その間も離れた場

 所にいる男子の集団を見つめる。そのなかには笑っている束原の姿がある。


広実「おい聞いてるか、この」


 広実、燈子の背中を強く押す。


燈子「痛い痛い痛い痛い」


 地面をタップする燈子。

 広実、押すのをやめると束原に目を向ける。


広実「束原かぁー、また良い感じの物件に目を付けたもんだわね」


燈子「そんなんじゃないわよ」


広実「あんだけガン見しておいて否定するか」


 燈子、諦めたようにため息をつく。


燈子「好きだよ」


広実「そう素直になられると照れるわね」


 モジモジする広実。


燈子「どっちだよ」


広実「でも束原はライバル多いぜ。爽やかイケメンでサッカー部レギュラーは反則よ。普通に良い奴だし。彼女がいないのは奇跡。行くならいまよ」


燈子「あーそういうの興味ない」


広実「へ?」


燈子「付き合うとか面倒なのよ。キスとかセックスとか急に生々しい話になるし」


 広実、宇宙人を見るような目で


広実「じゃあ、あんたはどうしたいの?」


燈子「どうって、片思いでいいし、遠くから見るだけで満足よ」


広実「触れたいとか、話したいとか」


燈子「ないない。面倒くさい」


 広実、わざとらしく口を押さえて


広実「ごめん、あり得なさすぎて吐き気がしてきたわ」


燈子「保健室行く? 私、保健委員」


 燈子と広実、顔を合わせて笑う。


広実「まぁ愛の形はそれぞれだけど、あんたの将来が心配だわ」


燈子「そりゃどうも」


 そこへやってくるジャージ姿の教師。


教師「おーし、マラソン大会が近いからな。今日は男女合同で練習だ。全員、限界までグラウンド走れ」


 生徒からブーイングが起きる。


燈子「もう最悪」


広実「私、一位目指しちゃうぞ」


○同

 まばらにグラウンドを走っている生徒たち。燈子、一人死にそうな顔で走ってい

 る。


燈子「マラソン、なんて、非合、理的すぎる」


 後ろから軽快に走ってくる広実。


広実「これで三周遅れですよ、燈子ちゃん」


燈子「……この、体力、馬鹿め」


広実「あはは。目指せ、五周遅れ」


 走り去って行く、広実。


燈子「鬼め、ちょっとは気を遣って」


 そこへ後ろからやってくる束原。


束原「古賀、大丈夫か?」


 束原と目が合う燈子。


燈子「っ!」


 燈子、驚いた拍子に足をもつらせ盛大に転ぶ。


束原「え、嘘。おい古賀」


 燈子、倒れたまま動かず気を失う。

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