第19話アタシ
ここが本拠地ねぇ、言われて見れば雰囲気が確かに異常だ。ヒエとヤエはアパートに置いてきた、これから先は死地だ。入口付近まで忍びより中を覗く。ソコはもう異空間だった幽鬼共が蔓延り淫獣達が集う。すぐさま車まで戻り指示する。
「突入はアタシら三人だ。残りの人は入り口までブツを運んで下さい」
「残りのブツは建物全体一周にかけて待機です!」
「オッサン! キョーコ! 行くよ!」
「おう!」
「えぇ!」
入り口までブツを運んでもらい台車に載せて異空間へと入って行く、キョーコが結界を張りアタシ達を守ってくれる。オッサンもアタシも今は台車を押す事で手が一杯だ。ブツを適当に投げつけながら奥を目指す。建物は大きくない、そんなに深くは無いだろう。また一つブツを適当に投げると淫獣が噛みつき中の液体をぶちまける。良い感じだ……キョーコの結界も、今は別物の様に光を放ち守ってくれる。顔付も険しい、オッサンもブツを適当に投げながらついてくる。
小さな部屋が見えて来た、二人に目配せし突入する。
「よくここまで辿り着いたわね……本当に忌々しい人間ね……」
「いやぁそれ程でもないですよ? ねっ二人とも!」
「良いわ覚悟なさい、幽鬼と淫獣の孕み袋として使ってあげる。男は死になさい……」
「おいおいもう少し慈悲ってもんがないのかね?」
「残念ね若ければ飼って上げても良かったのに……」
「そうかい!!」
残りのブツを二人で部屋中に巻き散らかす
「何のつもりかしら……無駄な抵抗はやめなさい……グへッ!」
顔面目掛けてブツを投げつけた
「気取ってんじゃないわよ!」
「あっあなたねぇ……ヘブッゥ!」
頭? らしき部分を目掛けてオッサンと投げつける。
「幽鬼共!! 喰ってしまいなさい!!」
全てのブツを適当に投げ込み
「引くよ! オッサン! 一発で決めて!」
「任せろ!」
「キョーコは結界を逃げ道の方向へ展開して」
「逃がすものか!!」
「撃てッ!」
オッサンの拳銃がブツを撃ち抜くと同時に来た道を走って逃げる、爆発音が聞こえる。思ったより火が回るのが早い、幽鬼や淫獣共が燃えていく
「オッサン大丈夫か!」
「逃げ切ってやるよ! 気にすんな!」
後ろから炎が迫って来る。分量考えなかったもんなぁ……炎が異空間を燃やしていくと同時に絶叫が響き渡る。
「いい鳴き声するじゃん!!」
「馬鹿言ってないで早く来なさい! もうすぐ出口よ」
「オッサン外に出たら他の人逃して!」
「勝手に帰るようにもう言ってあるよ!」
「流石! 後はアタシらの戦いだ!」
入り口の窓ガラスを突き破って飛び出すと同時に炎が噴き出す。これで中の淫獣共は燃え尽きるだろう。幽鬼共が、もがき苦しみ逃げても。女神達の力によって守られた街に飛び出すと同時に消滅していく。炎に包まれた建物の中から肉塊が飛び出してくる。醜い姿だ……
「オッサン止めの一撃だ!」
「おうさ!」
燃える建物の外壁を銃で撃つと火花が飛び、建物を囲んだ液体に火が付き炎の勢いが更に上がる。
「マキ……匂いで分かってたけど」
「ガソリンの事?」
「全く、幾ら化け物共の巣窟だからって容赦ないな……ぐっ」
「オッサン!」
「クソっ傷口が……」
「もう下がってて良いよアタシらが戦う」
「これでもまだ来るってのか?」
確かに建物は燃え続けているが……デカい気配が消えていない
「オッサン下がってて、邪魔になるから」
「チットは労れこのクソガキ、任せるぜ……俺は病院へ行かせてもらう!」
「ああ! 気を付けてね。キョーコは油断しないでね」
オッサンは車に乗り込み病院へ向かった、アタシらは燃え上がる建物を見据えている。飛び出した肉塊もよく燃えているが……炎の中から誰かが白装束姿で出て来た
「人か……な?」
姿が良く見えないが、神三角槍を構える。
「どちら様でしょうかねぇ!! それ以上近づくと穿くわよ!!」
一瞬で間合いを詰められる。速すぎるが槍で、防いだ。
「名前ぐらい名乗りなさいよ!!」
「私の名前を知らないわけが無いでしょう……貴女が!!」
炎の明かりで顔が見える……そんな……そんな
「マキが……二人……?」
キョーコが混乱しているけどアタシも混乱中だ!
「随分とそっくりに仕上げてくれるじゃない?」
「言ってくれるじゃない偽物……」
偽物!? アタシが?
「何言ってんのさ!」
槍を構え突撃するが軽く躱される。
「無駄よ偽物……貴女に私は殺せない……そう出来ているから」
「黙れ!」
薙ぎ払うと素手で受け止められた、何で!
その腕をキョーコが斬り裂く
「血が出ないって事はあなた人間じゃないわね!」
茫然としていると
「しっかりしてマキ!!」
「うっうん!!」
気を取り直し、そいつを見てみると腕がまた生えてくる。人間じゃないなら……
キョーコが私を見て
「私が相手よ!」
真三角剣を握り締めて向かって行く、光る刀身が煌めく
「愛する女を斬り捨てるの?」
「貴女はマキじゃない!!」
「酷いのね……奪われたのは私なのに……」
剣閃が乱れるが、三角剣を飛ばして応戦するキョーコを見て
「負けてられないねこりゃ……よし!」
コイツを黙らせてから話を聞くとしようか!
槍を構え直し突撃する
「キョーコお待たせ!」
「別に見てても良いのよ?」
「冗談!!」
二人がかりで立ち向かって行く、良し! アタシとキョーコのコンビネーションなら行ける!!
「本当に……嫌になるわ……偽物は愛されているのに……」
「だから何でアタシが偽物なんだよ!!」
槍で叩き付けるが数ミリ届いていない。なんなんだよコイツ!!
「返して……もらうわよ……」
首根っこを押さえられる、っ苦しいキョーコ!!
「マキを離しなさい!!」
キョーコの剣撃をコイツは片手で全て弾く。反則だよコイツ……待てよ槍が駄目なら……キョーコに念話を飛ばす。コイツの気を一瞬で良いから引き寄せて!!
キョーコが七本の三角剣を全て解放してコイツに向かって行く。息が苦し……い早く……全方位からの三角剣が乱れ飛び、斬り裂いていく力が弱った瞬間を見逃さず。腕を振り払うと同時にコイツの顔面に拳を叩きつけた。
「グヘッ!」
やっとこさ一撃入った。キョーコは肩で息をしている。
「キョーコ休んでいて良いよ、こっからアタシの時間だ!!」
「よくも私を殴ったわね!」
「殴って何が悪い!! 人を偽物扱いしやがって! 立てよ! そして歯を食いしばれ!」
立ち上がると顔面だろうがボディーだろうが構わず殴り、殴り返された。ほぼ正確に同じ所を、殴るか拳で防がれる。そんな攻防を繰り返す内に分かってきた。コイツは……
「「うああああっああ!!!」」
全身全霊の拳をクロスカウンターでお互いに吹き飛ぶ。
もう何なんだよコイツ本当に……立ち上がり近づき、白装束の胸ぐらを掴み立たせて顔面に頭突きを噛ます。
「お前は確かにアタシなんだろうさ……お前は肉体が欲しくって、今回の事件を引き起こしたんだな?」
「そうよ……私は……切り捨てられた存在……五年前に……」
なるほどね通りで、アタシを偽物呼ばわりする訳だ。元々コイツとは二つで一つの存在だったって事か。
「通りで陰湿な事ばっかりやってると思ったよ。五年前から急にアタシは吹っ切れて、今の性格になったと思ってたけど本当は……」
「お前が斬り捨てられて師匠が……ヤガミタケシが補ってくれたんだな」
「私は……消えたく無かった……生きたかった……」
女神達は知ってたな……だからきっと……ヤガミタケシをアタシから引き剥がしたんだね……
「おいアタシ!! もう一度一つになろう!! もう悲しいのは無しだ!」
その時、地の底から化け物が飛び出して来た。もう一人のアタシを抱えて逃げる
「おいおいおい何だあれ!!」
「私が根源で産み落とした獣……」
投げ捨てようコイツ
「マキ!」
キョーコが槍を持って一緒に逃げ出す。
「あれを五年前に見たわ、私達は」
って事は今叩かないと街がヤバいって事か!?キョーコから槍を受け取り。コイツを投げ付ける。
「ちょっと!!」
「ソイツもアタシだからな! 丁重に扱ってくれよ!」
槍に神気を纏わせ斬り掛かる、今度は斬れる! 気合いとともに獣の全身を穿くが直ぐに再生する。振り下ろす脚を薙ぎ払うが斬れても再生する。不味いな……
◇ ◇ ◇
マキから受け止めた娘は項垂れている
「ちょっと消えたく無ければ走って!! マキが引き付けてる間に」
「無理よ……あれは……私が根源を使い産み落としたものよ……幽鬼や淫獣を使って」
「はぁ? 貴女には肉体がないのよね? どうやって産み落としたって言うの?」
「幽鬼は私が産み出した……肉体を得る為の実験……にした知恵も授けたそして淫獣が産まれた……」
「じゃあ……あの獣は」
「結果的に産み出した事になる……」
あっちのマキは明るすぎる部分が多いし、こっちの茉希は暗すぎるし。もう面倒くさい!!
「倒せないの?」
「私にも分からないのに?」
「あれで何をするつもりだったの?」
「もう分からないの……全てを狂わせようとしていた」
「だから貴女達を引き離そうともした……なのに……なのに!!」
その頬目掛けて平手打ちをした、勿論泣くまで止めない。
茉希が泣き出す、もっとよもっと吐き出しなさい感情の全てをさらけ出しなさい。泣きじゃくる茉希を抱き締める
「大丈夫よ私が全て受け止める、茉希もマキも……怖くないわよ」
私の胸にしがみつく茉希が苦しみだし、身体から急激に呪力を吸われていく。先を見るとマキが穿いた獣が再生していく、このままだと二人共まさか!!
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