第7話餌
「アタシが囮になる」
二人が啞然としている、キョーコが叫ぶ
「駄目よ! 絶対に駄目!」
「当然だ! そんな危険な事させられるか! 八神だってきっと反対するだろうぜ!」
「キョーコ言ってくれたよね、アタシの背中を守るって。あれは嘘なの?」
「そういう問題じゃないでしょう! とにかく駄目よ!」
「大丈夫! 確認するだけだから!」
「本当に犯されるかも知れないのよ! お願いだから馬鹿な事考えないで!」
「だったら私が……」
「それこそ馬鹿言わないで」
「オッサン、キョーコ。それじゃ他の被害者が出るのを待つ? アタシは嫌だ。それに確認したい事が出来るのは、アタシだけだと思う」
「もしかすると幽鬼の目的が、わかるかも知れない」
「そんな……」
俯くキョーコに囁く
「アタシはキョーコを信じてる」
「わかった……」
オッサンとキョーコに思いついた、アタシなりの作戦を伝える。
「じゃあ俺と京子ちゃんは、遠くからマキを見張って姿が消えた後。京子ちゃんがバックアップに回ると」
「そうして、キョーコはあんまり近づかないで。二人共餌になる可能性もあるから」
「もう不覚は取らないわ」
「オッサン気配は?」
「特に動きは無いな……大丈夫だ」
「じゃあ今日は解散ね」
「わかった! 乗りな送ってやる」
アパートの玄関に入るなりキョーコが泣きついて来た。
「どうして……あなた達は………そうやって無茶をするの……八神さんもそうだった」
「師匠が守った街だ。アタシだってそれ位の覚悟は出来ている」
「よっと! ごめんよ」
そう言うとオデコをくっつける
「これからアタシとキョーコを繋げる。意識と感覚の共有までは出来ないけど。声を感じることができるハズさ」
「それって……」
「今日の夜は長くなるよ……覚悟してね」
「ごめんよキョーコ少し手荒く行くよ」
「わかったわ、任せる……」
長い夜だった……明け方目を覚ますと、アタシの横で眠るキョーコの髪を撫でる。正直怖い、私は強がって粋がってるだけの『処女』だ。女同士なら経験は多分多い方だろう。自分でも上手く抑えられるだろうか?
キョーコが目を覚ました、上手く繋がっているだろうか?キョーコの心へ向けて大声で意思を伝えてみる。
「きゃあああ!!」
キョーコが飛び起きる
「繋がってるね」
「なるほど、こう伝わって来るのね」
そう言うとキョーコが睨みつけている。
「キョーコには、まだ馴染んでないのかもね。すぐに馴染むよ」
すると諦めたように
「朝ご飯の支度するわ……」
そんなキョーコを後ろから抱き締める
「大丈夫だよ」
朝ご飯を食べ終わり、キョーコに聞いてみた。
「あのさ、ボロボロになってもいい服ない?」
「どうするの?」
「アタシ色気ないからさ〜キョーコ持ってない?」
「サイズが……」
「背丈は一緒じゃん、欲しいのは服とパンツ! なるべくエロそうな奴ね」
別に良いし……無いほうが動きやすいし……何処とは言わないけどさ……自分の胸を見る。
「エロいとか言わないで! 無いけど! もう着なくなったスーツとパンプスがあるわ。」
「じゃあ取りに行こう今から!」
催促するが、キョーコに制止される。何処かに電話してる様だ。ふぅと溜め息をついて
「今なら家に誰も居ないから行きましょう」
まるで間男になった気分だ。
「キョーコはタクシー? オッサン呼ぶ?」
「後ろに乗せてくれない?」
意外なことを言ってきた。キョーコ変わったのかな?
スペアのヘルメットを渡す。
「乗って! 槍が邪魔だろうけど我慢してね」
後ろに乗せて走り出すが。心にキョーコの声が響く
「私の家の場所覚えてる?」
どうやら繋がったらしい、嬉しくなって笑顔が浮かぶ。
「忘れちゃった! 教えて!」
そう返事をしてスピードを上げた。
◇ ◇ ◇
マキから服を頂戴と言われた。確かにこの娘の普段着は、Tシャツとジーンズ。後は靴下にエンジニアブーツ、下着はスポーツブラとシームレスショーツ。極め付けは薄汚れた男物のミリタリージャケット。
女っ気が微塵も感じられない。化粧もしていない、顔立ちは良いのに。若いって良いわね。
マキは自分が囮になる為、服と下着を欲しがっていたが……確かに身長は、マキの方が少し低い程度だけど……胸のサイズが違う事を告げると、うつむいてしまった。取り敢えず私のスーツとパンプスを着てもらう事にした。すぐに取りに行こうと言い出しているが、今日は平日念の為家に電話する。留守電に切り替わる、夫も子供も居ない。まるで間男を家に誘うみたいで溜め息が出た。マキは女なんだから……
タクシーか鷲尾さんを呼ぶか聞かれたが、後ろに乗せて貰うことにした。私ちょっと変わったかしら?
ヘルメットを受け取り後ろに乗る。槍が凄く邪魔だけれど、マキの肩にしがみつく。ヘルメット越しに会話は難しい。今朝された様に私もマキの心へと意識を集中させる。電話を鳴らすように、そして
「私の家の場所覚えてる?」
「忘れちゃった! 教えて!」
しっかりと繋がったようで嬉しい。
ナビゲートするとマキはスピードを上げて家へと向かった。
家に着く、マキを招き入れると早速本題に入る。クローゼットへ案内する、何着か着せて見る。
悪くない……正直似合ってる、完璧なキャリアウーマンに見える。色気は……あるけれど、性格を知っているだけに残念な娘に見える。ショーツとタイトスカートを履いてると、寒いと言うのでストッキングを履かせる。次にパンプスを履かせる、歩きにくそうにしている。時折、がに股になっているので残念感が増す。その姿を見て微笑んでしまった。
◆ ◆ ◆
キョーコの家に着く、スタスタと服がある部屋へ通される。色々とスーツを着せ替えられる。別に囮だから何でも良いよ。レースのパンツを渡される、アタシこういうの苦手何だよなぁ。お臍迄隠れて無いと落ち着かない。スカートも女子校で下にジャージ着てたから。このパンツとスカートだけじゃ寒すぎる。
「キョーコさぁ、これスースーして寒い!」
「じゃこれストッキング履いて」
うわぁストッキングも苦手何だよなぁ……このピッチリ感が嫌だ。
キョーコがアタシをジロジロ見てる。何か恥ずかしくなる七五三の子供の気分だろうか? 次に玄関へと行き、パンプスを履く。サイズは良いけど歩きにくい! キョーコ良くこんなの履いて戦ってられるなぁ。
「もういい?」
「そうね! アパートに戻りましょう」
「じゃ元の格好に着替えさせて、これでバイク乗ったらスカート破けるよ!」
◇ ◇ ◇
荷物をまとめてマキのアパートに戻って来た。まだ夕方の時間だが、何時もより早く出発しなければならない。早速マキを着替えさせる、マキは、体につけているお守りを全部外していく。
「そんなにつけてたの!」
全身七ヶ所にもつけていた。
「いつ不意をつかれても良いようにね、でも今回は逆だ」
着替える手が微かに震え、黙ってトイレへ行き着替えていく。口数が少ない緊張しているのだろうか?
「キョーコにさアタシ処女って言って無かったよね」
「そうなの!?」
アレだけ私を抱いてくれていた娘が処女ですって?だったら尚更
「マキ辞めましょう、幽鬼どもに貴女の大切なモノを奪わせたくない!」
「幽鬼共は喜んで飛びつくね、極上の霊気に生娘とくれば……だからちゃんと守ってよ……」
「あのさアタシ化粧とかした事ないんだよ頼めるかなキョーコ?」
「そんなの必要ないでしょう! もし何かが起きて助けられなかったらどうするの!」
「死化粧だね……」
マキの頬を引っ叩く!
「ははっ! 頬にあざができちまったよ。これじゃ幽鬼も寄って来ないかもなぁ〜」
マキが笑って化粧を催促する。
「絶対に護るって約束する」
そう言って化粧をしてあげた。
◆ ◆ ◆
キョーコに化粧をして貰った、ここまで準備すれば良いだろう。お守りも全て外してキョーコに預けた、除霊道具の入った鞄を渡す。着替えと槍をワゴン車に載せる。オッサンが心配そうにアタシを見る
「どうオッサン? アタシ綺麗でしょ過去最高に綺麗よ!」
「すまんな……」
「良いてことさ! しっかりと情報集めて来てやるよ」
オッサンの背中を叩く
「じゃ最終確認ね! キョーコはなるべく霊気を抑えて車でオッサンと待機。アタシは何も知らい女の振りをして霊気を、ダダ漏れさせて彷徨く」
「喰いつて引き込まれたら、キョーコに判断を任せる。あんまり早く突入しないでね。アタシも頑張るから」
「オッサン気配は?」
「まだ夕方過ぎだ。暗くなって来てはいるが気配は感じないな」
「じゃこの前の廃工場の辺りから行ってみるよ、そこまで宜しく!」
「わかったよ……もう何も言わねぇ良いな?」
「マキ……私ももう何も言わない」
「良いよ、行こうか!」
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