第6話修練

 アパートを後にしてキョーコさんと買い出しに行く。

「マキはその槍何時も?」

「うん大事でしょ!」

「そっか良いわね、それってヤガミさんも?」

「そうだよ、基本設計は師匠。アタシは思い出すのも嫌になる程、神木を切り倒してやった」

「白山のジジイもビックリしてたっけ」

昔話をしながらスーパーで買い物を済ます。お会計はキョーコさんが出してくれた。思ったより、キョーコさんが買い物をしてしまい二人の両手が塞がる程だった。せっせと歩きアパートに戻る。

「あっつい!」

「ほんとにね」

幽鬼を相手にしていた時でも、ここまで汗はかかない。お風呂を入れている間に、キョーコさんは朝食を作ってくれている。アタシは何時ものトレーニングと瞑想をしていた。

「おまたせ朝食出来たわよ!」

「ありがとキョーコさん!」

「食べたら私にも瞑想させてくれない?」

「良いよ! 上手く精神を合わせると、疑似戦闘が出来るって」

「いや戦闘はちょっと……でも一度は良いかもね」

「よっし決まりね、さっさと食べちゃおう!」

朝食は美味しかった、その事を伝えるとキョーコさんの顔が真っ赤になり

「良いのよ、お礼よお礼!」

とだけ言い洗い物をしてくれた。

「じゃお風呂の前に瞑想しますか?」

「良いわよ教えて?」

お互い正座をして向かい合う。後はお互いの精神を探る。一致すればそのまま精神を一つに固定、後は実践するだけだ。キョーコさんの精神を探る、アタシを探る感覚がわかる。おそらくキョーコさんだアタシの方から精神を一致させる。

「やっほー! キョーコさん!」

「きゃぁ!」

「驚かせないでよ! ここがそうなの?」

「精神世界的な? 感じ」

「? はなんなのよ」

「まぁまぁ気にしない気にしない! 構えて」

アタシは槍を構える。キョーコさんは真三角剣を構えると、小型三角剣を自分の周りで浮遊させて待機させてる。

「幽鬼だと思ってかかって来てね! じゃないとアタシが犯してあげるよ!」

冗談半分に言って突撃する。

 キョーコさんの霊気を確かめる。真三角剣から白い刀身が伸びている。ヤル気充分って所かな?槍を刀身目掛けて叩きつける。キョーコさんがそれを受け止める。霊気だけなら単純にアタシより下だろう、だけど師匠の残り香を感じる。その分上乗せって事!? 嫉妬している時だった、横っ腹に小型三角剣が三本刺さる。

「グッヘ」

吹き飛びながら距離を取る、油断した!

「マキ! どっちが犯されるかしらね?」

にゃろう、師匠の残り香に惑わされた。嫉妬心から油断する何って情けない。床を叩き立ち上がる。キョーコさんは、気付いているのだろうか師匠の霊気を。だとしたら、もう油断しない! 師匠だと思って向かって行った!



◇ ◇ ◇


 マキが突きだす連撃を、何とか凌ぎながら小型三角剣を操作する。自然と身体が動き凌いでいる。勝手に動く身体が軽い! 自分の思う通りに身体が動く。小型三角剣とも連携が取れて行く、刀身に霊気を漲らせ斬り掛かると同時に小型三角剣の攻撃! これなら躱せないはず。


ドスンという衝撃がお腹にくる。

「グッ!」

私の鳩尾に槍の石突きが埋もれてる。呼吸が乱れ三角剣が全て落ちて行く

「ごめんねキョーコさんが悪いんだよ? そんなに強くなってるから。こっちもちょっと本気出しちゃった」


◆ ◆ ◆


 やばかった超ヤバかった、ちょっと本気とか言ってたけど。割と本気だった、とんでもないよこの人。いくら師匠の力が少し乗ったからって、三角剣の連携がキツ過ぎる。幽鬼共の様に、妖気や殺気の様なモノを感じられず。正確にそして的確に空きを狙ってくる。こんな連携が出来るなんて精神的にタフな人だと思った。こりゃもっともっと修練が必要だなアタシ。そこで意識を途絶えさせた。


 二人とも肩で息をしていた。汗もかいていた。

「どうしてキョーコさん其処まで強くなれたの? 」

「さあ? どうしてかしらね一度地獄の底まで落ちたからかしら? マキだってとんでもないわよ」

「まあね、自信なくすよ! 私の修行は一体何って思うぐらいには」

息を整える

「先にお風呂どうぞ、アタシもう少しやってから行くよ。上がったら教えて! 」

 再び瞑想する、イメージする相手はキョーコさん。イメージで三倍強くして挑む。




「マキ? マキったら!」

目を開ける更に汗をかいていた、身体はグッタリと疲れていた。

キョーコさんが心配そうに覗き込んでいる。

「あっああ! 大丈夫大丈夫! お風呂行ってきます」

 湯船に浸かり思う、流石に三倍は不味かった。人の領域を超えた攻撃だった。攻撃を捌くので精一杯だった、ダメージを無視してやっと四撃しか行けなかった。でも良い修練になった。

 お風呂を出て、髪を乾かして寝室へと向かうとキョーコさんがまだ起きていた。

「先に寝てても良かったのに」

「今寝るところよ」

「じゃあお休み〜」

一つしかない布団に入る。


 少しウトウトし始めると、耳元で暑い吐息を漏らす声が聴こえてくる。キョーコさん? アタシの身体を細い指で撫で回す。Tシャツの下から手を入れられ。胸を弄りアタシの先端を。見つけようとした手つきがとても気持ち良く、我慢しきれず声が出た。

 キョーコさんの方を向く、瞳は潤んで胸の先端はシャツ越しにも分かるほど立っていた。

「キョーコさん……」

「マキ……ごめんね。でもマキがいけないのよ……工場からずっと……」

私の手をそこへと導く、既に蜜が溢れていた。

「マキは女を悦ばせるの……得意なの?」

腰をアタシの太腿に擦りつけ、漏れる声に熱を増していく。

「アタシは別に、中学以外は女子校だったからね」

「きっとモテてたんでしょうね……」

シャツを脱ぐ

「さあ私を抱いて……リビングの時みたいに……年上は嫌?」

今のキョーコさんは、正気で本当にアタシを求めている。

「浮気になっちゃう……」

キョーコが口を塞ぐ。舌が潜り込んでくる、その動きに答える。

「いいの、早くきて……」

もう限界のようだ。アタシは優しく身体をなぞる。それだけで声が漏れている、そのままキョーコが満足するまで貪り合い二人共果てた。


「マキはやっぱりモテてたの?」

「女子校ってやつはね、意外とあるんだよね

〜」

実際モテた、何処が良いのかアタシにはわからなかった。求められれば答えた。それだけだ

「マキはどっちかというと格好いいのよ。私が同級生なら間違いなく……」

キスをして口を塞いだ。

「キョーコだって綺麗じゃん? 旦那さん良いの?」

「良いのよ……私も我慢して辛いのはもう嫌なのよ。夫はもう何年も……でも私の心は身体は、もう貴女で溢れているわ」

愛が重い……こりゃやっちまったか?

「うん、気持ちは嬉しいよ。でも家庭は大切にしてよね……」

眠けに襲われる。

「じゃあ寝ようか」

「そうしましょう」

キョーコが抱きつきながら、腕枕を要求して来る。しょうがない最後まで付き合うとしますか。戦いの疲れと交わりで疲れ果てたアタシ達は、深い眠りに落ちて行く……




 オッサンからの電話で目が覚める。頼んでいた件が終わったので、これから迎えに来るそうだ。キョーコはもう先に起きて、ご飯を作って待っててくれた。

「オッサンがこれから迎えに来るってさ」

「じゃあササっと食べましょう」

温かいうどんを、二人で食べる

「ねぇマキって随分身体に色々と纏ってるわね?」

「身を護るためさ、今迄一人だったからね」

アタシの首元には五つの三角剣が連なる首飾り。三角剣の耳飾り手首と足首には、オッサンにあげたのと同じ物がついている。

「実際何度か助けられたんだ……手放せ無いよ」

「随分と慎重ね」

「油断が一番の大敵だからね!」


 外に車が停まる音が聴こえた。アレ? 窓から確認する。今日はデカいワゴン車だ運転席にはオッサンがいる。スマホですぐに行くと伝えた後。支度を済ませ、玄関を出ようとするとキョーコにキスされた。

「マキの背中は私が守る、だから私を信じて」

「キョーコなら安心だよ。さっ行こう」

 ワゴン車に近づくとオッサンが

「この車なら槍を積めるだろう?」

「いやまぁそうだけどさ小回り効かないじゃん?」

「安心して良い、今日は静かだ」

オッサンの感は確かだ……と思う

乗り込み警察署に向かう。署内は静かだったロビーで資料を渡される。

「どうなん?」

「どうもこうもそのまんまだ」

資料に目を通すと、男の性器が引き千切られている人数は。今日の被害者込で六名ほど。

「気にし過ぎかな?」

「問題なのはソレが、何処にも見つかって無いってとこだな」

「幽鬼が持ち去ったとかかしら?」

「アレをか? なんの為に?」

「それをこれから考えよ〜よ」

「ちなみに犯された女の方は?」

「病院で入院中だ、ほれ資料だ」

受け取り確認する。

被害者 北村美鈴 23歳

被害者の体に僅かに『精液』の付着を認める。

「精液ねぇまっ普通にしてたら……」

「精液だって!?」

アタシは声を荒らげた、被害者は幽鬼に犯されていた。人間じゃない普通じゃない、幽鬼に精液などありえない。

「どうした? 急に考え込んで」

「あのさ、もしかしたら何だけど……その精液って分析出来る?」

「どうかな? 一応連絡してみる、待ってろ」


 数分後一枚の紙を持ってオッサンが戻って来た。

「分析はとっくにしてたんだとよ。結果がこれだよ」

紙には分析不能と書いてあった。

「オッサン、キョーコ、アタシを守ってくれる?」

「何いってんだ急に?」


「アタシが、囮になって確かめる」

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