第2話

○倉見刑務所・中央玄関・中

 入ってくる臼井と徳村。

 受付カウンターには女性の制服警官が座っている。


臼井「ぱっとみた感じは病院だね」


徳村「元々は老人施設だった場所を国が買い取ったからな。牢をつけるのは金がかかった」


臼井「お役人みたいだ」


徳村「俺は役人だ」


 臼井と徳村、並んで廊下を歩き出す。


臼井「患者は何人?」


徳村「約三十人。人手が集まればもっと増やす予定だ」


臼井「そんなにいることが驚きだけどね」   


徳村「そうでもないさ。受刑者の高齢化率はどんどん進んでいる。それは刑務官も同じだ。医療刑務所はもはやパンク寸前。だからこそ、ここのような場所が必要なんだ。末期患者専用の、ターミナル施設がな」


臼井「受刑者に静かな最後の一時をってことか。皮肉なネーミングだね。でもターミナルケアだけじゃないだろう。難病とか一般病棟じゃ手に余る病人の体の良い受け皿に使われているんじゃないか」


徳村「さすがだな、その通りだ。くだらん行政だが任された以上、俺は結果を出さなければならん。無理を頼んだ、すまん」


臼井「いいさ。君には借りがあるしね」


徳村「いつの話だよ。ギブアンドテイクは成立してたはずだぞ」


臼井「僕が勝手に思ってるだけさ」


 そこへ慌ただしくやってくる刑務官A。


徳村「おい、どうした?」


刑務官A「徳村さん。林田医師はどこにおられますか? 診察室で患者が急変して」


徳村「診察室? 林田がいないなら誰が診察してる」


刑務官A「それが吾妻医師が診ていまして」


徳村「そいつは研修医だろ。林田の野郎、押しつけやがったな」


臼井「僕が行こう。誠司、案内を」


 徳村、舌打ちをして


徳村「館内放送で呼びかけろ。俺の名前出せば来るはずだ」


刑務官A「はっ」


 刑務官A、敬礼してから走り出す。


臼井「優秀な医者が集まってるみたいだね。さすが誠司の人望だ」


徳村「うるさい。行くぞ」

   

 走り出す、臼井と徳村。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る