奴隷奪還

ぴんくのーと

第1話 久々の再会

大学一年生の凜名りんめい美波には、ずっと忘れられない人がいた。

中学校時代に好きだった麻宮 湯地ゆしだ。


(また、会いたいな。)



湯地と初めて話したのは、二学期の席替えで隣の席になった時。

初めは静かな印象だったけど、接していくうちに気が合うなって分かって、話しかけてくれて、案外自分から話しかけてくれる人なんだって感じた。

そして私はいつの間にか好きになっていった。

でも告白する勇気もなく仲良しのまま卒業。

連絡先も分からないままだ。



(また、湯地のこと考えてた。そろそろ忘れて新しい恋に進むべきなんだろうけど、なかなか忘れられないな。)


学校帰りに、昔のことを思い出しながら帰る美波。


(こんな所に新しい店が出来たんだ。気晴らしに入ろっかな。)


このお店は、最近出来たばかりの焼き鳥屋さんで、美味しい匂いにそそられて美波は店へと入っていった。


「いらっしゃいませー!お好きな席どうぞ!」


美波は、1番奥の席に座った。


「ももとつくねとかわを1本ずつお願いします!」


「かしこまりました!」



ガラガラ


注文の品が届いた時、店にガラの悪い客が入ってきた。


「ここが焼き鳥屋か。ちっこい店だな。こんな所あったか?」


「新しく出来たんだってよ。全種類食べたいなあ。払ってくれるよな…湯地。」


美波はその言葉に驚き振り返った。


(目の下のバツ印の傷は…まさか狂大眼乱!?)


そこに居たのは、この街一の喧嘩集団「狂大眼乱キョウダイガンラン」だった。

そして、その中に湯地の姿もあった。


「どうして、湯地がここに居るの!!」


みんなが美波の方を見る。


(やばい、大きい声出しちゃった…)


「誰だお前。こいつの知り合いか?」


「そうです。顔見知りです。」


(怖すぎだよ…やばいよ…どうしよう…)


「俺らになんか用でもあんのか?」


「いいえ。ないです。いきなり大きな声出してすみませんでした。」


「そうか。ならいい。それにしても湯地に知り合いがいたとはな。こんなに役立たずで生きる価値のない人間を覚えてくれてる人がいるんだな。なんか笑えてくるなあ。」


そう言うとその人たちは笑いだした。


「アハハハッ!まじで面白いな!良かったなクズ湯地!」


「そんなこと言ったら湯地が傷つくでしょ…」


「は?」


「湯地に酷いことを言わないで!!」


「俺らに文句あんのか?殺すぞ。」


(殺されるかもしれない。でもここで後戻りなんてしたくない。目の前にずっと会いたかった人が居る。見捨てるなんて出来ないんだよ。)


「すみません。俺の責任です。殺すなら俺を殺してください。」


「何言ってんの!湯地!」


「美波には関係無いことだよ。今すぐ消えて。」


「でも…」


「早く消えろ!!」


タッタッタッ


美波は涙をこらえて駆け出した。


「行ったみたいだな。じゃあ、お前があいつの代わりな。」


「わかりました。」

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