第506話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン地下十二階へ
地下十一階では、その後も同じ様な動物系モンスターに幾度か遭遇したが、半分位の割合で戦利品を入手することが出来た。
「これ、多分間違いなく追加能力よね!」
ウルスラの顔は輝いている。それはもう嬉しそうだ。
「多分そうだ! 帰ってから俺の知り合いの鑑定師を紹介してやるけど、ウルスラ、お前この能力最高じゃねえか!」
万年金欠のユラも非常に嬉しそうだ。というか毎回リュシカを紹介しようとするあたり、もしやマージンでももらっているのか。
隣のサツキを見て、サツキの肩をぽんと叩く。
「ウルスラの追加能力に、サツキの二つ名の効果が相乗効果で出てると思うんだよな! だから多分質も普段よりいい物が手に入ってる筈だぜ!」
「本当!? お宝を入れる瓶の在庫がなくなっちゃったらどうしよう! うふふふふ!」
「おいおい、そんなことになったら俺達イケメンパーティーにドラゴンスレイヤーパーティーに更に金持ちパーティーかよ!」
「金持ちパーティー! いい響きね!」
「だろー!?」
ウルスラとユラは、金に関しては意見が完全に一致するらしい。日頃もこれ位仲良くやってもらえたらいいのに、と少々呆れ気味で一歩引いて二人のやり取りを聞いていると。
「ウルスラ、お金が手に入ったら女子寮も出られるんじゃないか?」
アールがそう尋ねると、ウルスラがキョトンとしてアールを振り返った。
「え? いやまあ出ようと思えば出られるけど、あそこ安いし。別に出ようって気は今の所ないかな」
「出たらいいのに」
「何でよ。必要ないもの」
「だって男子禁制だろ? ウルスラの部屋がどんなのか興味があるのに」
そう言ってアールがにっこりとウルスラに笑いかけると、ウルスラの首から上がみるみる内に真っ赤に染まっていった。耳まで綺麗に真っ赤になってしまっている。
「な、な、何言ってんのよっ」
「女の子の部屋ってさ、いいよね」
「お、女の子……私が?」
「そうだろ?」
「いやまあそうなんだけど、女の子……」
ウルスラが湯気でも出そうな顔をして顔を伏せてしまい、アールがそれを下から覗き込む。うおお、なんですかこの少女漫画かドラマの様なワンシーンは! サツキは興奮した。そしてハッと気付き、横のユラを見る。ユラはアールがこんなにグイグイ攻めていくのを見たら、さすがに面白くないんじゃないか。しかも通常あまりウルスラとユラは仲がそこまでよろしくないから。
すると、ユラは二人には全く関心を示さず、指を折って何かを数えているではないか。
「あの、ユラ? 何してるのかな?」
するとユラが数えるのを止め、にっこりとサツキに笑いかけた。
「この先も入手出来るだろう太陽の石と炎の石を売っぱらうと幾らになって、それを割る四したら取り分どれ位になるかなって計算してた」
「そういうのは、取らぬ狸の皮算用って言うんだよ」
「何だそれ」
ユラがキョトンとする。
「私の世界の言葉で、手にも入れてない物をさも手に入れたかの様にそういう計算をすることをいうんだ」
「まんま俺のことじゃねえか」
「でしょ」
「まあでもこのまま順調に行けば、新しい呪文書も買えるかも」
まだ買うつもりらしい。それでも手に入れたお金で豪遊しようなどと言わない辺り、ユラは見た目によらず堅実だ。
「とっとりあえず先に進むわよ!」
ウルスラが言った。
しまった、続きを聞いていなかった。どうなったんだろうと思ったが、アールと少し距離を開けているのでもしかしたら意地を張って突っぱねてしまったのかもしれない。
「うん、行こうか」
アールがにこっとウルスラに返事をした。
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