第492話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン地下十階の朝食調達へ
ウルスラが、このことは他言無用、とあまり黙っていたところで効果はなさそうな口止めをしてきたので、サツキは素直に頷いておくことにした。
「いやー、長風呂しちゃったわね」
「昨日は短かったから、ちゃんと入れてよかったよ」
「サツキがそう言ってくれて嬉しいわ」
サツキとウルスラが女湯の外に出ると、男湯の方からユラとアールがわははは笑いながら外に出てくるところだった。
「あ、おはよう二人とも」
「お、サツキ! おはよ」
「おはよう! 朝風呂って気持ちいいな!」
サツキが挨拶をすると、ユラもアールもいい笑顔でおはようを返してくれた。が、サツキの後ろに隠れてしまったウルスラはもじもじしてしまっていて挨拶すらしない。
「ほら、ウルスラ。挨拶は大事だよ」
「う、うん」
サツキに背中を押され、ウルスラが一歩前へ出て来た。
「お、おはよう!」
「おっはよー」
「おはよう。ウルスラ、よく寝れたか? 二日酔いはない?」
「うおっ……な、ない! 大丈夫! お腹空いたけど!」
「お、じゃあ良かった」
アールが相変わらずのイケメン顔で眩しい位の笑みを浮かべて言った。勿論その笑顔は十割ウルスラに向いている。
ユラは大丈夫……だろうか。サツキはさすがにこれはユラにはキツイのでは、と思いユラを見ると、視線が合った。ユラがにっこりとする。
「サツキ、朝飯捕まえに行こうぜ」
「え、あ、う、うん」
「ウルスラも腹空かせてるって言ってたし、荷物はこいつらに預けて行こう行こう」
ユラはスタスタとサツキの元に来ると、所持品全てをウルスラに渡し、自分の物はアールにぞんざいに渡した。タオルは首にかけたままだ。
「じゃあよろしく!」
「え? あ、いってらっしゃい」
「いい物期待してるぞ!」
二人は快くその場で送り出してくれた。ウルスラの顔はまた赤くなっていたが、本人が嫌がっていないのならいいのだろう。サツキは割り切った。とりあえずはご飯だ。
すると、サツキの肩に手を伸ばしてきたユラが髪の毛からまたもや雫を垂らしながら、言った。
「肉食いてえな!」
「朝から肉? 凄いね」
「今日もそこそこ行かないとだからな。しっかり食っといた方がいいぜ」
地下十一階へと続く階段へと急ぐ。ユラの足は、やけに早かった。肩を抱かれて押されてはいるが、どうしてもユラとは一歩の大きさが違う。駆け足になってきたサツキは、ユラに訴えることにした。
「ユラ、ちょっと早い!」
すると、ユラがキョトンとした後、実に楽しそうに笑い始めたではないか。サツキにはユラが笑っている意味が分からず、首を傾げるしか出来ない。
と、ユラが笑いながら理由を教えてくれた。
「悪い、早くサツキと朝の挨拶をしようと思って滅茶苦茶焦ってた」
「朝の挨拶? さっきしたでしょ?」
「とりあえず階段を降りようぜ」
ユラと階段を数段降りて行ったところで、ユラが立ち止まった。上からサツキを見下ろすと、ぽたりと水滴がサツキの顔に落ちて来た。
「ユラ、まずその頭を拭こうよ」
「サツキが拭いて」
「仕方ないなあ」
サツキは、ユラの肩に掛けっぱなしだったタオルで、ユラの金髪を丁寧に拭き始めた。ユラの髪は細いので、ぐしゃぐしゃやると絡みそうだから、丁寧に丁寧に。
ユラが、少しくすぐったそうに笑いながら、サツキに言った。
「おはようサツキ」
そうして、サツキを引き寄せるとキスをした。
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