第450話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョンの夕飯の支度
サツキとユラが地下十階に戻ると、アールとウルスラの笑い声が聞こえてきた。どうやら炊事場の方にいるらしい。
サツキ達が炊事場に向かうと、アールが大鍋をお玉でかき混ぜており、その横ではウルスラが酒らしき物を飲みつつ楽しそうに笑っていた。須藤さんはアールの足元に、ラムはそんな須藤さんに抱きついていた。あの二人も本当に仲良しだ。
「ただいま!」
サツキが手を振ると、ウルスラとアールが笑顔のまま手を振り返してくれた。
「てサツキ! 何でまた女の方になってんのよ!」
「あ、いや、お風呂に備えて、あはは」
ウルスラのツッコミを、サツキは笑って誤魔化した。まさかユラが柔らかい方のサツキとキスしたいが為に変身しましたなんて、口が裂けても言えない。何で素直に従ったんだとくどくど叱られ、ユラと引き離されるのがオチだ。出来ればこのままユラの隣にいたいサツキとしては、そうなるリスクは避けたかった。
ユラは、ファイヤーウルフを炊事場の床にドサッと置くと、法衣を脱いだ。「無垢な魂となりて安らかに眠れ」とボソボソと唱えてから一気にナイフで腹を掻っ捌く。凍っているお陰か血は殆ど出ない。皮を剥ぎ内蔵を取り出す様を見て、これまで何でもないことの様に言っている様に見えたユラの「無垢な魂となりて安らかに眠れ」という台詞も、実はユラなりに考えた結果の台詞だったのでは、と思えた。
「私も手伝う」
サツキがユラの向かい側にしゃがみ込むと、ユラが眉を潜めてこちらを見た。
「無理する必要はねえよ。顔に出てるぞ」
「無理はしても、でもこれを殺したのは私だから」
ユラはサツキの言葉をどう受け止めたのか、ユラはもうそれ以上は止めようとはしなかった。
「……水で洗い流す。バケツに水を汲んできてくれ」
「分かった」
炊事場には、ポンプ式の給水機が設置されている。地下には空洞があるのに一体どこから地下水を取っているのかは不明だが、まあそこは魔法的な何かがあるのかもしれない。
サツキが水を漕いでバケツに水を入れて持って行くと、かなり解体が進んでいたユラの手は血で真っ赤に染まっていた。
「内臓は食うなよ。胃の中に何が潜んでるか分かりゃしねえからな」
「モンスターも何か食べるんだ?」
「人間を食うやつもいるぜ」
「ラムちゃんは何も食べてないから、てっきり全部のモンスターは食べ物を食べないのかと」
サツキとユラが話をしていると、なになに? という表情でラムが寄ってきた。
「ラムちゃんはお食事してないよねってお話をしてたの」
すると、ラムが首を横に振った。
「え? お食事してるの?」
今度は頷く。
「何を?」
すると、ラムのあの訳の分からないジェスチャーが始まった。サツキにくっついたと思うと、口をぱくぱくしている。意味が分からない。サツキが首を傾げていると、ラムはサツキを指差し、ユラを指差し、そしてアールを指差して頷いてみせた。更にウルスラを指差し、今度は首を横に振る。
「あ! 分かった!」
急にユラが大声を上げた。
「え? 今のこれで分かったの?」
「ウルスラで分かった! 魔力だよ、魔力! スライムは魔力食って生きてんだ! な、そういうことだろ、ラム?」
ユラの答えは正解だったらしく、ラムがうんうんと頷いた。
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