第449話 魔術師リアムの上級編二日目の午後、一旦帰宅
今後の方針が定まったところで、祐介は先程電話を切ってしまった佐川に電話を掛け直した。
「あのさ」
だがしかし、声がまた不機嫌なものに戻っている。
「僕はやらないけど、サツキちゃんがやるって」
電話の向こうで佐川が何か言っている。祐介の眉間に皺が寄っているところを見ると、何か反対意見を言われているのだろうか。
「違う、そうじゃないよ。そんなことさせる訳ないでしょ。友達になるって」
佐川は一体何を勘違いしたのだろうか。リアムが首を傾げて祐介を見ると、祐介がこくりと頷いてみせた。ちょっとよく意味が分からないので、リアムはそのまま待つことにした。すると。
「サツキちゃんは、僕がそういった美人局みたいなことをするのは絶対に嫌なんだって!」
絶対に嫌とは言っていない。あれはむしろ祐介が嫌がっていた筈だ。だがまああれだ、そう言っておけば、全てが丸く収まるのに違いない。
「とにかく、彼女持ちの僕にそういうことさせるのは駄目だって」
どうやら、リアムが嫉妬をして代わりに名乗り出たという話になっている様だ。まあ、間違いが起きたら大変だとしか祐介には伝えていない。間違いが起きて羽田に弱みを握られたらと思って言ったことだったが、そういった受け取り方もあるのだと、今更ながらに思った。
それに確かに、祐介が早川ユメと間違いを起こすと考えると腹が立つ。なのであながち間違いでもない。
リアムだって、好きな相手には嫉妬をするのだ。
「ということで、サツキちゃんは明日からちょっとかなり綺麗になるけど、絶対惚れるなよ」
祐介よ、何を言っている。曲がりなりにも大切な同期であろうに。
「佐川は分かってない。でも分かんなくてよかった」
本当に何を言っているのだ、祐介よ。もういっそのこと電話を代わって欲しい。
「てことで橋本さんにもそう伝えて。……勿論僕は背後に控えるよ。だから出来たら橋本さんも一緒にって聞いておいて。うん。そ、羽田さん苦手だから」
それから祐介は暫く黙って佐川が話していることを聞いていた様子だ。
「あー、やっぱり会社来てないんだ、あの人。聞いたあの話? そう、それ。うん、分かった。……じゃあ明日」
祐介はそう言うと、電話を切った。ゆっくりとリアムを振り返ると、言った。
「羽田さん、出社してないんだって」
やはり羽田の話だったらしい。すると、祐介が警戒する様に辺りを見回した。
「もう今更サツキちゃんを社長にあてがおうとは考えないと思うけど、でも腹いせに何をされるか分かんないから、気をつけようね」
「暫くはそれしかないだろうな」
リアムは頷くと、暫く保留になっていた件を再度提案することにした。
「祐介、こうなるとやはり早めに魔法の効果を確認していきたいのだが」
「サツキちゃんの魔法は武器になるからね、早めにやろう」
先程まで緩んでいた空気は、もう霧散してしまっていた。
「じゃあ、一回家に帰って出直しだね」
祐介がリアムの手を握ったので、リアムはそれをしっかりと握り返した。
「頼りにしているぞ、祐介」
「頑張る」
二人は互いに頷き合うと、家路に着いた。
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