第384話 OLサツキの上級編、アールの告白

 そもそも剣で生計を立てている人間が、家の中で剣をなくすなどあり得ない。


 だが、目の前に座って頭をへへへっと掻いているこのイケメンは、実際になくして散々探してようやく見つけたのだ。


 なので、思わず本音が溢れた。


「情けないにも程がある」


 すると、横のユラがうんうんと頷いた。


「同感だ」


 アールはまだ笑っている。このメンタルはある意味羨ましいが、同じパーティーメンバーとしては一度きっちりと反省をして今後こんなことがない様にしてもらいたいものである。


 横でまだプルプルと震えながら伏せているウルスラを見て、心底同情した。本当に昨日はお疲れ様。心の中で労いの言葉をかけた。


 すると、アールが話を続けた。まだあったらしい。


「でさ、もう夜も遅いし、お腹空いたし、とりあえずうちにあった食料と酒で遅めの夕飯兼酒盛りを始めたんだよ」

「うんうん」


 とりあえず相槌を打つことにした。


 アールが身を乗り出して、言った。


「ウルスラと二人で、しかも家で飲むなんて考えたこともなかったんだけどさ、昨日午後いっぱい支度を手伝ってくれたこととかもあって、これまでウルスラってただの怖い口うるさい女って印象だったけど、いいヤツじゃないかって思ったんだよ」


 本人が目の前にいる状態でよく言えるな。サツキはビクビクしながらウルスラを見ると、やはり手がぴく、と動いた。ほら、絶対気にしてる。


「でさ、いつもウルスラってリアムリアムだったから俺とまともな話なんかしてくれなかったし、俺と話す時は大体最後はユラが『ゴリラ女!』とか言って会話終わっちゃうしさ、よく考えたら二人で落ち着いて話したことなかったな、と思った訳だ」


 アールがゴリラ女と言った瞬間、また手がピクリと動いた。怖い怖い、絶対怒ってる。


 そしてユラがまた空気を一切読まないまま、言い放った。


「話長えよ。つまりどういうことだ?」

「本当ユラってそういうとこそうだよね」

「何だよ、サツキだってこいつの話は要領得ないって思ってるだろ?」

「そりゃ思うけど、一所懸命話してるんだから聞いてあげようよ」

「かーっ! アールには随分とお優しいもんだな!」

「ユラってば」


 すると、ウルスラがドン! と拳をテーブルに打ち付け、顔を上げた。物凄い形相でこちらを見ている。


「煩い」

「ごめんなさい」


 サツキは即座に謝った。ユラは何も言わない。全く、どうしてウルスラにはこうなんだろう。


 ウルスラが今度はアールを睨みつけて言った。


「アール、余計なこと言わない様に」

「なんで? 俺とキスしたことが余計なことになるのか? ちょっと酷くない、それ」


 場が、シン、と静まり返った。え? この人今、何て言った? 


 アールは口を尖らせてウルスラを見ている。サツキは次にユラを見ると、ユラも驚いた様な顔をしてサツキを見返した。


「えーと、今なんて言ってたかな」

「俺には確かにキスと聞こえたぞ」

「だよね? 言ったよね?」

「あああああもう!! うるさああああああいっ!!」


 突然ウルスラが立ち上がると、顔を真っ赤にして怒鳴った。

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