第328話 OLサツキの中級編四日目、ウルスラの治療完了
左手にはユラ、右手にはウルスラ。この状況を誰か説明して欲しい。
助けを求めてアールを見た。するとアールが珍しく察したのか、提案をした。
「なあ、仲直りしたことだし、とりあえずウルスラの怪我を治してやってよ」
ナイス提案だよ、アール! なんだやれば出来るじゃないの! とサツキは心の中でアールを誉めた。この間までぽーっとしてた子が一体何をどうやったらここまで成長することが出来たんだろうか。
すると、ふとアールの視線の先がサツキ達ではなく微妙にずれていることに気が付いた。その視線の先を追うと、ラムが必死でジェスチャーしているのが見えた。サツキの視線に気付くと、ラムはぺろ、と舌を出したのは可愛かったが、要はアールはラムの助けを借りて場の空気を読んでいる様に見えたということらしい。さすがテイマー。
とりあえず後でラムをたっぷり褒めてあげよう、とサツキは心に誓った。
「ね、ユラ、お願い。ウルスラを治してくれる?」
サツキからもユラにお願いをすると、ユラがふ、と笑ってサツキの手を離し、立ち上がってウルスラの元に向かった。おお、素直だ。なんか新鮮。いやでも、二人の時は別に皆といる時程困らせる様なことはされなかったかもしれない。あれ?
「ウルスラ、どこが痛いんだ?」
ユラが尋ねると、ウルスラもようやくサツキの手を離して腰を触った。
「この辺りよ。青痣になっちゃってて」
「了解。ヒールライト!」
ユラが唱えたヒールライトは、須藤さんのものよりも遥かに大きく濃い緑色に光った。それがふんわりと包む様にウルスラを覆うと、ゆっくりとウルスラに浸透していき、やがて消えた。
「どうだ? 今は法衣着てないからちょっと効力が弱いかもしれないけど」
法衣を着てなくてこれなら、法衣を着たらどれ位の効果があるんだろうか。
ウルスラが恐る恐る身体を起こし、次いでパアッと笑顔になった。久々に見たあの太陽の様な笑顔だ。
「やっぱユラは回復系は強いわよね! もうすっかり大丈夫になったみたい!」
ウルスラはそう言うと立ち上がり、ぴょんぴょんと跳ねてみせた。
「だろー? ま、これのお陰もあるんだけど」
満更でもなさそうな顔をしたユラは、そう言いながらポケットに手を突っ込むと、中から一つの石を取り出して見せた。
「あれ? それってこの間の巨大アルバ蜥蜴が落としたお宝?」
アールがユラの手のひらの上を覗き込んで言った。光の入り具合に寄って七色に輝く、正にアルバ蜥蜴といった石である。
「そうか、鑑定してもらったんでしょ? 結果はどうだったの?」
ウルスラが尋ねた。そういえばそんなことを言ってた気もするが、あまりにも春祭りの間にあれこれありすっかり忘れ去っていた。
「こりゃあ、魔力増強の効果がある魔石だそうだ」
ユラがニヤリとしながら言った。
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