第277話 魔術師リアムの中級編四日目の飲み会で一致団結
何故皆一様に示し合わせた様に橋本に報告をするのか。理由は一つしかない。
「久住社長が何も手を打たれないので、唯一羽田さんが苦手な私を皆が頼ってくるんですよ」
言い切った。会社の最高権力者に向かって、きっぱりはっきりと。思うに、橋本も羽田避けとして散々皆に利用され、いい加減うんざりしていたのだろう。
「で、過去に何があったんです?」
橋本がいい声で尋ねた。橋本、田端と二人並んで久住社長に圧をかけている。久住社長はそれに耐えられなくなったのだろう、反対側に座る祐介を見てにっこりとあの圧たっぷりの笑顔を返され、その隣にいるツンツン頭の佐川を見てようやくホッとした顔をしたところで、今度は佐川が言った。
「俺が聞いた話ですと、何か麗子さんとお付き合いされる時のいざこざに関わったとかなかったとか。あとは早川さん絡みでも何かある様なことを前にちらっと聞きましたよー」
「えっ早川さんがどうしたの!?」
早川ユメのことが気になる山口が、隣の佐川の肩をゆっさゆっさ揺すった。
リアムが隣の久住社長をちらっと盗み見ると、明らかに動揺している。おしぼりを手に持ち、額をぬぐい始めた。
「は、ははは、何言ってんの佐川くん」
佐川は怯まない。むしろ非常に楽しそうである。
「俺、これは羽田さんから聞いたんっすよねー。随分前ですけど! だから何あったかなーと思ってそれとなく麗子さんに聞いて」
「お前何勝手に聞いてるんだよ!」
久住社長が怒鳴った。場が一瞬でシン、となる。周りの客も突然の怒鳴り声に驚いたに違いない、店全体が一瞬静かになってしまった。暫くして周りのざわざわ声が再度聞こえ始めたが、中には「喧嘩かな」「怒鳴る人ってやあね」などの意見も同時に聞こえた。これは勿論久住社長にも聞こえているに違いない。
佐川は、驚いた顔をしながらも、それでも続けた。強い。
「……聞いたんですけど、何だろうって首を傾げてたから、ああ、麗子さんの知らないところで何かあったんだなっていう予想はしてたんですけどね」
佐川が笑顔のまま身を乗り出した。
「久住社長、ここにいるメンバーなら他言しませんから、もう洗いざらい話してスッキリしちゃいませんか? 俺達、社長が困ってるのを見てるのは辛いんスよ」
ちっとも辛くなんか思っていなそうな表情で、佐川がぺらっぺらの台詞を吐いた。ここまで来ると見事の一言である。
橋本も援護する。
「きちんとお話してくれるなら、三階のメンバーで協力して羽田さんを何とかしてみせますよ。まあ私もいますし」
久住社長が追い詰められた小リスの様に怯えているのが見て取れたが、誰一人助けようとはしなかった。
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