第202話 OLサツキの中級編二日目、春祭りの落とし物探索完了

 イヤリングとネックレスに付いていた埃を払い、サツキはそれらを身につける。が、ネックレスがうまく付けられない。サツキが知るタイプの留め金ではなく、鉤を引っかかるタイプなのだが、はまる側の穴に入らないのだ。


「貸せ」


 見かねたユラが交代する。


「すみません……」

「サツキって不器用なのか?」

「うっ言葉が胸につき刺さる……」

「不器用なんだな。はい、出来上がり」

「ありがとう」


 へへ、と胸元のネックレスの飾りに触れた。取り戻せて、本当によかった。そんなサツキの様子をユラが呆れた様に眺める。


「しっかしえろいアクセサリー貰ってんな。一体誰に貰ったんだ?」

「え? 貸衣装屋の人がくれたよ」

「男?」

「女の人」

「ふーん。あ、サツキ明日は予定あるか?」


 話がころころ変わる。ユラがまたラムを抱え、サツキに腕を差し出したのでサツキはそれを掴んだ。


「衣装を返そうかな、と思ってた位であとは特に。何で?」

「アン・ビンデル! ……ほら、鑑定士紹介してくれって言ってただろ。明日行くか?」


 リアムの二つ名というやつだ。特にすることもないので、サツキは頷いた。


「お願い出来る?」

「分かった」


 ユラがそう言ったその時、パァン! と高い破裂音がしたかと思うと、空に昨日見たのと同じ様な花火が上がった。ピンクと赤の、可愛らしい花火だ。落ちてくる火花はチカチカと金色に瞬いている。


「綺麗だね」

「ありゃあラーメニアの薬酒配るぞって合図だよ」

「え? お祭りの開始の合図じゃないの? 昨日貸衣装の人がそう言ってたよ」

「まあある意味祭りではある」


 意味が分からない。ユラが冷めた目つきでサツキを至近距離で見下ろし、聞いた。


「そのアクセサリーをわざわざくれた貸衣装屋の奴は、説明してくれなかったのか?」

「奴って……気のいいおばちゃんだったよ」

「説明しなかったのか?」


 何だか雰囲気が怖い。何か怒ってるのだろうか? 全然そんな内容はなかったと思うが。


「あー……怖がるな、悪い。言い方がきつかった」

「え、いや、別に」


 今度は急に謝る。訳が分からない。


 ユラが聞き直してきた。


「その人は、ラーメニアの薬酒については何か言ってなかったのか?」


 あ、そういうことか。サツキが質問を理解してなかったのだ。


「飲むなら一杯までとは言ってたけど、余りにもよく喋るから聞くに聞けず、あはは」

「ふーん」

「ユラは飲んだことある? 美味しいの? 無料で配られてるって聞いたけど、随分気前いいよね」


 昨日は若者は皆グラスを持って彷徨いていた。興味がないといえば嘘になる。実はそこそこ気になっていた。


「飲みたいの?」

「美味しいなら。昨日は皆飲んでたし」


 ユラはじいっとサツキを見ている。


「な、なに?」


 すると、ふ、と笑った。


「まあ一杯なら大丈夫かな。俺もいるし」

「? うん、じゃあ飲もうか」

「はいはい」


 二人は昨日ラーメニアの薬酒を配っていた場所に向かった。

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