第124話 OLサツキ、初級編三日目の特訓は順調

 緑色のスライムの須藤さんには、よく見ると顔にも少し凹凸が生まれ、短い足も出来ていた。デフォルメされた怪獣のぬいぐるみを透き通った緑色にした感じだ。


「可愛い……!」


 ラムと同じく弾力は増した様で、ぴょんぴょん飛び跳ねてラムと喜んでいる姿が愛おしい。


「あー、サツキ? あれのどこが可愛いんだ?」


 アールが笑顔を引き攣らせて尋ねてきた。


「は? 分からないの?」

「サツキ、まるで人が変わった様よ」


 年若い者が素直に喜ぶ姿、それはサツキの大好物なのだ。それがあったからこそ、これまで生きてこれたと言っても過言ではない。


「こんな小さな子達が! 自分の意思で戦いについて行くことを選んで! レベルが上がってこんなに喜んでる姿が可愛くないと!? 貴方がテイムしたんでしょ!?」


 いきなりのサツキの剣幕に、アールは半泣きだ。


「ご、ごめんっ俺が悪かった! ちゃんと可愛がるから許してくれ!」

「当然よ! ラムのことだって結局ちっとも面倒見てないじゃないの!」

「ごめんなさい!」


 ウルスラは笑って見ているだけだ。ユラは、また目を擦ってはサツキを見ている。目がどうかしたのだろうか。


 アールが泣きそうになっていたからだろう、心配そうな顔でサツキとアールを交互に見ていた須藤さんがいきなりジャンプした。


「須藤さん!?」


 何だ何だ。サツキが驚いていると、上から緑色のキラキラした物が二人の上に降ってきた。爽やかないい香りがする。


「これ、ヒールライト癒しの光だ……」


 ユラが驚く。


「ヒールライト?」

「回復系の初級魔法だよ。まさかスライムが使えるとは思わなかったな」

「じゃあユラ用無しになっちゃわない?」


 ウルスラがズバッと言う。


「お、俺は一応もう少しレベルの高い呪文が使える!」

「死者蘇生も最近まで使ったことなかったけどね」

「仲間が死ぬ機会がなかったんだよ!」

「そういうことにしておきましょ」

「ちっくしょおおおっ」


 ヒールライトの呪文を唱えられたサツキは、いつの間にか興奮していた気持ちが収まったことに気が付いた。アールを見ると、幸せそうな笑顔を浮かべている。


「ヒールライトは、怪我や体力の回復だけなんだけど、どうもそいつの特性で状態異常解除も付いてるみたいだな」


 顎をしゃくりながらユラがジロジロと須藤さんを見ている。


「見ただけでそんなことも分かるの?」


 正直驚きだ。すると、ユラが頷いた。


「多分これ、俺の追加能力が発現したのかも」

「そんな能力あったっけ?」


 ウルスラが聞くが、ユラも首を傾げている。


「ダンジョンから出たら、鑑定してもらいに行く」

「それがいいわね」


 アールもユラも、ドラゴンスレイヤーの称号を得たことで追加能力が付与されたのか。


 サツキはウルスラを見た。


「そういえば、ウルスラってドラゴン倒した時に光ってなかった?」

「そんなのあった?」


 てへ、とウルスラが笑った。

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