第86話 OLサツキ、初級編二日目の特訓は多分順調

 合体したスライムは、蛍光の黄緑色をしておりなかなかインパクト大だ。


「お、女の子になった……!」


 アールが目をキラキラと輝かせながらスライム少女の前にしゃがみ込み、顔を覗き込む。形は十歳程の少女だが、いかんせん透けているのと、更にやはり柔らかさは変わらないらしく顔に皺が垂れてきており恐ろしく人相が悪い。


 どこかで見たことあるな、と思ったら、あの包丁を振り回して追いかけてくる人形だった。シリーズが増えていくにつれどんどんホラーがコメディ化して、ホラーが苦手なサツキでもにやけながら観ることが出来た思い出の映画である。


「固さが足りないから不気味ね」


 ウルスラは容赦ない。


「何でだよ! 滅茶苦茶可愛いじゃないか!」

「もうお前恋人それでいいんじゃね? 俺は年齢的にも遠慮しておくけど」

「え……俺、さすがにスライムはちょっと」


 すると、スライム少女が肩をがっくりと落とした。まさか、少し期待していたのか。


「あれじゃない? 固さが足りないのよ、弾力弾力」

「固くなったらとりあえず垂れなくはなりそうだな」


 ウルスラとユラが適当な意見を言い合う。


「恋人はともかく、折角だから見た目をもう少し人間に近付けたいよなー」


 アールが言うと、スライム少女が嬉しそうな表情を見せた。何だか悪巧みをしていそうな笑顔であるが、アールはそれを見て微笑み返した。本当もうこの子でいいんじゃないか、サツキもそう思った。というか出来ればそうしてもらえるとサツキが助かる。


「じゃあまあ弾力を足す方法はまた別途考えるとして、とりあえず先に進みましょうか」

「ほら、アールは前衛だろ」

「この子どうするんだよお」

「こんな弱そうな子、前衛に配置したら一発でやられるわよ」


 スライム少女は悲しそうにぷるぷると震えている。緑のスライムは我関せずだ。


「あのー……じゃあ私と一緒に行こうか? 手位なら繋いでも」


 サツキが提案した。人相は悪いが、ちょっと可哀想になったのだ。ちら、とユラを見る。


「ユラに預けるのはちょっと不安だし」

「まあ、そう思ってくれて構わないよ」


 ユラはあっさりと認めた。こいつは、喉が乾いたら遠慮なくスライムにストローを突っ込み飲みそうだ。その辺りはウルスラとどっこいどっこいである。


「リアム! リアムだけが頼りだ! 宜しく頼む!」

「う、うん。まあとりあえず飲んだりはしないから」


 サツキがそう言うと、スライム少女がずる、と寄ってきてサツキの手を取った。というか、歩くんじゃなくて擦って進むのか。


「よーし! じゃあ地下十階目指して行くわよ!」

「おー!」


 すっかり元気を取り戻したアールが手を掲げた。


 本当に大丈夫なんだろうか、このパーティー。


 サツキは、ふと不安に思ったのだった。

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