第68話 OLサツキの初級編初日の夕餉の支度
首を傾げているサツキに、ユラが説明をしてくれた。
「テイマーっていうのは、モンスターとかを手懐ける能力のことね」
サツキがとっさに頭に思い浮かべたのは、尻尾が雷の形をしている黄色いハムスターっぽいモンスターだった。友達とか何とか言われて、少年に戦わされるやつである。別にそこで戦わなくてもよくない? とサツキは思ったりしたものだ。
するとウルスラが言った。
「自分の代わりにモンスターを戦わせることが出来るから、強いのをゲットすると途端有利になるチート能力よ」
まんまだった。
ユラが馬鹿にした様に、五匹のスライムに囲まれピンク色のモヤを出している一角を見た。嬉しそうに自分の指とスライムが作った指をくっつけて笑っている。未知と遭遇すると、誰しもあの行動を取るのだろうか。
「多分、ドラゴンスレイヤーの称号を手に入れたから追加能力が発生したんだろうな。いかにもアールっぽい阿呆な能力だけど」
「てことは、私達も何か追加能力が!?」
「可能性はあるな。何かきっかけさえあれば」
サツキは訳が分からないので、とりあえず聞く側に回った。ユラは本人も言う様に、アールよりは馬鹿ではなさそうだ。ただ発想が危ないだけ。
「まあ考えてても仕方ないわ! 宴会の支度しましょ! ほらアール! そいつらと何か美味しそうな物探してきてよ!」
「え! 何で俺が!」
ウルスラがそう言った瞬間、辺りが急に暗くなった。
「え!?」
サツキが驚いていると、ユラが教えてくれた。
「夜モードに入ったんだ。明るいと寝れないし雰囲気出ないだろ?」
「は、はあ……」
雰囲気重視のダンジョンて何だろう。
「あ、そしたらリアム、ライトの呪文で照らして一緒に行こうよ!」
アールが言った瞬間、アールの指先が光り、それを採光したスライムがキラキラと綺麗に光った。
「必要ないわね」
「だな」
「いってらっしゃい、アール。気をつけてね」
「ちっくしょおおお!」
半泣きになりながら、アールが光るスライムを明かり代わりにしつつ奥へと消えていった。ウルスラがそれを確認すると、にたりと笑った。
「さてと。じゃあまずは食前酒を。サツキはいける口? リアムは結構飲んでたけど」
「あんまり強い方ではなかったな。でも身体がリアムだから、飲めたりして……?」
もしかして、人に絡まず楽しく飲酒出来るかも?
「よーし、じゃあまずは一杯飲んでみるわよ!」
「う、うん!」
「酔ったら介抱してやるから安心してよ」
「安心……出来ないかも」
「大丈夫だって!」
胡散臭さ満開の笑顔で言われても、信じられない。
「言ったろ? 男に興味はない」
「は、はは」
「まあとりあえず乾杯しましょ!」
鞄からグラスを三個取り出し、白ワインと先程採取した黄色いスライムの体液を注ぐ。
「かんぱーい!」
ひと口飲む。口の中で、パチパチと弾けるものがあった。まるでちょっと強めのスパークリングワインだ。
「美味しい!」
「でしょお?」
ウルスラがにっこりと微笑んだ。
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