第48話 OLサツキ、問い質される
サツキとウルスラがうふうふと女子な会話を続けながらギルドに到着すると、昨日は人で溢れていたギルド内部は閑散としていた。
入口すぐに設置されたカウンターで、ギルド職員であろう口ひげが立派ながたいのいい親父が、肩を竦めて手をやれやれ、という仕草にして頭を悲しげに振った。
「悪いが、今はカップルの姿は見たくない奴らがいる。要があるなら後の方がいいかもしれんぞ」
「ジュリアン、私よ、ウルスラよ。どうしたのよ一体」
親父の名はジュリアンというらしい。何とまあ似合わない名前だろうか。
「なんだウルスラか、どうしたんだその姿は。てことは横にいるのはリアムか」
「だって絡まれたくないし」
暗かったジュリアンの表情に、ようやく明るさが戻った。
「ああ、昨日は凄かったからなあ。まあ当分は……と言いたいところだが、お祭り騒ぎはもう終わった様だぞ」
ジュリアンはそう言うと、くい、と顎をカウンター奥の広間へと振ってみせた。様になる。如何にも、という感じだ。西部映画にでも出てきそうな親父である。
サツキは昨日はろくに認識していなかった奥の広間をそうっと観察し始めた。天井は高く、空気の循環の為だろう、お洒落なカフェにありそうな木製のファンが回っている。この世界に電気というものはなさそうなので、何らかの魔法で動いているのかもしれない。
パーティーの待ち合わせに使用するそうで、テーブルと椅子が幾つも置いてある。壁にはギルドミッションなのだろう、如何にもな紙が動く絵と共に貼ってあった。
その広間の一番奥の片隅が、やけに暗い。
「あいつら、
ブラインドの魔法。物凄く見にくいので、そういった魔法なのだろう。でも足はしっかりと見えている。
サツキの疑問が顔に出ていたのだろう、ジュリアンが笑った。
「あいつらの魔法のレベルはクソだからな」
「まあ、確かに」
そして一切否定しないウルスラ。そこは仲間なんだから、いいところとかを言うとかあるだろうに。仕方ないのでサツキがフォローする。
「でも、ユラは私に死者蘇生の魔法を掛けてくれたし」
「リアム! お前よく生きてたなあ!」
逆に驚かれた。そんなにか。そんなレベルなのか、ユラよ。
「あんなんじゃ他の奴らも寄ってこないからさ、あんた達が来るのを首を長くして待ってたんだよ」
あからさまにホッとした表情のジュリアン。
「あのお……。あの二人、一体何だってあんなことに……」
サツキがジュリアンに尋ねてみると。ジュリアンは人の悪そうな笑みを浮かべ、口に手を当てて手招きした。
「こっぴどく失敗したらしい」
ぷっと吹き出すジュリアンは、実に楽しそうだった。
「サツ……リアム、とりあえず行こう」
ウルスラに促され暗い片隅へと向かったサツキは、顔が見えないだろうかとしゃがんで覗き込んだ。
「あのー、ユラ? アール?」
すると。
「きっ君は誰だ!? 名前は何と言うんだ!?」
いきなりアールに手を掴まれた。
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