教室の隅にいるような乙女ゲームのモブに転生しちゃったけど、毎日が最高ですわっ!

taka.///

第1話 プロローグからの初ヤラカシだわ

 『アリアルーナ・フォーサイス』、それが私の今の名前だわ。"今の名前"という言葉を使うのを不思議に思われるかもしれないけど、私には産まれた時から前世の記憶があるの。だけど、前世での自分の死因や自分の名前、家族や友人のことすら覚えていないわ。あるのは、日本で暮らしていた生活の"知識"のみよ。だから、ホームシックで帰りたいという想いもないわ。心残りは、日本でやり込んでいた乙女ゲームのことだけよ。なので、この世界で人生を楽しみ謳歌したいと思っているわ。

 そして、間もなく産まれてから約1ヶ月が経とうとしているわ。私が転生したのは、貴族令嬢らしいということが分かったの。今の時点で爵位は分からないけど、豪華な部屋の内装や代わる代わる世話をしに来る使用人たち、お乳を与えに来る女性は日中のみで後は哺乳瓶、そんな環境と使用人たちの会話で導き出されたのは、ここは貴族の屋敷で私は貴族令嬢の『アリアルーナ・フォーサイス』だということだわ。更に、この世界には魔法があるみたいなの。使用人の服装はメイド服だったので気付かなかったけど、私が生きていた時代の少し後くらいか思っていたの。けど、違うみたいなのよ。オムツを替えた時にお尻を魔法で綺麗にしたり、お乳を飲んだ時のも魔法で綺麗にしたりと私が知っている世界とは違うみたいなの。報告は以上よ。


 何故か、誰に報告!?みたいになってしまったけど、赤ちゃんって暇なのよ~。まぁ、そんな結果から、貴族令嬢だと恋愛結婚は難しいと思うから、小金持ちで若くて優しい旦那さんと政略結婚して優雅にのほほんと暮らしていければ良いな~というのが、今の私の目標なのよね。

それに転生得点か分からないけど、言語も理解出来てるしラッキーだわ。"だわ"なんて、使用人たちの口調が移ってしまったわ・・・。

 それにしてもよ、私が産まれてからずっとこの部屋から出たことがないのよね。柵があるベッドから出られるのは、食事の時とお風呂の時くらいで、家族とは一度も会ったことがないわ・・・多分。寝てる時に来ても分からないので、カウントされないわ。

 貴族って、こんなものなのかしら?


 そんな事を考えていると、ガチャガチャとノブを回す音が聞こえてきたわ。暫くガチャガチャと回していたようだけど、今度はキィーという音と共に扉が開く音が聞こえたわ。使用人がノブを回す時はこんな大きな音を立てないわよ。


 使用人ではないわね、誰が入ってきたのかしら?


 次に、床の上を何かで引きずる音が聞こえてきたわ。


 え、何?何を引きずっているの?!ま、まさか暗殺者!?


 異世界モノのライトノベルの内容が頭に浮かび不安が募るけど、まだ首を動かせない私はそれを確認することができないわ。

その音が、私が寝ているベッドの脇で止まるったわ。カタカタと今度は違う音が聞こえてきたの。すると、私の顔に影が差したわ。にゅっと現れた影の主は、2才から3才くらいの男の子だったの。柵の上の部分をぷくぷくの両手でぎゅっと掴み、上から顔を出している彼は、紅茶にミルクをたっぷり落としたような、ミルクティブラウンのふわふわとした髪で、まん丸な目には、初夏に芽吹く新緑の色に似たキラキラした宝石のような瞳なの、とても可愛らしくて私は大興奮よ。


 あぁ~なんて、可愛らしいの!そのぷくぷくもちもちの頬っぺたを触りたいわ~。一人で外に居たら、絶対ショタコンに拐われるレベルわ!!そのヒラヒラフリフリが付いているシャツが、とても似合っていて可愛いわ~。


 キャッキャ言っている私を彼は、不思議そうに見ているわ。


「にゃわいい・・・」


 彼は静かに笑みを浮かべたのだけど、直ぐにその表情に憂愁の影が差したわ。


 どうしたの!?そんな悲しそうな顔しないで、悩み事があるの?辛い事があるの?愚痴でもなんでも言って、聞くことしか出来ないけど!

 それを彼に一生懸命に伝えようとするが、出てくるのは「あうっ」とか「うぅ」とか「あぁ~」という声ばかり。


 あぁ~!彼に何も出来ないこの姿が恨めしいわ~。もどかしいわ~。


「にょうったの?」


 突然、声を出した私に、彼はキョトンとした顔で聞いてきたわ。多分、「どうしたの?」と聞いているのだと思うわ。


「あぁ~うあ~」(話して~)


「にょめんにぇ、わにゃんにゃい・・・」(ごめんね、分かんない・・・)


「カーティス様、こちらにいらっしゃったのですか?」


 そんなやり取りをしていると、扉の方から冷たい女性の声が聞こえてきたわ。この部屋に来る使用人は担当が決まっていないみたいで、入れ替わり立ち替わりで色んな人が来ていたけど、今まで聞いたことがない声だわ。その声にビクッと体が反応した彼は、顔を強張らせ体をぎゅっと縮めたの。


「この部屋には入らないようにと、仰ったはずですが」


 そう言いながらこちらに近付いて来る声の主の女性は、言葉は丁寧だが冷たく人を見下すような馬鹿にするような含みが入っていたわ。


「自分の母親が産後の肥立ちが悪く寝込んでいるというのに・・・」


 ぼそりと独り言を言ったようだけど、こちらに丸聞こえだわ。


 性格悪いわっ!子供だから何も分からないと思っているのかしら!?顔を見せなさい!その声覚えたわよ~!!


 カーティスと呼ばれた彼は、恐る恐るベッドから離れていくの。

 そして、扉が閉まり誰もいなくなった部屋で一人、彼女の言葉を思い出して考えを纏めていくわ。


 母親が産後って言っていたわよね、あの性格ワルワル女は・・・でも、この屋敷で暮らす赤ちゃんは、私以外に居ないわよね?確認していないけど。他に居たらショックだわ。貴族は女性の敵と認識するわ!でも私以外に居なかったら、カーティスと呼ばれたあの男の子は私の兄?だったわ嬉しいわ~父親にダメだと言われたのに妹に会いたくて来てくれたのね~。

 ・・・え?ちょっと待って、産後の肥立ちが悪いって言ってたわよね?あの子が暗い顔をしていたのは、母親の体調が悪いからなの?!そんなのダメよ!ふにゃって笑うあの可愛い笑顔が見られなくなったら・・・あぁ、なんとかしてあげたいわ!ん〜、でもどうしたら良いにかしら。この世界の医療技術ってどのくらい発展しているのかしら?

・・・あれ?これはもしかしてよね。私、下手したら母親に一度も会わずに・・・ってこともあるのでは?ヤバイわ!

 まずは、外の生活基準の情報が欲しいわね。あぁ〜!魔法でなんとか出来ないかしら!!

 ん~、でもどうやって魔法って使えるのかしら?ライトノベルの異世界モノだと、魔法を使うのにはイメージが大事と書いてあったわよね。

"サーチ"っていう魔法が適切かしら?それとも透視みたいな魔法なんてあるのかしら?

 ま、物は試しよね!両方を合わせたような感じでやってみれば良いのよ!!

でも、その前に、この部屋の全体を見れるようにしたいわ。


 ん~と唸りながら、この部屋全体を自分が見ているようにイメージしたわ。


 ・・・あら?出来ちゃたみたい。流石、私!天才なのかも!!


 その魔法で、部屋をぐるっと見渡したわ。絨毯とベビーベッドとお乳を与えるために使うチェアだけ置いてあって簡素な感じだわ。広めの部屋にポツンとベビーベッドだけが置いてあるのよ。本当に貴族令嬢の部屋なのかと、もの寂しい感じがするわ。そのベビーベッドの中を覗いたわ。


 この赤ちゃんが私ね。髪の色は金色かしら?でも、赤ちゃんって変わっていくから、カーティスみたいな髪の色になる可能性もあるわね。瞳の色は濃いブルー?瑠璃色みたいだわ。

 でも、この魔法じゃダメね。探すのに時間が掛かりすぎちゃうわ。やっぱり、サーチと透視を合わせた魔法が良いわよね。


 今度は少し斜め上から、屋敷の中全体を見るイメージをしてみたわ。すると、屋敷はそのままで人の動きが見えるようになったわ。


 あそこにいるのカーティスだわ。私の隣の部屋なのね。何をやっているのかしら?一人で本を読んでいるの?誰も付き添わないのかしら・・・。


 三階の一番東側の広い部屋がカーティスの部屋らしわね。その広い部屋に置いてある机に向かって、カーティスは絵本を開いていたわ。その奥には、子供が一人で寝るには大きすぎる天蓋が付いたベッドが置いてある部屋があるみたいだわ。

隣の私の部屋は、南東側の横に長い部屋で、同じ広さの部屋が2つ繋がってあるの。多分、ベビーベッドが置いてある部屋ではなく、もう1つの部屋が本来の寝室だと思うわ。そこには、これまた天蓋が付いた大きなベッドが置いてあるもの。

 三階にあるのは、家族の部屋と広めのゲストルームみたいだわ。一階は食堂やキッチンと居間と応接間らしい所などがあって、二階はゲストルームと一部の使用人たちの部屋になっているようだわ。

 そして、見つけたの。二階の西端の北側にある私たちの部屋より小さく、暗くてじめっとした部屋に、二十代前半の女性が目を閉じてベッドの上に横になっていたのよ。ミルクティ色の髪の毛は荒れていて、痩せ細り生気がなくて、今にもこの世から儚く消えてしまいそうだわ。


 これはヤバイわ・・・今すぐにでも亡くなりそうじゃないの!魔法でなんとか出来ないの?!旦那は何しているのよ!・・・落ち着いて、落ち着くのよ私。私がなんとかすれば良いのよ!まず、魔法で原因究明よ。魔法さん教えて!


 彼女が弱っている原因を教えてほしいと、ただただ願ったわ。すると、文字が浮かんできたの。


『短期間で体が衰弱し、死に至る呪いの魔法が施されている』


そうしたら、そんな言葉が浮かんだの。


 え?・・・呪い?どういうことなの?


 サーッと血の気が引いたわ。

 産後の肥立ちが悪いっていうことにして、誰かが彼女を殺そうとしているということなの!?もう!誰がこんなことしたの?!あぁ、もう!早くこの呪いをなんとかしないと・・・。


 そんなこと考えていると、屋敷が慌ただしくなってきたわ。その慌ただしさは、二階の西側方へ徐々に向かっていくわ。


「マリア!マリアンヌ!!どこだ!?」


「旦那様!奥様はお休み中ですので・・・」


 三階西側の端にある大きな部屋の前で、二十代半ばの金髪に新緑色の瞳をした男性がそう喚きながらマリアンヌという人物を探しているみたいだわ。それを使用人の三十代くらいの男性が、強張りながら声をかけているの。旦那様と呼ばれた男性は、背はスラッと高く、細くもなく太くもないバランスの取れた体躯をしている、柔和な感じのイケメンだわ。だけど、今は取り乱しているようで、柔和な感じも抑えられているの。残念だわ。


「ベッドにマリアは居ないではないか!私が数週間地方に視察に行っている間、何があった?!アリアルーナを産んだ後すぐの時は、元気だったはずだ!」


 この人が私の父親?話してる内容からそうよね。病気の妻と幼い子供をほったらかしにしている、冷たい父親をイメージしてたけど違くて良かったわ。


 ざわざわしている使用人たちの話からして、旦那様と呼ばれたこの男性は地方に視察中で、本当だったらあと1・2ヶ月後の帰還のはずだったみたいなの。それなのに、予定していた日にちより大変早く帰って来たらしいわ。


「ハンフレイ様、お帰りなさいませ。奥様は適切に治療なさっておりますので、ご安心くださいませ」


 んんん?!この声は、あの性格わるわるの女ね!!


 その声の主は、満面の笑みを浮かべて背筋をピンッと伸ばして立っていたわ。濃いブラウンの髪を野暮ったくならないように後ろに纏め、顔立ちは美人の部類に入るだろうが、目だけが肉食系のようにギラギラしていて、レンガ色の瞳が濁ってようにほの暗く感じ、それを台無しにしているわ。背は、使用人のメイドたちより少し高く、胸がささやかなので細くキュッと絞ったウエストと相まって枯れ木のようだわ。


「ミス・スラグホーン、私の名前を呼ぶ許可した覚えはないが。それに、どういうことだ?君には、マリアンヌのことは任せていない」


 いつの間にか現れた彼女が言う言葉に、彼は顔をしかめたわ。


「わたくしを気遣ってくださいまして、そう仰っていただけるのは嬉しゅうございます。しかし、貴方様の為に何か致したいのでございます」


 ミス・スラグホーンと呼ばれた彼女は、そう言って頬を染めたの。気持ち悪いわ~。


 あら、このミス・スラグホーンって言う人、彼がが好きなのね。それにしても、話が全く噛み合ってないわね。思い込み激しそうだわ、この女性。もしかして、あの呪いかけたの、この人がやったのかしら・・・。


「言っている意味が分からないな。ケビンはどうした?私が居ない間、この屋敷のことは彼に任せたはずだ」


「彼ですか、彼でしたら、旦那様が視察の為に御屋敷をお出になられて直ぐに、御両親が御病気らしくて御実家に戻られましたわ」


「そんなはずはない!彼の両親はもう既に亡くなっている!!」


 ハンフレイと呼ばれた彼は、彼女をキッと睨み付けたわ。周囲の使用人たちは、「そう言えば見かけない」「旦那様の言い付けで不在じゃなかったのか」と全く知らないみたいだわ。


「まあ、では彼は、わたくしに嘘を仰ったのですね」


 ミス・スラグホーンは、如何にも驚いたという感じで口元に手を持っていき、今度は傷付いたという感じで眉を下げたのよ。そんな彼女の様子を見て、ハンフレイパパは更に目付きを鋭くさせたわ。


 わざとらしいわ・・・これを見破れない人なんて居ないんじゃないかしら。それに、かよわい風に見せたいみたいだけど、無理があるわ。あ、こんな呑気に傍観してる場合じゃないのよ!私の母親のマリアンヌママが今にも亡くなりそうなのよ!!


 あら?何かカーティスの部屋で、カーティスがもぞもぞしているみたいだわ。意識を向けると、彼は扉の側で廊下の様子を伺っているようだったの。なので、魔法で軽く扉を開けてあげると、それに気付いた彼は恐る恐る外に出て、直ぐに父親の声がする方に走り出したわ。


「おとうたま!」


「カート!」


 よたよたと駆け寄ってくるカーティスを見つけ、ハンフレイパパは直ぐにカーティスの方へ走り出し、彼を抱き上げると抱きしめたわ。カーティスも父親のハンフレイパパの首にぎゅっと抱きつくわ。それをミス・スラグホーンが、苦虫を噛み潰したような顔で見ているに。今にも、舌打ちをしそうだわ。


「もう大丈夫だ。寂しかったか?」


「うん、おとーたまいないなっちぇ、おきゃーたまにもあえないなっちぇ、さみしーだったの」


 お父様が居なくなって、お母様にも会えなくなって、寂しいと言っているのね~。可哀想に、親に会えないって、小さい子からしたら大事で不安よね・・・。


「そうか、悪かったな寂しい想いをさせて・・・ところで、カートはお母様がどこに居るか分かるか?」


 カーティスを体から少し離すと、ハンフレイパパは涙が溢れそうになっている彼の目元を拭うわ。


「うん、したゃにちゅれていきゅのみたの」


 病気の母親が、下に連れていかれたの見ていたのね。子供の前で随分酷いことするわ・・・っていうか、普通病人をあんな所に移動させるかしら?!


「二階だな・・・カート、一緒にお母様の所へ会いに行こうか」


「うん!」


「ハンフレイ様!お止めください、産後の肥立ちが悪いのでは無く、もし御病気でしたら御移りになられる可能性がございます!」


 ミス・スラグホーンが喚くが、ハンフレイパパはそれを無視し、カーティスを抱えたまま二階に続く階段を下りて行くのを、おかしいとかこんなはずではとかブツブツ言いながら、彼女はその後を追うのよ。この人、頭大丈夫なのかしら?

 彼は屋敷のことを把握しているみたいで、空室の部屋を確認しながら移動し、三つ目の部屋で目的の部屋にたどり着いたのよ。

 扉を開け中に入ると、直ぐその様子にハッとハンフレイパパは息を呑んだわ。

 その一室は、この大きな屋敷の女主人が使う部屋にしてはとても狭く、まだ日中なのに日が沈んだ後にように薄暗いのよ。北側の位置なので光も当たらないうえに、カーテンも閉め切りで更に灯りも付いていないからだと思うの。それに、換気をしていないのか空気が淀み、独特な病人の匂いとカビ臭さが合わさって、何とも言えない匂いになっているのよ。

 彼は、扉の近くにカーティスを下ろすと、窓際に駆け寄り直ぐ様カーテンと窓を開けたわ。


「何故、このような状態に・・・」


 絞り出すようにそう言うと、妻が寝ているベッドに近より、その手を握ったの。

 カーティスもベッドに近寄るが、彼にとって高さがあるので、背伸びをして母親の顔を覗き込むのが精一杯みたいなの。


「おきゃーたま・・・」


 ミス・スラグホーンは、部屋に入るのが嫌なのか、扉の外でベッドで寝ているマリアンヌママを、睨むように見ているだけだわ。


 何か異変を感じたのか眉を寄せ、ハンフレイパパは一旦マリアンヌママの手をベッドの上にそっと置いたわ。そして、寝ているマリアンヌに支障を来さないように、枕の下やマットの下に手を入れ、何かを探しているようなの。更に、ベッドの下辺りも覗きこんでいるわ。


 気付いたのね!!でも、そこじゃないわ!体のどこかよっ。あぁ、もどかしいわ~。使用人が体を拭くから、分かりやすい所に呪いをかけないわよね。後頭部辺りかしら?ちょっと魔法で・・・。


 頭が乗っている直ぐ脇の枕を魔法で少し凹ませ、ずれて頭が傾いたようにしたわ。

それに気付いたハンフレイパパは、違和感を覚えたようだけど、気にせず後頭部の髪の毛を掻き分けているわ。


「ハンフレイ様!!そんなことをなさっては、奥様の体調が酷くなってしまいますわっ!」


 ハンフレイパパの行動を見て、ミス・スラグホーンは慌てて駆け寄るの。


「見つけた・・・」


 彼女に制される前に、ボソッと彼は呟いたわ。

 そして、それを止めるため腕を掴もうとしていたミス・スラグホーンの手を払うと、彼女は床に倒れこみ呆然とし顔色を青くさせたわ。


「これは、体を衰弱させ死に追いやる呪いの魔方陣だな・・・誰か解呪が出来る者を呼び寄せろ!」


「はっはい!!只今ご連絡いたしますっ」


 ハンフレイパパが部屋の外へ怒鳴り声を上げると、そこにいた数人の使用人のうち、年配の女性が返事をしたわ。その女性がブツブツと理解出来ない言葉を唱えると、魔方陣が手の上に現れ白い小鳥を生み出し、その小鳥に「解呪が出来る方を、至急フォーサイス家へ寄越してください」と言い聞かせ、小鳥を放っわ。そして、その小鳥は屋敷の壁を通り抜けて外へと飛び立っていったの。


 彼女、魔法を使う時に変な呪文言ってたけど、私は言ってないわ・・・ま、言わなくても使えるのならお得よね。

 それにしても、その解呪が出来る人が来るまで、どのくらい掛かるのかしら?間に合わなかったらどうしましょう。この虫の息の状態が続いて・・・カーティスの笑顔が無くなったら、私泣くわっ!うん、そうよね、そうだわよね、これは私がやちゃった方が早いと思うのよ!!でも、バレたら・・・。

 うん、覚悟を決めたわ。やっちゃいましょう!みんなの笑顔のために!!マリアンヌママに解呪の魔法をかけるわ。後頭部にある魔方陣をキレイに消えるように、呪いの影響が全く無くなるように、体力も回復させて・・・お願い!


すると、マリアンヌママの体が白くキラキラと光り、頬に赤みが差して失っていた生気が取り戻したみたいだわ。


 やったわ!成功したみたいだわ。


 そう私は喜ぶけど、他の人の反応は違ったわ。ハンフレイパパとミス・スラグホーンや使用人たちは、大きく目を見開き何が起こったのか理解出来ない状態だったの。ただカーティスのみ、目をキラキラと輝かせ「すぎょい」と言っていたわ。


 あら?これはやっちゃたかしら?


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