第22話 最高の相棒
「ヤンさん、害虫駆除が終りました!」
どうやら私たちだけに畑仕事をさせるわけではなく、自ら畑の手入れをしているヤンに声を掛ける。
ヤンは畑を耕していたようで、額にびっしりと汗を貼り付けて私を見上げた。
「おう、嬢ちゃんかい。畑4面分の害虫駆除、だったな」
言うと、ヤンは
「害虫駆除はなかなか大変な作業だ。今でこそ噴霧器が使えるようになってきたが、昔はすべて手作業でやっていたんだぞ」
「そ、それはたいへんですね」
何枚もの畑があるんだから、本当にたいへんな作業だったんだろうね。
それに、アオカメムシのように臭い液体を撒き散らす虫などいたら、そこらじゅうが臭くてたまらなくなっているんじゃないかな。
「うん、見事に駆除ができている、よくやった。これは報酬だ、受け取ってくれたまえ」
《農家クエスト「畑を害虫から守れ」を達成したのです。
レベルが上がったのです。
レベルが21になったのです。
ミッドレンジギャザラーハットを入手したのです。
15,000リーネを入手したのです》
「ありがとうございます」
「次はレベル20になったら来なさい」
礼を言った自分の口角が上がっているのを感じつつ、私はナビちゃんに話しかける。
(ナビちゃん、農家の最強装備に。頭装備は非表示から表示に、ベストとベルト、マントは非表示に変えてくれる?)
《はいなのですっ》
ナビちゃんが返事するまでもなく、私の装備が新しいものに変わる。
(右手)なし
(左手)なし
(頭)ミッドレンジギャザラーハット(DEX+10)
(体)ミッドレンジギャザラーシャツ(DEX+15、 VIT+15)
【非表示】ビギナーギャザラーベスト(STR+5、VIT+5)
(背)【非表示】ビギナーギャザラーマント(+スニーク)
(腰)【非表示】ビギナーギャザラーベルト(STR+5)
(脚)ミッドレンジギャザラーボトム(STR+15、VIT+15)
(手)ビギナーギャザラーグローブ(STR+5、DEX+5)
(足)ビギナーギャザラーブーツ(STR+5)
(耳)冒険者のピアス(経験値2倍)
(首)なし
(腕)なし
(指)なし
頭を下げて視界に全身を収めると、先ほど試着モードであわせたミッドレンジギャザラーセットに身を包んだ自分の姿が見える。
(ナビちゃん、獣人がこの服を着る時って、尻尾の穴はどうなるの?)
《装備するプレイヤーの種族や体格に合わせて自動で調整されるのですよ》
種族やキャラ設定によって身長や体格が違うというのに、これらの装備はちょうど袖や裾の長さなど、ちょうどよくなるように自動調整されるみたいだね。
まあ、そういう自動調整機能がなければ、裁縫師や革細工師、鍛冶屋になって装備をつくるのがすべてオーダーメイドになっちゃうもんね。
着替えも機械精霊やボタン一つで簡単にできちゃうから楽でいいよね。もし、私が猫人族で自分で着替えないといけないとなったら……最初に尻尾を入れてから左右の足を入れるのか、左右の足を入れてから尻尾を穴に通すのか……どのタイミングで尻尾を穴に通せばいいのかな。
とはいえ、私はハーフリングを選んだから尻尾なんてないし、気にしてもしようがないよね。
それよりも、ミッドレンジギャザラーシリーズも全部揃えると何かいいことがあるかも知れないし、とりあえず次のレベルのクエストまでは終わらせようかな。
「あ、ヤンさん」
「やあ、アオイ君。ちょうどいいところに来たね」
「え?」
「アオイ君は調理師ギルドのニケを知っているかい?」
「ええ、もちろん知っていますけど?」
いや、さっきから私は同じ場所にいるんだけどね。なんだか私が突然現れたようなヤンの反応に少し驚いてしまった。
えっと、ニケは調理師ギルドのギルドマスターだよね。
漁師ギルドのデニスからニケのところに私が釣ったブラックバレットを届けるように言われたところだし、なにかあるのかな。
「だったら話が早い。ニケから頼まれているものがあってね。晩餐会で出す食材を私の代わりに届けて欲しい」
《条件発生型クエスト「最高の相棒」が発生したのです。クエストを受けるのですか?》
クエスト番号:S.003-1
クエスト種別:条件発生型クエスト
クエスト名:最高の相棒
発注者:ヤン
報告先:ニケ
内 容:農家ギルドのヤンから晚餐会の食材を調理師ギルドの
ニケに届けるように頼まれた。ニケに荷物を届けよう
報 酬:経験値3,000×2 貨幣????リーネ
「あ、はい。わかりました」
《条件発生型クエスト「最高の相棒」を受注したのです。ヤンから受け取った食材を調理師ギルドのニケに届けるのですよ》
受注したのはいいんだけど、これって条件発生型クエストだよね。
デニスから頼まれたときは私が100㎏級のブラックバレットを持っていたからだと思うんだけど、今度の条件は何なのかな。特に何もないと思うんだけど……。
どうにも腑に落ちないけど、これって不具合だったりするのかな。
などと私が考えていると、ヤンは部屋の隅に積み上げられた俵状のものをひとつ持ってくると、ドンッと私の前に置いた。
「こ、これって、米俵ですよね?」
現実世界では滅多に見かけない、稲藁で作られた立派な米俵だよ。確か、一俵で60㎏だっけ。インベントリに入れてしまえば重さなんて関係ないけど、米俵って大きいなあ。
「そうだ。私の田んぼでつくった米だよ」
「へえ、お米があるんだね」
「農家ギルドでは米が作れるようになったら一人前だ。アオイ君も米を作れるようになるまで頑張りなさい」
米が作れるようになると一人前かあ。
いったい、農家のレベルがいくつくらいになると米を作れるようになるんだろうね。
そう言えば、レベル21になったから、次のクエストも受けておこうかな。ギャザラー系装備は二つずつあるみたいだし、ミッドレンジギャザラーハットの次の装備も貰えるはずだからね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます