第42話 帰還後の一幕


リールside


やぁ、俺は凛怜だ、あ、今はリールか…。

え?何回目かのデジャブだって?

こんな状態にもなるぞ、目の前にいるはずのないやつがいればさ…。

さて、現実逃避はそろそろやめようか。




エリス「凛怜ちゅわぁん、可愛いぃ、さすが私の婚約者だわ!」

セーラ「先生…綺麗。」

ファル「ほんとに先生…なのか?」

シャロ「やはり女性でしたの?」



俺たちはMIOの本部へ帰還した、ここまではいいんだ。そしたらなぜかエリス、セーラ、ファルビル、シャロンがいるんだよ…。




アイリ「それは、認めてないぞ!早く離れろ!」

エリス「あら、アイリ?なんで婚約者に抱きつくのに許可がいるのかしら?」

アイリ「だから、それは私たちが認めていないと言ってるだろ!」


言い合いを始めた2人をほっとき、エリスに抱きつかれながらも近くにいたグラレスに、聞きたいことを聞いた。


リール『…なんでここにリードベルグ学園の学生がいるの?』

グラ「リードベルグ学園の生徒達にMIOに関する知識を正しく持ってもらおうと思ってね。今年から希望者だけに体験研修という形で1週間という期間を設けて招待することになったのさ。」


なるほどな、それはいい事だ。


ラミ「ていうか、数日前に言っておいたはずだけどなぁ、特別ゲスト達がいるよって。」

リール『初耳なんだけど…。』

杏果「あなたの耳が腐ってたんじゃないの?」


ラミがとんでもないこと言い出した。てか、杏果酷くない?

え?聞いてないんだけど、ていうかよく今日まで会わなかったなおい。


ラミ「それはタイミングだね。ずっと入れ違いになってたから。」

リール『…心を読まないで?エスパーなの?てか、エリス離れてくれ。』

エリス「酷いわ、凛怜。私の事は遊びだったの?」

リール『誤解を招く言い方をするんじゃないわ!久々に教え子たちと話したいだけだから。一旦離してくれ。』

エリス「そういう事ね、しょうがないわね。」

リール『はいはい、ありがとう。』


…って待てよ、俺たちの婚約って解消されたはずじゃねえの?

その疑問が浮かび、思わず口に出す。


リール『なぁ、俺たちって婚約解消されたよな?』

エリス「あら?お父様は解消に了承していないわよ?だから。」

リール『今も継続していると?』

エリス「そういう事。」ニコッ


いい笑顔で何言っちゃってんの…。

てか、視線が痛い、主にMIO組…。


リール『はぁ、まぁ一旦置いておくわ。』

ラミ「後でどういうことか説明してね?」

リール『…拒否権は?』

ラミ「尋問室で話したいのならしていいよ?」

杏華「私はその方がやりやすいけどね?」


…それ強制だよね?拒否権ないって言ってるよね?!

リール『…分かったよ。後で説明する。』


はぁ、なんでこうなった…。



アイリside


まったく、エリスめ、私達が認めない限り結婚なんてさせないに決まってるじゃないか。

凛怜も凛怜だ。あんなに鼻の下を伸ばして。

後で、説教だ!

それにしても、リードベルグ学園の学生がいるとはな、たしか凛怜と紅葉姉さんの教え子たちだったか?報告には聞いていたが、本当に最初は険悪な関係だったのか?疑いたくなるくらい凛怜への視線が好意的な気がするんだが…。


リール『あなた達、元気だった?』

ファル「健康そのものです、でも、先生が急にいなくなったのは悲しかった…。」

リール『それはごめんなさいねファルビル。ちゃんと勉強はついていけてるかしら?』

ファル「うっ、ま、まあまあだ!」

リール『…ちゃんとやるのよ?その知識があなたを生かすことになるかもしれないから。』

ファル「わかってるよ、先生!」

シャロ「ちょっと、先生?ファルビルだけに話しかけるのは感心しなくてよ?」

セーラ「こちらにも構うべき。」

リール『ごめんなさいね、そういうつもりじゃなかったのだけれど…。』

シャロ「まぁいいですわ、それよりもその口調と格好はなんですの?」

セーラ「先生、目覚めたの?」

リール『セーラ、それは違うわ誤解よ。任務のため仕方なくこの格好をしているの。まぁ似合わないかもしれないけど…。』


似合わない?むしろ似合いすぎて困るんだが?

何を言っているんだこの人は。

周りの人間も私の心情と同じなのだろう、私と同じ顔で凛怜を見ている。


セーラ「ううん、先生似合ってる。」

シャロ「そ、そうですわ、悪くは無いと思いますわよ?」

ファル「今の先生は綺麗だぜ!」


学生たちがすかさずフォローを入れた、この子供達侮れん。


リール『ふふ、ありがとう。お世辞として受け取っておくわ。』


しかし、流石凛怜、本心で言った事をお世辞として処理するとは、鈍感さは折り紙付きだ。そろそろ気づいて欲しいものだ、はぁ…。


リール『そういえば、紹介しなきゃね。アイリ、この子達が、私が一時期教えていた生徒たちよ。』


凛怜は私の方へ向き、そう言った、これは自己紹介をする流れか。


アイリ「そうか、凛怜兄さんと紅葉姉さんが世話になったな。私は黒葉 愛凛だ。この場ではアイリ=フィオーリと名乗っている、よろしく頼む。」


シャロ「私は、シャロン=ヴァルクレアですわ!」

セーラ「セーラ=ストライド。」

ファル「俺はファルビル=ガーリアン!」

アイリ「元気があっていいことだな。」

セーラ「アイリさんも、凛怜先生の妹なの?」

アイリ「あぁ、そうだ。義理だがな。」


義理を少し強調気味に言った、何故かこのセーラという少女が凛怜を見る目に違和感があったからだ。

ファルビルとシャロンは尊敬の念を抱いている事は分かる。

ただ、セーラはどこか尊敬と同時に私たちに近いものをその目に映していた。

その証拠にセーラは少しムッとした表情をしている。


リール『アイリとセーラはなんでそんなに見つめあってるんだ?』

アイリ「なんでもないさ。」

セーラ「うん、なんでもない。」


そう言ってる間にも、私たちは互いに目線をそらさない。


エリス「皆、もう帰る時間よ。」

エリスからお呼びがかかると、3人の表情が心無しか少し曇ったように見えた。


リール『…また会えるから、そんな顔をするな。』

セーラ「絶対?」

リール『あぁ、絶対だ。約束する。』

シャロ「絶対ですわよ!」

ファル「そうだ!絶対会いにきてくれよ!」

リール『おう、約束だ。』


3人に笑顔が戻った。やはり凛怜はこういう時の気遣いは丁寧だ。

いつも、最良の言葉をくれる。それに救われたのだろうなと、そう思った。


エリス「…凛怜?私には何かないの?」

リール『もちろん、エリスにも会いに行くさ。』

エリス「…絶対よ?」

リール『あぁ、約束だ。』


…少し羨ましい。私たちとは違う何かが二人の間にはある気がする。


リール『あいつらにもよろしく伝えておいてくれ。』

セーラ「分かった、自慢しとくね。」

ファル「あいつらきっと羨ましがるな。」

シャロ「そうですわね。」

リール『そ、そうか?』

エリス「ふふ、さぁ行くわよ。またね凛怜。」

リール『おう、またな。』


そう言って、エリスと3人は私たちに手を振りながら帰って行った。


アイリ「…良かったな、また会えて。」

リール『ええ、元気そうでよかったわ。』


私がそう言うと、穏やかな笑みでそう答える。

さてと、それはそれとして。


アイリ「さて、凛怜?少し聞きたいことがあるんだが…。」ニコッ

ラミ「ちょっと待った、それは私もかな。」ニコッ

杏華「私も。」ニコッ

ステラ「私もです。」ニコッ


わたしが、そう言うとラミと杏華とステラがここぞとばかりに名乗り出る。


リール『え?え?』

リールは混乱しているようだが、私たちには関係ない。


リール『こ、怖いぞ?4人とも?それに何だか4人以外も同じような…ヒッ!!』


アイリ「何を言うか、聞きたいことがあるだけだ。」ニコッ

ラミ「そうだよー?」ニコッ

杏華「楽しみね。」ニコッ

ステラ「ええ、そうですとも聞きたいことがあるだけです。」ニコッ


私たちは皆、同じような表情をしているのだろう。

それを見た凛怜は…。


リール『逃げるんだよぉぉぉぉぉぉ!』スタタタタ

アイリ「あ、待て!」スタタタタ

ラミ「へー、逃げるんだぁ?」スタタタタ

ステラ「逃がしません!」スタタタタ

杏華「逃げられないことを知りなさい!」スタタタタ

リール『なぜこうなったんだァァァァァァ。』


この後、凛怜は無事に捕まりましたとさ…。

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