第25話 依頼の受諾



凛怜side


今、俺、紅葉、愛凛は瑠衣達がいる部屋へ向かっている。


あの後、一緒に寝る約束をした俺達ではあったが、紅葉があんなにもなるとは正直思いもしなかった。


俺は気付けば、こんなにも家族に恵まれている。


そう思うと、とても温かな気持ちが胸の中で溢れていく。

少しくすぐったいとは思うが、こんな事を思うという事はとても贅沢な事なのかもしれない。


そんな事を思いながら、歩いていると、部屋に着いた。


コンコン

凛怜「入るぞ。」


ノックし、部屋へ入ると、瑠衣、ラミ、そして杏華が談笑をしていた。


ラミ「あ、おかえり。」

瑠衣「…おかえり、その様子だと大丈夫だったみたいだね?」

杏華「もう戻ってきたの?変態。」


凛怜「あぁ、ただいま。」


瑠衣とラミは少し安堵の表情をしていた、杏華は相変わらずの言い様だったが、2人と同じ表情をしていたので、なんやかんや心配してくれていたのだろう。


杏華「話はついたの?」

凛怜「あぁ、ありがとうな、3人とも。」

杏華「ちょっと、私は何もしてないわよ。頭おかしくなった?」

少し、キツい言い様で、杏華が否定する。


ラミ「そう言っておいて、心配そうな顔してた癖に。」ニヤニヤ

杏華「ば、バカ言うんじゃないわよ!誰がこんなやつの事なんて心配するのよ!」


そんな事を言う杏華を俺は見つめる。


凛怜「杏華。」

杏華「な、なによ?」

凛怜「お前…。」


杏華の頬がほんのり赤くなっている。

これはもしかして…。


杏華「だ、だから何よ!?そんなに見つめないでよ変態!」

凛怜「…風邪か?」


こいつは昔から、こうなる事がある。

俺が追求した事は無かったが、ずっと気にはなっていた。


杏華「…は?」


あれ、なんだか、空気が凍った?


ラミ「凛怜…君は本当に…。」

瑠衣「凛怜、それはないよ…。」

紅葉「はぁ…。」

愛凛「兄さんは相変わらずだな、だが、そこがいいんじゃないか。」


凛怜「ん?」

杏華「凛怜、あんたやっぱり大バカよね。」

凛怜「え?なんで?」

杏華「ほんとにあんた、昔っから変わってないわよね。」

凛怜「それは、お前もじゃねえか。」

杏華「はぁ?私は大人になったのよ!」

凛怜「大人…?」


視線を下に向ける。


杏華「どこ見てんのよ?!この変態!」シュッ


杏華が俺に蹴りを入れてくる。

凛怜「っと、危ねぇな。」ヒュッ

杏華の攻撃を最小限の動きで避ける。


杏華「この…やっぱりあんた隙がないわね…。素直に当たりなさいよ!」

凛怜「殺す気か、お前。」

杏華「簡単に死なないでしょ、あんた。」

凛怜「そういう問題か?」

杏華「そうよ。」


この後も俺達の言い合いは続いた。


一方、紅葉達は。


瑠衣「ねえ、紅葉姉さん、昔から2人はあんな感じなの?」

紅葉「んー、昔は杏華が一方的に凛怜に絡んでたわね。」

ラミ「そうだねぇ、勝負勝負ってうるさかったね。」

紅葉「凛怜はずっと無視してたわね。」

ラミ「そうそう、それで杏華もムキになって、更に絡んで、勝負を挑んで惨敗しての繰り返しだったね。」

愛凛「簡単に想像が出来てしまうな。」

瑠衣「あ、あはは」(苦笑)

ラミ「まぁ、当時、傲慢だった杏華には、良い薬だったよ。もちろん紅葉ちゃんの存在もね。」

瑠衣「紅葉姉さんが強いのは知ってるけど、当時も強かったの?」

ラミ「そうだね、凛怜に続いて強かったよ。」


紅葉「私はただ、任務をこなしてただけよ?」

ラミ「あはは、最高難易度の任務を単独で成功させてたのは2人だけだったからねぇ。」

紅葉「私達は能力も使ってたわよ。」

ラミ「生身でも、負け無しだった癖に。」ウリウリ


とかなんとか、話があったとか。



俺達の言い合いが落ち着いた所で。


凛怜「それで、護衛の件なんだが…。」

ラミ「あー、やってくれる気になったのかい?」

凛怜「いやな、女装は何とかならないか?というか、無理がないか?」


小さい頃ならいざ知らず、もう俺は大人だ。

声変わりもしたし、流石に見た目的にもキツイだろう。


紅葉「そんな事ないと思うわよ…?」

瑠衣「んー、凛怜、そんな事ないとおも…うよ?」

愛凛「そんなことは無い!兄さんは何を着ても似合うぞ!」


凛怜「そ、そうか?」

ラミ「似合うと思うよ?顔立ちも中性的だし、髪も長いからね。」

杏華「まぁ否定は出来ないわね…。」

凛怜「しかしだな、声はどうするんだ?」

瑠衣「それなら、一葉に頼めば、ボイスチェンジャー作ってくれるんじゃない?」


あー、有り得そうだな。


凛怜「まぁ、そうか。」


んー、しかし、女装か…。


紅葉「良いんじゃない?女装くらい、昔いつもしてたでしょ?」

凛怜「紅葉、人聞きの悪い事を言うな。」

紅葉「事実を言ったまでよ。」

凛怜「子供の頃の話だろうが!任務つっても、俺の歳じゃ無理があるだろ!」

紅葉「大丈夫よ。私達が言っているもの、信用出来ないの?」

凛怜「うぐっ…。」


そう言われると弱い…。

紅葉は俺の扱い方をよく知っているようだ。

くっ、紅葉、恐ろしい子!


愛凛「兄さん…。」


愛凛が何かを耐えるような様子で俺を見ている。

凛怜「ど、どうした?愛凛?」

愛凛「兄さんはその、本当に女装…するのか?」ハァハァ

凛怜「あー、いや、まぁそう…だな?」


…なんだか、愛凛の息が荒いような?


瑠衣「愛凛、抑えて。」(((ボソ

愛凛「ハッ!んんっ、失礼。」

凛怜「??」


瑠衣が愛凛に一言、なにか呟いた瞬間、愛凛は我に返ったように、普通の表情に戻る。


ラミ「…まぁ、結局やるって事で良いのかな?」

凛怜「あぁ、こちらも人員を何人か提供する。そちらの人員は?」

ラミ「私達を含めた特務隊が、5人付くよ。」

凛怜「分かった。そいつらの権限を俺に一時的に預からせてくれ。」

杏華「な、そんなこと出来るわけないでしょ?!」

凛怜「依頼主が俺を指名してる以上、俺に指揮権を渡した方が効率がいいだろ?」

ラミ「そうだね、分かったよ。」

杏華「そんな簡単に決めちゃっていいと思ってるの?!」

ラミ「むしろ好都合だよ。特務隊には凛怜を知ってる人が多いから、すんなり受け入れられるし、グラレス隊長に言えば、手続きも簡単でしょ。」

凛怜「まぁそういう事だ、紅葉。」


俺はラミ達を見たまま、紅葉を呼ぶ。


紅葉「何かしら?」

凛怜「1番隊の奴らを数名選んできてくれ。」

紅葉「了解。」


凛怜「瑠衣。」

瑠衣「何?」

凛怜「明日、一葉の所へ行って、データを貰ってきてくれ。恐らく、調査は終わってるはずだから。」

瑠衣「了解、ボス。」


凛怜「愛凛。」

愛凛「なんだ?」

凛怜「当日、俺と一緒に護衛任務だ、準備をしておけ。」

愛凛「あぁ、承知した。」


紅葉「愛凛なの?私が適任だと思うのだけど?」

凛怜「紅葉には、追って指示する。」

紅葉「分かったわ。」

よし、次は…。


凛怜「ラミ、当日の流れと隊の編成を教えてくれ。あと、護衛を担当する奴の情報もくれ。」

ラミ「一応、最高機密なんだけど…。」

凛怜「良いじゃねえか、もしかしたらネズミが入り込むかもしれねえだろ?」

ラミ「…はぁ、特別だよ?」

凛怜「さんきゅ。やっぱり、ラミは頼りになる。」

ラミ「…持ち上げても、何も出ないよ。」

凛怜「本心だ。」


実際、ここまで融通が利いているのは、ラミが居てこそのとこがある。

実際、特務隊の情報は最高機密であり、いくら元居た所でも、普通なら出せないからだ。

だからこそ、心の底から頼りになると言った。


しかし皆の反応は違くて…。


杏華「ラミを口説くな、この変態。」

凛怜「はぁ?どこが?」

瑠衣「ほんとだね、凛怜のたらし。」ムゥ

紅葉「はぁ、唐変木ね…。」ムゥ

愛凛「兄さん…。」ムゥ


何故か、こう反応される、本当に何故だ?!


凛怜「ま、まぁとにかく、よろしく頼むわ。」

ラミ「了解だよ。護衛は2週間後からだ。それまでに準備できるかな?」

凛怜「愚問だな。俺の妹達は優秀だぞ、2週間もあれば、余裕だ。」

ラミ「そっか、安心したよ。期待してるよ?」

凛怜「任せとけ。」


よし、今日のところはこれくらいか。


ラミ「それじゃ、私達はこの辺でお暇しようかな。」

杏華「そうね。」

凛怜「そうか、玄関まで送る。」

ラミ「ありがとう。」

杏華「ふん、気が利くじゃない。」

凛怜「はいはい、ほら行くぞ。」



俺は、2人と他愛の無い話をしながら、玄関まで見送り、先程の部屋に戻ると…。


瑠衣「紅葉姉さん、愛凛、凛怜と一緒に寝るってどういう事?!」


何故か、瑠衣が叫んでいた…。


凛怜「おーい、どうした?」

瑠衣「あ、凛怜、2人と一緒に寝るって本当?」

凛怜「お、おう本当だぞ。」

瑠衣「なんでそうなったんだい?」

凛怜「そ、そりゃ愛凛が寂しいって…。」

瑠衣「じゃあ紅葉姉さんは?」

凛怜「え、えーと…。」

紅葉「不公平じゃない。だから要求したまでよ。」

凛怜「だ、そうです…。」


やばい、瑠衣から出ちゃいけない雰囲気を感じる。


凛怜「る、瑠衣?落ち着いてくれ?!」

瑠衣「僕は、落ち着いてるよ。ほら、ね?凛怜?」

凛怜「あ、はい。」


や、やばい、こ、怖い…。


この後、瑠衣に正座をさせられ、怒られた挙句、別の日に一緒に寝ることになり、途中で乱入してきた美桜とも一緒に寝ることになるのだが、それは別のお話…。


凛怜「はぁ、妹…怖い。」トホホ

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