第15話 断罪の前


美桜side


ようやく終わったわね…。

なんなの?私を忘れてなかった?

絶対、私の存在を忘れてたわよね!?

凛怜?あなた、さっきまで捕まっていたのよね?

サムズアップしてる場合じゃないわよ?!


グラ「もう、正体を明かして大丈夫だよ。美桜さん?」

美桜「…はぁ、もういいのね?」


なんだか心の中だとはいえツッコミ疲れたわ…。


グラ「今までご苦労だったね。」

美桜「いいのよ、おかげで、ボスを助けられるし。」

副長官「き、貴様…。小賢しい真似を…!」


何言ってるんだか…。


凛怜「お疲れさん、よく頑張ったな、美桜。」

美桜「えぇ、ありがとうボス。」


まぁ、凛怜に褒められるのなら悪くないわね。


紅葉「…それで?美桜、私達は聞いてはいるけど、完全に理解しているとは言い難いわ。詳しく説明してくれるかしら?」ギロッ


なんか紅葉姉さんに睨まれているわね…。

…いや、紅葉姉さんだけじゃないみたいだわ。


周りを見ると、瑠衣は笑顔なのだが、なんていうか雰囲気?が黒い。愛凛姉さんは真顔だけど、いい言えぬ威圧感がある。凛と怜は、無言で睨んでいる。

凛怜は涼しい顔をしているが、私は背中に冷たいものを感じている。

美桜「そ、そうね、説明するわ。」


私はこのMIOに潜入した経緯を皆に説明した。

凛怜の推薦があったこと、MIOの調査に駆り出されたことを事細かにありのまま話した。


美桜「という訳で、私とボスしか知らないようにしたの、秘匿にしておけば、色々と動きやすかったからね。」


説明が終わると、紅葉姉さんたちの雰囲気が更に黒くなっていた。

まぁこれは分かってはいたけど、あえて言った節はある、だって差をつけたいじゃない?


レギ「まぁ、僕もいまさっき知ったんだけどね。」

グラ「敵を騙すにはまず味方からと言いますし、それは多めに見てください。」


セグ「…結果的には良かったですが、もうこれきりにしてください?心臓に悪いです。」

グラ「悪かったよ、セグレット。僕としても、今回は特例なんだ、凛怜君に頼むのは色々リスクだからね。」

凛怜「まぁ、マフィアとMIOは絶妙なバランスで成り立ってるからな、マフィアの一組織が無闇にMIOに介入する事は極力やめた方がいいし、あんまりセグレットに迷惑かけるなよ?。」

セグ「…そういう、あなたが1番かけてますけどね。」

凛怜「な、なんで?!」

セグ「いえ、なんでもないです…はぁ。」


セグレットの重いため息は、それだけで凛怜が散々苦労をかけていたのだと察することが出来た。


グラ「ま、まぁ凛怜君の場合は、ちょっと特殊だしね。」

その特殊の意図を紅葉姉さん達は、察したようだ。


凛怜「まぁ今回はしょうがないさ。なんてたって、そこのクズは色々とやってたらしいしな?」

副長官「き、貴様…。黙っていればベラベラと…。総督殿!やはり、こいつのような人間は生かす価値はありません!即刻、処刑しましょう!」


副長官がそういうと、後ろの部下2人も途端に騒ぎ始めた。

グラ「君達、黙ろうか。」ギロッ


総督と同じくらいの威圧感が、この部屋を支配する。

それは見た目と合わさり、副長官達は完全に沈黙する。

凛怜「おお、また強くなったな?グラレス。」

こんなに緊張感が増した空間とは裏腹に呑気な声を凛怜があげるが、その目は肉食獣が獲物を見る目だ。


レギ「あはは、やはり面白いなぁ、凛怜君。」

セグ「はぁ、もっと緊張感を持ってください!」


紅葉「…凛怜、少し黙りなさい。」

凛怜「あ、はい。」

さすが、紅葉姉さん、凛怜を一瞬で黙らせてしまったわ。

さて、じゃあ私もやりますか、私は、副長官達に目を向け。

美桜「あなた達の罪はこちらで調べはついているわよ。」

副長官「罪?ワシはなんの覚えもないが?」

美桜「そんなに言うなら、あなたがやった事、全て挙げましょうか?」

そういうと、私は資料を出して、読み上げた。


どこから資料出したのかは、ツッコまないでね。


美桜「人身売買、賄賂、横領、不当逮捕、暗殺、書類偽装、それらの揉み消し、調べれば調べるほど腐るほど出てきたわよ?」

瑠衣「それについては、僕の所でも調べたよ。」

セグ「私も調べましたよ、副長官殿。」

2人とも、資料を出し、それを提示した。


美桜「これでも、言い逃れ出来る?」

副長官「で、デタラメだ!身に覚えがない!こ、こいつらがやったんだ!」

後ろの部下2人を指差しながら、そう言う副長官。


「な、副長官殿?!」

「う、裏切るのですか?!」

副長官「し、知らんな!」


美桜「へー、あまりこれを出したくはなかったのですが。」ピッ


私が押したのはあの時に録音した音声が入っているレコーダーだ。


『』はレコーダー内の音声です。


『ドン・クローバにあんなこと言ってよろしいので?』

副長官『ん?何がだ?』

『ドン・クローバを実際に処刑する訳では無いんですよね?』

副長官『あぁ、その事か。』


副長官「こ、これは!?貴様どこで!」


副長官『処刑は建前で、ドン・クローバをMIOの生物兵器にする、つまり人としての死だ。まぁ、あやつは異常種だから、もう人ではないがな。』


副長官「お、おい!やめろ!」


『しかし、大丈夫なのですか?』

副長官『なにか不満があるのか?』

『いえ、そう簡単にドン・クローバは従うのかと思いまして。』

副長官『あぁ、対策はしてある、この薬だ。』


副長官「止めろと言ってるんだ!」

グラ「黙れ。」


『それは…?』

副長官『ふふふ、これはだな、精神系の異常種が作り出した薬でな、これを飲ませることで、確実にドン・クローバを洗脳状態に出来るのだ。そして、洗脳状態のドン・クローバを使い、自分のファミリーを襲わせれば、脅威も一斉清掃出来る。すばらしいだろう?』

『なるほど。しかし、こんなものどこで…?』


副長官『あるツテがあってね。』

『さすが、副長官殿ですね。』

副長官『ふふふ、そうおだてるな。ドン・クローバを奴隷にした時は、貴様らにもおこぼれを恵んでやる。』


『やった、俺実は、結構タイプだったんですよね。そういうこともしていいってことで良いんですよね?』

副長官『まぁいいだろう、壊さない程度なら許可してやる。』

『ありがとうございます!』


再生終了


再生が終わった瞬間、恐ろしいほどの殺気がこの部屋に充満した。

凛「凛怜にぃを…お前ら、殺してやる!」ギロッ

怜「…殺す。」ギロッ

愛凛「こいつらは地獄じゃ生ぬるい。」ギロッ

瑠衣「簡単に逝かせないように痛ぶってあげる。」ギロッ

紅葉「その命で償いなさい。」ギロッ


皆、戦闘態勢に入る、止められなければすぐにでも殺しにかかるだろう、私は止めようと思っていない、なんせ気持ちは痛いほど分かるから。


凛怜「お前ら、落ち着け。」

しかし、凛怜が止めた。


凛「なんで止めるの、凛怜にぃ?!こいつらを殺さないと気が済まない…!」

怜「生きてる価値無し…!」

凛と怜が怒りを込めた、激しい声で、凛怜にそう言うが。


凛怜「気持ちは嬉しいが、今は抑えろ。」


凛怜がまた止める、それでも、皆、戦闘態勢は解かなかった。

愛凛「なぜだ!こいつらは凛怜に手を出そうとし、あろう事か私たちのファミリーを潰すと言っているのだぞ!こいつらは死んで、然るべきだ!」


愛凛の言う事に私を含め、姉さん達は全面的に同意だ。これは生半可なものでは止められないだろう。

私も密かに戦闘態勢に入っている。


凛怜「いい加減にしろ、俺は冷静になれと言ってるんだ。」


幹部s「」ゾワッ


「」バタッ

「」バタッ


その一言と一緒に、今まで感じた事の無い強い殺気と威圧感が私達を包み込む。

私達は、冷や汗と共に、心臓をぎゅっと握られてるようなそんな感覚に襲われる。

あまりの強さに、副長官の部下2人は気絶したようだ。


レギ「相変わらず凄い殺気だね。」

グラ「そ、そうですね、僕も冷や汗ものですよ…。」


それを見て、総督達は冷や汗をかきながらそういうのだった…。




















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