第4話 冷酷な事実


凛side


私の部隊の性質上、人脈が広い。

その中で、情報屋を営んでいる人も何人かいる。


もちろんその中には、MIOに通じる人も何人かいる。

その人たちに凛怜にぃを連れていった人の直通番号を聞き出した。


凛「」プルルルルル


セグ『はい。』

凛「私はクローバファミリーの者です。」

セグ『…なんですか?』

凛「要件はわかってるでしょ?」

セグ『…凛怜さんのことですか?』

凛「そうだよ、情報が欲しいの。」

セグ『やはりクローバファミリーが動き出したという訳ですか、当然の選択と言えますね。』

凛「御託は良いの、あなたこの決定に不満がある人でしょ?」

セグ『それをどこで知ったのですか?』

凛「あなた、セグレット=ニコールでしょ?凛怜がよく話してた。」

セグ『…はぁ、だからといって、私が決定に不満があると断定できる根拠はなんです?』

凛「凛怜にぃがいつも言ってた、あなたは誰よりも公平であり続ける人だって。凛怜にぃの処遇は公平であるものとは程遠い、違う?」

セグ『凛怜さんの周りの人は、勝手な人ばかりですね…。えぇそうですよ、私はあの処遇には納得いっていません。』

凛「なら、協力して欲しいの。可能な限りでいいから、情報をちょうだい。」

セグ『私の推測の範囲でしか言えませんが、今回の件は副長官ならびにその手の者によって、行われたものと考えられます。それだけでなく、第三者の介入もあるかもしれません。』

凛「第三者?」

セグ『はい、一概には言えませんが、副長官は不満は持つものの小心者です。これだけの事を独断でやってのけようとする度量がお世辞にもあるとは言えません。私は副長官について調べますが、そちらは第三者の介入があったかどうか、外部から調べて欲しいのです。』

凛「分かった、ありがとう。」


これで、また1歩近づけた。だが、気を抜けない。

しかし、次の一言で、私は追い討ちのように、衝撃を受けることになる。


セグ『急いでください、凛怜さんが処刑される前に…。』

凛「…え?」

処刑?凛怜にぃが殺されるって事…?


凛「ど、どういうこと…?」


セグ『先程、凛怜さんは、大量虐殺者として1週間後に処刑される事が決定しています。』


この事実は、私を絶望に叩き落すには充分すぎるものだった。

凛「…。」ブツッ


呆然とし、いつの間にか、電話を切ってしまった。


凛怜にぃが死んでしまう?あの大好きな温もりが消えちゃうの?

怜「…姉さん?」

凛「怜…。」

怜「何があったの…?」

凛「怜、怜、怜ぃぃぃぃぃ!」ブワッ


怜の姿を見て、私の涙腺が壊れ、気持ちが溢れるように、涙が出てきてしまった。


今は泣かせて、ごめんね…。



怜side


姉さんが呆然としてる、私達は双子、だから何となく、姉さんの感情は分かる。



怜「…姉さん?」

やっぱり泣いてる…。

凛「怜…。」

怜「何があったの…?」

凛「怜、怜、怜ぃぃぃぃぃ!」ブワッ


何かあったのは、一目で分かる。

だから、私は、何も言わずに姉さんを抱きしめた。


それからしばらく経って、姉さんが落ち着きを見せてきた頃。


凛「ごめんね、怜…。」


謝りつつも、私から離れた。


怜「大丈夫、姉さん、落ち着いた…?」

凛「…うん。」

表情は落ち込んだままだったが、姉さんが泣くことは相当な事なので、私は姉さんに聞いてみた。


怜「…何があったの?」


そう聞くと、数秒黙った後、捻り出すような様子で、残酷な事を告げた。


凛「凛怜…にぃが、しん…じゃうって…。」

怜「…え?」

私は思わず聞き返した、それはそうだろう。

聞き間違いであって欲しいという思いが強かった。

しかし、そんな思いなんて無視するように、再び姉さんの口から残酷な言葉を聞く。


凛「凛怜にぃが処刑されちゃう。」


私の中に憎悪と殺意が湧き上がってくる。

殺される?誰が?

なんで?私から奪っていく人はダレ?

コロシテホシイヒトハダレ?

ダレヲコロスベキナノ?

ワカラナイナ、ナラミンナコロソウ!


マッテテニーサン!


私の意識が何かに飲まれそうになった、その瞬間。

黒くなっていた視界に光が指した。

凛怜『俺と来るか?』

…え?兄さん?

どこからか、兄さんの声が聞こえる。


凛怜『正しい力の使い方を教えてやるよ。』

どこにいるの?

凛怜『怜。』

兄さん!

凛「怜!落ち着いて!怜!」

怜「」ハッ

私は何を…。

凛「怜、良かった…。」

怜「兄さん!?あ、姉さん…?」

凛「怜、暴走しそうになってたんだよ…。」

怜「…ごめんね。」

凛「大丈夫だよ、それより何があったの?カチューシャが光ったような気がしたけど…。」

怜「…兄さんがいた。」

凛「え?凛怜にぃ?だって今は…。?!そうだ、早く事実を伝えないと…。」


凛はそう言うと、走り出した。


兄さん、私を救ってくれたんだよね?

私も絶対、兄さんを救うから、待ってて…。




凛怜side


凛怜「…ん?」

なんだか、怜の声が聞こえたような気がする。


美桜「凛怜、どうしたの?変な顔して。」

凛怜「いんや、なんでもないぞ。それで、何の用だ?」

美桜「…良い話と悪い話どっちから聞きたい?」


深刻な顔でそう伝えてくる美桜を尻目に。


凛怜「じゃあ良い方で。」

美桜「セグレットがあなたの無実を訴えているわ。それに、私も証拠は集め終わって、あの人に報告するだけになった。」

凛怜「おお、やるな。…それで悪い方は?」

美桜「…心して聞いてちょうだい?」


美桜から告げられたのは最悪とも言えるものだった。

美桜「1週間後、あなたの処刑が執行されるわ。」

凛怜「…そうか。」

美桜「…随分落ち着いているのね?分かってたの?」

凛怜「…いや、そんな事ないさ、これでも、動揺してる。」

美桜「…凛怜、もしもの時は私があなたを逃がすわ。」

俺を思ってくれるその一言にありがたさを感じたが、俺の答えは。

凛怜「…それはダメだ。」

美桜の言葉を否定する事だった。


美桜「な、なんで?死ぬのよ!?私たちを置いていく気なの?!」

凛怜「ちがう、ただ、お前が罪を背負う必要はねえって事だ。」

美桜「…どういうこと?」

凛怜「俺と美桜には、心強い家族がいるだろ?」

美桜「なるほどね、はぁ、分かったわ。」

凛怜「信じるのみだ。」

美桜「分かったわ。私も連絡をとってみるから、なにか伝えたい事はあるかしら?」

凛怜「んー、机の中は調べないでくれって言っといて。」

美桜「ふふ、えっち。」

凛怜「誤解だ…。」


美桜「はいはい、じゃあ行くわね。」

凛怜「おー、今度はお土産よろしく。」

美桜「もう、あなたは緊張感がないんだから。」

凛怜「これが俺だ。」

美桜「はいはい、それじゃね?」

凛怜「あぁ。」


処刑ね…。

あー、もう本当、災難だわ…。

はぁ、少しでもあれが役に立てばいいんだけどな。

俺だって死にたくねえし、頼むぞ、みんな…。








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