第2話 現状と決意


凛怜side


椅子に座っている、俺の目の前には、俺のファミリーの一員で、3番隊隊長の地位を持つ幹部であり、妹である。

キクザクラのようなピンク色の髪にピンク色の瞳を持つ、美少女だ。

なぜ、美桜がここにいるのかというと、MIOの長官に依頼されたからだ。

MIO内部で情報を過激派に横流ししている輩がいるそうで、それを見つけて欲しいとの事だった。


裏社会で、俺たち、クローバファミリーは一種の抑止力になっているらしく、こういう潜入捜査に駆り出される事は珍しくないが、マフィアの秩序を司るMIOに潜入するのは俺たちでも最悪、処刑されかねない行為なので、慎重さを持っている、美桜に一任している。


美桜「やられたね。凛怜?」

凛怜「そうだな。」

美桜「どうせ、全部自分が受けるとか言ったんでしょ?」

凛怜「…。」

美桜「…まぁいいけど、あんまり心配させないでよ?」

凛怜「それはまぁすまん…。」

美桜「まったく…。」

凛怜「それで、進捗はどうだ?」


さっきまで、ひょうきんな顔だったが、真剣な顔に戻ると。


美桜「誰かははっきりしている、でも証拠が足りないわ。妨害工作や情報操作をして対抗してるけど、そろそろ限界かもしれないわね。私は腕っ節は強くても、こういう機械類は一葉より上手くいかないわ。」

美桜は、少し落ち込んでいるのか、顔が若干下に向く。

凛怜「美桜はよくやってくれてる、一葉よりは劣るがお前も十分に凄いからな。」

美桜「そ、そう?ならいいけど…。」

凛怜「あぁ…そうそう、俺を連れてこいと命令したのは誰だ?」

美桜「このMIO本部の副長官よ。」


どうにも、きな臭いな…。


凛怜「…そいつを、見張っておいた方がいい。そいつの周りにいるやつもだ。」

美桜「ふーん、なんで?」

凛怜「勘。」


俺がそう答えると、なんの疑いを持たず。

美桜「そう、分かったわ。」


そう返事をする美桜に、信頼されてんだなぁとほっこりした気持ちになる。


凛怜「あぁ、頼む。」

美桜「了解、ボス。」


凛怜「あ、そうだ。この任務が終わったら、みんなで年中桜ねんぢゅうざくらを見に行かないか?」

年中桜、又の名を永遠桜とわざくら、その名の通り、何故かは解明されていないが、推定2000年以上咲き続けている桜だ。


美桜「ふふ、ええいいわよ。でも出来れば2人きりが私はいいかな?それじゃね。」


そう言って、部屋を出ていった。

うん、楽しみが増えたな。さて、あいつらは大丈夫だろうか?

俺は、ファミリーの事を思いながら、1人部屋の中で黄昏ていたのだった…。



愛凛side


凛怜が連れていかれてから、私たちは緊急で幹部を招集した。

そして今、紅葉姉さん、瑠衣姉さん、私、凛、怜、一葉が一人一人が見えない圧迫感に押しつぶされているような、そんな顔をして座っている。

そして、紅葉が全員が集まっている事をかくにんし、重い口を開いた。


紅葉「凛怜がMIOに連れていかれたわ。」

凛「う、嘘だよね?」

怜「…タチの悪い。」

瑠衣「…。」

一葉「…。」


凛と怜は周りを見渡しながら、確認を取るが、私の表情や紅葉姉さんの反応を見て察したのだろう。


凛「本当…なんだ。」

怜「…。」


涙は出ていない、だが、苦虫を噛むような、その表情に泣く事を我慢しているのだなと察せられた。


一葉「…罪状はなんなの?」

愛凛「フリーエリアで他ファミリーに暴行を行った行為がダメだったらしい。」

一葉「不当じゃないか、MIOは何を見てきたんだ!現場にも居合わせたのだろう?!」


瑠衣「…凛怜はなんて?」

紅葉「…私と愛凛に、あなた達を頼むって言ってたわ。」

瑠衣「…。」


程度の差はどうであれ、幹部全員が動揺している事は火を見るより明らかだ。

もちろん私もそうだ…。


今すぐにでも、MIOに行って、凛怜を救いに行きたい。

でも、凛怜に頼むと言われたのだ。それは守らなければならない。


私は、紅葉姉さんと目を合わせ、頷き合う。


紅葉「ボス不在の為の措置として、瑠衣、あなたにはボス代理をしてもらいます。そして、一葉、あなたの隊で、事件の事を洗ってちょうだい。」


瑠衣「…そうだね、分かったよ。」

一葉「早く戻ってもらって、文句を言わないとね。色々聞きたいことは山ほどあるし。」



凛「こんな時に何言ってんの!すぐに凛怜にぃを助けるんじゃないの?」

怜「姉さん、落ち着いて。」

凛「落ち着いてなんかいられないよ、なんで今すぐ助けに行かないのさ!」


騒ぎ立てる凛に対して。


愛凛「凛、私達も助けたい気持ちでいっぱいだ。だけど、今の状態では助けられない。凛怜を連れていくことがおかしいとしても、MIOは正式な手順を踏んだと言っていた。ならば、それを覆すものを用意してからでないと、最悪、凛怜が処刑されかねない。わかってくれとは言わないが、その怒りはまだ胸の中に秘めておいて欲しい…。」

凛「…。」

怜「姉さん…。」


凛は黙り込んでしまった、すまない…。


瑠衣「ボス代理として、指示します。とりあえず、情報が足りないから、一葉の他にも、集めるだけ集めて欲しいんだ、よって、1番隊から5番隊も情報を集める為に動いて欲しい。」

凛「…わかった。」

怜「うん、兄さんの為にやる。」

紅葉「えぇ、任せてちょうだい。少しツテもあるから、それぞれ独自に動くって事でいいかしら?」


瑠衣「うん、何としてでも集めてね。」

愛凛「了解した。」


瑠衣「そういえば、美桜は連絡ついてないの?」

紅葉「あの子は凛怜から密命を受けてるから、行方は凛怜以外しらないのよ。」

瑠衣「んー、分かった。とりあえず連絡だけはしておいてね。」

紅葉「分かったわ。」

瑠衣「凛、怜、今は耐え時だけど、大丈夫?」

凛「うん、大丈夫だよ。」

怜「無論。」


さっきの圧迫感など無かったかのように、今は少し軽くなったような気がする。

私も頑張らねばな、そう決心した矢先。


一葉「私も最善は尽くすよ。まだ、約束のデートをして貰ってないしね。」


その瞬間、さっきとは別の意味で重々しい空気が流れた。

は?デート?


愛凛「まて、どういう事だ?」

凛「聞き捨てならないよ?」

怜「説明。」


一葉「そのままの意味だよ、随分前から約束していたのに、まだ行けてないんだ。これが終わったら、早速連れて行ってもらおうかなって思ってね?紅葉姉さんと瑠衣姉さんは知ってるはずだよ?」


紅葉「…知っているわ。」

瑠衣「認めたくはないけどね…。」


なんだって、くぅ、羨ましい…。私も誘ったら、一緒に行ってくれるのだろうか?

いや、行くんだろうな、二つ返事で。

帰ってきた時に、私も誘ってみよう。


その為にも、私達で凛怜を、救い出さねば。


待っててくれ、直ぐに迎えに行くから。











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