第19話 情報屋と苦労人


紅葉side


私は講義が終わり、1人で準備室へ向かっていた。


紅葉「なんだか、忙しいわね。早く戻って、凛怜に癒してもらおうかしら。」

セツナ「紅葉先生だ。」

私がぼやいていると、セツナが私に話しかけてきた。

紅葉「あら、セツナさんじゃない。どうしたの?」


いつもと様子が違うような、怪しい雰囲気を纏ったセツナに少し警戒しつつ、セツナが口を開くのを待つと。

セツナ「クローバファミリー第1部隊隊長 黒葉 紅葉、昔からボスである、黒葉 凛怜と一緒にいて、異常種。主な能力は硬化と鬼神化、2つを並列に使えることから、戦闘面ではボスに劣るものの、ファミリーの中で2番目に強い。」


急に、私の情報を洗いざらい公開しているセツナに警戒を強める。

私はファミリーに属している事は話しているが、どこに属しているのかを誰にも話してはいない。


紅葉「あなた、一体何者?」

セツナ「私はしがない情報屋さ。」

その言葉を聞いて、私の中でひとつの考えが浮かんだ。

紅葉「なるほど、あなた世界一の情報屋として名高い刹那せつなね。」

セツナ「大正解!さすが、紅血の鬼姫を言われるだけあるね。」

紅葉「それで、なんで正体を明かしたのかしら?あなた謎が多いってきいてるのだけれど?」

セツナ「いや、実はね…」



回想シーン

1週間前のこと


凛怜「よう、セツナ。ちょっといいか?」

セツナ「凛怜先生、何かあったんですか?」

凛怜「おう、ちょっとな。」

セツナ「??」

何かしたんだろうか、何もした覚えはないのにと、思っていながら、準備室へ通されると。

壁ドンッ

セツナ「ふぇ!?」

なんと凛怜先生は壁ドンをしてきたのだ。

凛怜「お前何者だ?あの時遠くから見てただろ?」

セツナ「なんの事?」

凛怜「ほぉ、俺の前でしらを切るか。」

そして、どんどん顔を近づけていき、キスをされるんじゃないかというくらいの距離で。


凛怜「お前と同じ気配を工場でドンパチした時、感じた。気配が消すのが上手いんだな?俺じゃなきゃ気づかないぞ。」

セツナ「い、いやその、ち、近いから!」

凛怜「嫌なら、早く吐け。」

別に嫌じゃないけど…。

セツナ「せ、生徒にこんな事していいと思ってるの?」

凛怜「人は来ねえし、叫んでもここは防音だ。助けは来ないぞ?俺はそんなヘマはしねえから安心して吐け」ニコッ

セツナ「わ、わかったよ!だからとにかく離れて!」

凛怜「分かればいい。」

妖艶な笑みと紅い瞳に惹き込まれ。根負けしてしまい、私は全てではないけど、話した。

そして、凛怜の反応は。

凛怜「なるほどな。情報屋ね…。どこまで掴んでる?」

セツナ「どこまでって?」

凛怜「俺の事。」

セツナ「大体は分かってるよ。ドン・クローバさん。」

そういうと、また笑みを浮かべて。

凛怜「よし、お前の事を買う。どうせセーラについても調べてるんだろ?」

セツナ「へ?」

私は素っ頓狂な声でそう言った。

凛怜「へ?じゃないだろ。Yes or Noだ。」

セツナ「…私は結構高いよ?」

凛怜「いいぞ。その代わり、裏切りは許さねえ。」

セツナ「それはしないよ。それで、何をすればいいんだい?」

凛怜「グリドールについて調べてくれ。」

セツナ「それはもう調べてるよ。どうやら、1週間後に行動を起こすみたいだね。」

凛怜「お、なら話は早いな。恐らく、俺を拉致しに来る可能性が高い。」

セツナ「その根拠はなんだい?」

凛怜「俺は相当恨みを買ったからな。それに俺に向けてきた視線、あれは俺にターゲットを絞ってると言っていいだろうよ。」

セツナ「わかったよ。それで私は何をすればいいの?」

凛怜「1週間後、紅葉にこの事を伝えてくれ。そしたら、紅葉が適切に動くはずだ。」

セツナ「了解。」


回想シーン終了


セツナ「って訳。」

紅葉「はぁぁぁぁ、ほんとあの人って勝手なんだから!」

私はため息をつきながら悪態もついていた。

壁ドンしたですって?あれは余程のことがない限りは禁止していたのに、何故こうも簡単にするのかしら。

凛怜が直々に尋問する際に使われる常套手段だけれど、正直やめて欲しいことなのだ。

羨ましいというのもあるけれど…。

セツナ「…いつもこうなのかい?」

紅葉「そうね、本当になんで抑えてくれないのかしら?いつも厄介事に巻き込まれるの。凛怜はボスなのよ?寿命が縮まるわ。」

セツナ「苦労してるんだね。」苦笑

と、苦笑い混じりにセツナが言ってくる。

けど、私を信じてると伝わってくるのだから、悪い気はしない。

私は早速あるところに電話をかけた。


紅葉「私よ、…えぇ。…そういうことよ。お願いね。」

電話を切ると、私は早速、行動をした。

セツナ「どこに行くんだい?」

紅葉「決まってるじゃない、エリスの所よ。」

セツナ「…私も行っていいかい?」

紅葉「ええ、いいわよ。あなたにも動いてもらうから。凛怜は、あなたを買ったんだもの。」

セツナ「そっか。」

私達はエリスの元へ行き、これから起こるであろう事を説明しなければならない。

どんなお仕置がいいかしら?とそう考えながら、私はセツナと共に、エリスの元へ向かうのだった…。

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