第7話 非常勤講師の就任


凛怜side


次の日、俺は紅葉とエリスと共に、リードベルグ学園に来ていた。

俺と紅葉は、スーツをきっちり着込んで、エリスも俺たちと同じようにスーツを着こなしていた。

エリス「ここが、リードベルグ学園よ。とても広いでしょ?」

凛怜「あぁ、とても広いな。」


膨大な敷地に、とても高くて広い建物で、本館や別館に分かれており、とても立派だ。さすが世界最高峰の学園だと感心する。


紅葉「凛怜、迷子にならないようにしないといけないわね。」

凛怜「俺はそんな間抜けではない。」

と、軽口を叩きあっていると。

エリス「じゃあ、職員室まで案内するわ。」

凛怜「了解した。」

俺たちはエリスに案内され、建物の中に入り、職員室へ向かって歩き出す。

内装はもはやお城かと錯覚するような豪華なデザインで、慣れなければ迷子になるだろうなぁと思わずにはいられない。


歩いていると、エリスに向けて、様々な生徒がすれ違う度に、挨拶をしている。

エリスはそれを笑顔で返していた。


凛怜「…慕われているんだな。」

エリス「えぇ、いい子達ばかりよ。」


顔に張りつけたような笑顔でも、本当にこの学園が大事なんだなと声色で判断できる。


しばらく歩いていると、職員室と書いてある看板が見え、俺たちは扉の前で立ち止まった。


エリス「ここよ、まず入ったらあなた達を紹介するから軽く挨拶なさい。」

凛怜「わかった。」

紅葉「分かったわ。」

そして、エリスは扉を開け、中に入り。


エリス「全員注目!今日から何日か非常勤講師を勤める2人を連れてきたわ、紹介を。」

凛怜「今日から非常勤講師として、やらせて頂く、黒葉 凛怜です。よろしく。」

紅葉「同じく、黒葉 紅葉です。」

エリス「…それだけ?」

凛怜「ん?あぁ、ダメだったか?」

と、俺がエリスに言うと。


??「理事長、多少聞いていますが、こいつらは大丈夫なんですか?特にこの小娘は。」


…こいつ俺を見て、小娘って言ったか?

俺は、多少のことなら我慢が出来るとは思っているが、こういう奴が大嫌いだし、俺を小娘呼ばわりしたことが何よりも許せなかった。

だから、目の前の男に威圧しながら俺はこう言った。


凛怜「おい、ハゲ。てめぇ、名乗りもせず人のことを小娘呼ばわりか?それに、俺は男だ。殺すぞ…?」



紅葉side


あぁ、言ってしまった。場が凍りついたのが分かる。

最初は私もイラついていた、凛怜をあろう事か馬鹿にしたのだ、自分の最愛の人を馬鹿にされたら、それはイラつくに決まってる。

だけど、この男は凛怜にとって、言ってはならない禁句を言ってしまったのだ。

エリスもそれを理解しているのか、やっちまったなというような顔をして、元凶である中年の男に同情の目を向けていた。

周りの人間も凛怜の威圧感に身体を震わせている。

何より、中年の男は、気絶しそうな勢いで顔を真っ青にして、立つのもやっとという状態になっていた。


エリス「…教頭、不用意な発言は慎んだ方がいいわよ?」

と、エリスが言ったところで。

教頭「こ、こ、こいつらは何者なんですか?」ガタガタ


教頭と呼ばれた中年男は、そう尋ねる。


エリス「非常勤講師よ、聞いてなかったの?」

教頭「いやそういうことではなk」ヒッ

凛怜を見て、怯える様に私の怒りは収まり。

紅葉「凛怜、皆さんが怯えているから。」

凛怜「…あぁ。」

と、凛怜を宥め、凛怜の威圧感は収まった。


エリス「この2人には特殊クラスを担当してもらいます。」

怒りが収まったタイミングで、エリスはこう言うと。

教頭「あの、問題児ばかりの落ちこぼれクラスに就任とは、お似合いだな!」

と、途端に元気になったのか、馬鹿なことを言い始める。

それを聞いた瞬間、周りの教師も。


「あのクラスか、気の毒に。」ヒソヒソ

「異常種の相手なんて…。」ヒソヒソ

と、言い始めたので。

エリス「無駄口を喋っていないで仕事をなさい。」

と、エリスが注意し、その場を収める。

私はこの職員室に不快感を覚えていた。

凛怜も段々不機嫌になっていく。


凛怜「エリス、クラスに行くんだろ?早く行くぞ。」

と、早々に出ていこうとする凛怜に。

教頭「き、貴様!理事長に向かってなんて口の聞き方だ!」

凛怜はそれを聞いて、

凛怜「あ?お前には言ってねえ、黙れ。」

教頭「」ヒッ

凛怜「紅葉、エリス行くぞ。」

紅葉「わかったわ。」

エリス「はいはい。」

教頭はもうトラウマになったのか、何も言えず、凛怜とエリスはそのまま部屋を出た。私は凛怜に付いて行き、部屋を出る前に。

紅葉「凛怜を馬鹿にするなら、相応の覚悟をする事ね?」

と、全員を脅して部屋を後にするのだった…。


凛怜side


はぁ、やっちまったわ。

俺は後悔を勿論していないし、全くもって反省もしていないが、やり過ぎたとは思っていた。

せめて、特殊クラスの子達がいい子である事を祈るばかりだ。


エリスに案内され、特殊クラスの教室の前に着いた。

そこは別館だったが、とても古ぼけていてとてもじゃないが、清潔とは言えない場所だった。

エリスを見て、これはどういうことだと言いたくなるが、今は言わないでおく。


エリス「じゃあ、後はよろしくね。」

と、丸投げするようなことを言い、エリスは早々に戻っていこうとする。

凛怜「おい、説明もなしかよ…。」

エリス「まぁ、後は凛怜と紅葉次第だからね、よろしく頼んだわ。」

凛怜「はぁ、分かったよ。」

エリス「それじゃ。」

と、言って今度こそ、エリスはいなくなった。

紅葉「私が先に入ろうか?」

と、紅葉は言ってくるが。

凛怜「いや、俺が入る。」

と、答え扉に手をかける。そして深呼吸した後、扉を開けると。

??「ほむら。」

と、声が聞こえた瞬間、けたたましい量の炎が俺に向かってくる。

凛怜「ぬるいな。」フゥ

と、マッチを消す感覚で炎を消すと。


??「な!?俺の焔が!?」

炎を放った男子生徒だけでなく、そこにいた生徒全員が驚きを隠せずにいた。

凛怜「…お前か?これやったの。」

??「そうだよ、なんだ、文句あっか!?」

凛怜「お前は確か、ファルビルだったな。」


ファルビル(以下ファルと略します。)


ファル「な、何で俺の名前しってんだ…!?」

凛怜「当たり前だろう。俺の担当する生徒の名前は全員、覚えている。」

ファル「な!?」

驚きを隠せないファルビルを無視して、俺は全員に向かってこう告げる。

凛怜「俺は、黒葉 凛怜だ。今日からお前たちの講師になる。覚えとけよ?」と…。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る