第5話 示す覚悟


凛怜side


あれから3日、俺はゼニアルにある、エリスの実家である、リードベルグ邸の前にいた。

護衛は紅葉のみがついている。


俺自身、護衛は要らないと言ったのだが、

紅葉「私は護衛責任者として行くのよ。なにか文句でもあるのかしら?」

と、凄い迫力で言われてしまえば従うしかない、俺ボスなんだけどなぁ…。


紅葉だけを連れていくとなった時。


愛凛「私も同行しよう。」

瑠衣「秘書的な立場にある僕こそ行くべきじゃない?」

一葉「ここは、色々探ることが出来る私が行くべきだと思うなぁ。」

と、言っていたが、漏れなく却下し、

その代わり、今度埋め合わせするという事で渋々納得してもらえた。


入口の前で待っていると、扉が開き。

そこには、紳士的という言葉が似合うエリスの父親、ガリス=リードベルグ卿とその隣にはとても麗しいという言葉が似合う、エリシア=リードベルグ夫人が出迎えてくれる。


ガリス「待っていたよ、久しぶりだね、凛怜君!」

凛怜「いえ、リードベルグ卿。急な事にも関わらず、お招きいただきありがとうございます。」


エリシア「そんなにかしこまらないでよろしいのですよ?お久しぶりですわ、凛怜君お元気でしたか?」

凛怜「はい、お久しぶりです。とても元気にやらせて頂いてます。リードベルグ夫人もお変わりございませんか?」

エリシア「ふふ、変わらず元気にやれてますよ。」


ガリス「まぁまぁ、そんなに堅くならずに折角の婚約へ向けての挨拶なんだ。さぁ我が家へ入りなさい。エリスも待っている事だしね。」

凛怜「ありがとうございます。それではお邪魔致します。」


俺たちは、リードベルグ邸に入ると、やはりと言うべきか、メイドや執事と言った人達がお出迎えをしてくれる。

メイド達「いらっしゃいませ、黒葉様方。」

メイドか…。家にはいないので、物珍しさを感じ、つい、そちらに視線を向けていると。

ガリス「そんなに珍しいかね?」

と、リードベルグ卿が話しかけてくる。


凛怜「ええ、私共の所にはメイドはいませんから。」

ガリス「そうか、雇おうと思えば雇えるのにかい?」

凛怜「ええ、あんまり考えてなかったです。」

エリシア「ふふ、そうなんですね。家のメイド達に夢中になったのかと思いましたわ。」

凛怜「それは無いです。」苦笑


勘弁して欲しい、さっきから喋らないが、紅葉の視線がすごく痛い。

案内役のメイドを先頭に、リードベルグ卿と夫人の2人と歩きながら話していると。


エリス「あ、凛怜!」

と、エリスが走ってこっちに来た。

エリシア「こら、エリス、淑女がそのようなはしたないことをするものではありませんよ。」

エリス「いいじゃない、お母様。」

エリスは夫人に叱られていたが、反省した様子は全くない。そんな様子を見て


エリシア「全くこの子は…。」

と、夫人は頭を抱えていた。

ガリス「まぁ、いいじゃないか。凛怜君が来てくれたんだ。エリスも嬉しいのだろう。」


リードベルグ卿はそんな事を言って、エリスをフォローしているが、夫人は納得いかないと言った顔だったが、やがて諦めたような表情をしていた。


エリシア「ごめんなさいね、凛怜君。この子いつも凛怜君に苦労をかけてるでしょ?」

エリス「そんなことないわよ。ね?凛怜?」


いや、まぁそんなことあるが。はいそうですと直球で答えても、後でエリスに言われるので。


凛怜「たしかに、少しお転婆な所もございますが、そこも彼女のいい所だと思っています。」

と、俺は返答をした。別に嘘では無いので、問題は無いだろうと思っていると。


ガリス「あははは、やはり君は面白い子だね。エリスの婚約者が君で安心しているよ。」

エリシア「ふふ、そうね。幸せ者ね?エリス?」


エリス「お父様!お母様!もう!凛怜早く行くわよ!」

凛怜「なんで、怒ってんだよ…。」

俺は、怒っているエリスに疑問をぶつけた。

エリス「なんでもない!ほら早く!」

エリスはそう言って、俺の手を引っ張って行く。


凛怜「こ、こら引っ張るな。」

エリス「いいじゃない、私と君の仲でしょ?」

凛怜「はぁ、分かったよ。」

と、俺はもうエリスの思うままにしようと、諦めて素直に従うのだった。


そして、リードベルグ卿の自室へと案内され、

リードベルグ卿と夫人に対面している形で座らされ、そしてその隣にはエリスがおり、俺の後ろで紅葉が待機しているという状態になっている。


ガリス「楽にしたまえ、それで凛怜君。娘との婚約の件なんだが、これは本当かね?」

凛怜「はい、エリスさんと婚約してます。」

ガリス「ふむ、私はね凛怜君、君はとてもいい子だと思っている。エリスも君の事になると、感情豊かになるし、何より幸せそうだ。」

凛怜「はい。」

ガリス「しかしだね、君は裏の人間である事は紛れもない事実なんだ。エリスが危険にさらされることだってある。君は守れると誓えるのかい?」

凛怜「この命に変えても守り抜きます。エリスは俺の大切な人ですから。」


婚約者だとかそんなのは関係ない、エリスはもう俺の大切な人だから守り抜く。絶対に死なせることはしない。

これは俺の誓いであり、覚悟だ。

エリス「凛怜…。」

ガリス「…そうか、ならもう何も言うまい。」

エリシア「凛怜君、エリスはお転婆で時々無茶をするけれどお願いしますね。」

凛怜「はい、お任せ下さい。」

俺は力強く返事をした。


ガリス「あ、そうそう。君を見込んで少しお願いがあるんだが、どうか聞いて貰えないか?」

凛怜「?それは、なんですか?」

ガリス「エリスが理事長をしている学園の臨時講師になってくれないか?」


…これはめんどくさそうな事がまた起こりそうだな。と、思うしか無かった…。




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