第6話 怒らない人は怒る時が怖い


凛怜が退室した後、紅葉と一葉は向かい合って、いや、睨み合っていた。

紅葉「凛怜は渡さないわよ。」

一葉「凛怜は姉さんのものじゃないよ。」

紅葉「いずれはそうなるのよ。」

一葉「変な妄想するべきじゃないよ。私と一緒になるから。」

紅葉「あなたも妄想癖はやめた方がいいわよ?」

一葉「妄想じゃない。決定事項さ。」

紅葉「あなたも大概ね…。」

一葉「姉さん程じゃないよ。」


互いを牽制するかのように、お互い睨み合う、心なしか、2人の周りには黒い気配があるようにも見える。

もし今、他の人が来たとしたら、素足で逃げ出すだろう。

紅葉「大体、何よ。約束って、姉である私を差し置いて、生意気だわ!」

一葉「姉かどうかなんて関係ないのさ。それに、凛怜からお礼がしたいと言ったんだよ?」

紅葉「はぁ?何それ羨ましいわね。私は誘われたことないのに…。」

一葉「いいじゃないか、私は姉さんと違って、戦いの時、一緒に行けないんだ。たまには、妹に譲ってくれたっていいじゃないか。」

紅葉「だめよ。他のことなら譲るけど、凛怜は譲れないわ。だってあの人は私の…。」

一葉「ん?」

途中で言い淀む紅葉に、一葉は違和感を覚える。

一葉「私の何…?」

紅葉「あ、そう1番付き合いが長いんだから!」

その言葉に嘘は感じられない。だが、なぜか違和感を持つ一葉だったが。

紅葉「ともかく、あなたには絶対渡さないわ!」

その言葉で、一葉は自分の中にあった違和感は消えないが、言う。

一葉「な!?このわからず屋!」

紅葉「ふん、機械オタク!」


言ってる言葉は小学生レベルの事だが、異様な威圧感を放っている2人にはとてもツッコめる人なんていない。止められるとすれば…。


凛怜side


用事から帰ると、状況は悪化していた。

さすがにこれはだめだなぁと思い、声をかける。


凛怜「おーい、2人とも?」

一葉「大体、姉さんは昔からべったりじゃないか!」

紅葉「あなたも同じようなものじゃない!」

どうやら、2人には俺の声は聞こえていないようだ。

凛怜「おーい、お前r」

バキッドゴーン

俺が言う前に紅葉と一葉に殴られ、吹っ飛ばされる。

俺を吹っ飛ばした2人はというと…。

紅葉「」ワーワー

一葉「」ギャーギャー

まだ、言い合いが続いている。

ブチッ

…あー、お兄ちゃんブチ切れたわもうダメだわこれ

とりあえず…。

凛怜「…おい。」

自分でも驚くほど、低い声がでる。

紅葉・一葉「「あ。」」

2人は怒ってる俺を見て、顔を真っ青にさせ、冷や汗をかいているようだった。

紅葉「り、凛怜?目が怖いわよ…?」

恐らく、怒った時に目が少し紅く光るので察したのだろう。それは一葉も同じだったようで。この世の終わりのような顔をしている。

とりあえず、そんな2人に俺はとびきりの笑顔で伝える。


凛怜「てめえら、正座な。」ニコッ

紅葉・一葉「「はい!」」

非常にいい返事が返ってきて、同時に正座する。


凛怜「…で?お前ら、何でこんなことを?」

一葉「姉さんがなかなか認めてくれないから…。」

紅葉「な!?それはあなたもでしょ!」

一葉「私は決定事項だ!」

紅葉「この後に及んで、まだ言うのね、あなたは!」

また激化し始める。

凛怜「そうか、お前達揃って、俺の愛の拳がお望みか?」

というと、2人とも静かになる。

凛怜「はぁ、姉妹喧嘩もいいが、もっと殺気を抑えろ。部下達が怖がるだろ。」

紅葉・一葉「「…はい。」」

凛怜「大体、お前らは……」


1時間後


凛怜「わかったか?2人とも。」

紅葉・一葉「「…はい。」」

凛怜「よし、じゃあ仲直りしようか。ただ、言葉だけでは足らん、よって…。」

紅葉・一葉「「???」」

凛怜「こうだぁぁ!」ギューー

俺は2人とも巻き込む形で抱きしめた。

紅葉「ちょ!?」

一葉「え!?」


2人の戸惑った反応にとても満足する。

うんうんやっぱりこういう反応になるよな、可愛い。

戸惑う2人をそう思いながら、満足するまで抱きしめたのだった…。



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