第5話 異名と予感

紅葉side


あれから瑠衣と別れて、私と凛怜は一葉の元へと向かっていた。


紅葉「ねえ、凛怜。」

凛怜「ん?なんだ?」

紅葉「貴方の勘は、今回の件についてどう感じているのかしら?」

凛怜「あぁ、嫌な感じが強くなってる。ただ、今回の件はファミリーのというよりは、俺の事の方が強い。」

紅葉「そう…。」

凛怜の嫌な時の勘はいつも総じて、当たる。

それが能力だからといえばそれまでかもしれないけど、それで、これまで救われてきた部分もある。

そうなると、凛怜に危険が及んでいる?

確かに、凛怜は我がクローバファミリーのボスなのだから、誰よりも危険な所にいるけれど、その程度の脅威なら凛怜の勘は発動しない。凛怜の命を狙おうだなんて…。


紅葉「…潰すしかなさそうね。」((ボソッ…

凛怜「…そんな怖い顔して、物騒なこというんじゃねえよ。大丈夫だ。俺にはお前達がいるんだからな。早々死なんさ。」

紅葉「…はぁ。そう言ってくれてるのは嬉しいけれど、あなたのそういう自分のことになると、楽観的なとこ、ダメだと思うわよ?」

凛怜「いいんだよ、守ってくれるんだろ?」

凛怜はいたずらっ子のような表情で、言ってきた。


紅葉「あら、昔のあなたが聞いたら、さぞ、驚くでしょうね。それに、あなたは私たちに守られなくても良いでしょう?裏社会最強の殺し屋【紅銀べにがねおに】さん?」


なぜ、凛怜がこう呼ばれているのか、知っているのは、私しかいない。凛怜自身はその力を嫌っているし、私もたまたま知っただけ。

けど、私しか知らないという所で、優越感を感じているのは秘密の話だ。


凛怜「これはこれ、それはそれだ。それに、紅葉こそ、【紅血あっけつ鬼姫おにひめ】なんて呼ばれてるじゃねえか。」

紅葉「私はいいの。結構気に入ってるもの。」

凛怜「まぁ、たしかに。俺に説教して来る時なんてまさに、おn」

紅葉「ん?何?」

凛怜「いえ、なんでもないです!」

紅葉「…次はないわよ?」

凛怜「いえっさー!さー!」

紅葉「まったく…。」

そうこうしている内に目的の場所に着く。

…帰ったらお仕置考えとかないとね。


凛怜side


こわい、紅葉怖い。視線で人殺せるレベル。

身体の寒気が止まらねえ…。

俺は機嫌を損ねてしまった、紅葉対策を考えていた。んー……よし諦めよう。全俺が敗北した瞬間だった。だって、怖いんだもん。チーン

そう考えているうちに、一葉の仕事部屋の前に着く。


コンコン

凛怜「入るぞ、一葉。」

一葉「やぁ、いらっしゃい凛怜。ん?それに紅葉姉さんじゃないか!久しぶりだね。」

紅葉「ええ、久しぶりね。一葉。元気だったかしら?」

一葉「うん、見ての通り元気だよ。それで今日はなんの用なんだい?2人でお茶のお誘いに来た訳じゃないよね?」

凛怜「察しが良くて、助かるよ。実は…。」

俺は、ブラッドファミリーのこと、そして俺が感じた事を全て説明した。説明が終わったところで

凛怜「------こんなとこだ。」

一葉「なるほど。ブラッドファミリーの乱入と2つの気配か…。これは、何かありそうだね。」

紅葉「ヤツらの目的が何か、調べられないかしら?」

一葉「やってみるだけやるけど、正直難しいっていうのが本音だね。こちらのデータを盗られる可能性の方が高い。」

凛怜「そうか。どうしたものか…。」

と、頭を悩ませていると。

一葉「まぁ、やるだけやってあげるよ。」

凛怜「あぁ、ありがとうな。」

一葉「その代わり、約束ちゃんと果たしてね。」

凛怜「ふふ、任せろ。」

紅葉「…約束って?」

紅葉は面白くなさそうな顔をしながら言った。

一葉「それは秘密だよ姉さん。ね?凛怜?」

凛怜「え、別にその必要h」

一葉「ね?凛怜?」

凛怜「ハイ、ヒミツデス。」

一葉からの異常なプレッシャーに負ける。だって怖いもん。

一葉「という訳で、姉さん詮索はダメだよ?」

紅葉「…分かったわ。」


なぜか、紅葉と一葉は睨み合ってる。

穏やかじゃないその空気に居心地の悪さを感じるので、切り替えようとして。


凛怜「じ、じゃあ俺はこれから用事があるから、ちょっと行ってくるわ。紅葉はどうする?」

紅葉「私はもう少しここにいるわ。」

笑ってない笑顔で紅葉はそう答える。

凛怜「そ、そうか。じゃあまた後で。」

と、俺は部屋から退出する。妹達怖いとそんな事を思ったのは俺だけの秘密だ…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る