第44話 海ダンジョン:二階層
二階層に降りると森だった。
『主殿。この階層は危険です。魔物の気配が異常に濃いです。』
『ああ、俺でも気配を何となく感じるよ。ここはかなりヤバいな。』
一番近くの気配に慎重に近づいてみた。オークがいた。
近くにも魔物の気配があるから静かに素早く倒す必要があるな。
サイレンスを発動させて周囲の音を消す。そしていつものように上空からの一撃で仕留める。ドロップ品を回収してすぐに上空に退避して身を隠す。次の魔物がいる場所へ向かう。
巨大なゴリラがいた。
『シュバルツ。ぎりぎりまで近づいてみる。看破を頼む。』
『あれはどう見ても手に負える相手ではありませんよ。』
背後から慎重に近づいて行く。
『アーマードゴリラです。頑強Lv6。暗視なし。魔法はありませんが、投擲スキル有り。近接戦闘は絶対に避けてください。主殿の障壁三枚でも危ないかもしれません。』
頑強Lv6は俺ではどうにもならんな。何でこんなのが二階層降りてすぐの所にいるんだよ。
『分かった。だが試してみたいことがある。まずはデュンケルがバリスタを一発撃つ。その後、二手に別れよう。デュンケルはシュバルツの影に入ってすぐに次弾装填。俺は注意を引き付けながらウィークポイントを使う。そこを狙って次弾を撃て。シュバルツ、デュンケルのサポートを頼むぞ。あとレンタルパワーも頼む。』
俺が少し前に出てサイレンスを使い、戦闘開始の合図を送る。
デュンケルの一射目が放たれた。敵の脇腹の辺りに深く刺さった。ゴリラは振り返ってこちらに襲ってきた。上空に退避しつつ、ウィークポイントを敵の背中部分にかけることに成功した。その時、足場の障壁に大きくヒビが入った。どうやら投石してきたようだ。投石でこの威力はヤバすぎる。足場の障壁を大きめに作りながら、注意を引くように移動した。丁度、現れたデュンケルに敵は背を向ける位置取りに誘導できた。デュンケルから二射目が放たれ、見事に背中を貫通した。
ゴリラは後ろを振り返るが、そこには既にデュンケルはいない。俺はさらにウィークポイントを敵の頭にかけていく。そしてブラックアウトを使い、金属魔法で先端を尖らせたロッドを敵の頭に突き刺した。
硬い!数センチ位しか刺さらなかった。ロッドは手放して、すぐにその場を退避する。暗視はないから見えないだろうが、適当に振り回された拳に一発でも当たればこちらは致命傷だ。退避してからブラックアウトを解除する。解除した途端に投石が飛んできた。だが今度は足場の障壁は二枚展開しておいたから問題なく防げた。
そしてシュバルツの影からデュンケルが現れ、三射目が発射される。再度背中を貫通した。ゴリラはとうとう霧散して消えた。
急いで霊獣コンビと合流して、ドロップ品や鉄の槍、それに俺のロッドを回収する。もう俺達は冷や汗が止まらなかった。満場一致ですぐに一階層に戻ることが決まった。
階段を登って一階層へ出た所で影の中へ潜った。
『あれはなんだ!なんであんな化け物が二階層で出るんだよ!急に難易度跳ね上がりすぎだろ!』
『主殿!また無茶をしましたね!』
『二階層は駄目だな。初のダンジョン攻略者になりたかったけど諦めるよ。今の俺達では攻略できん。』
『周辺の魔物の気配が多すぎて乱入されたら終わりですからね。あのゴリラクラスの気配は他にもいくつかありましたよ。』
『ああ、だがデュンケルのバリスタの威力は凄まじかったな。それに全弾命中するとは思ってなかったよ。よくやってくれた。』
デュンケルは誇らしそうだ。
『それにしてもサイレンスは意外と便利な魔法ですね。私は全く使ってませんでしたが、今後は私が担当しましょう。』
『ああ、そうだな。分担したほうが良さそうだな。サイレンスはパーティ戦でもない限り戦闘中は常時発動の方が良さそうだ。だが、ブラックアウトは俺のタイミングで使いたい。』
『危険ではありましたが、デュンケルの新武器を取り入れた新しい戦術を試す相手としては、最適だったかもしれませんね。』
確かに良い経験になった。俺が撹乱・弱体化させつつ、霊獣コンビが仕留める。いい連携だったな。
もう少し強くなれば二階層はスキルレベル上げには都合がいいかもしれない。
影の中で一休みしてから外へ出た。
一階層ボスのサメはまだ近海を泳いでいた。
『主殿。あのサメまだいますよ。きっと誰も来ないからボスの役目がないんですよ。』
『そう言ってやるなよ。なんか可愛そうになってくるだろう。まあ相手をしてやろうか。』
俺は高度を下げてサメが来るのを待った。ロックバード戦のときのように障壁でカウンターをいれてやろうか。サメが飛び上がってくるタイミングに合わせて、障壁二枚を薄く鋭利に展開した。サメはザックリ障壁に刺さった。ロッドの先端で止めを刺して、あっさり戦闘は終わった。ドロップ品が海に落ちないように障壁を張り直して回収した。
その後は何事もなく入り口まで戻ってこれた。
二階層までは走って大体三時間位で行ける。広そうに見えて意外とこの階層は狭いのかもしれない。
今回の探索結果を冒険者ギルドに提供するべきか迷ったが、一応報告することにした。
二階層で強力な魔物が彷徨いているのは、おそらく魔物の氾濫のせいだ。長年放置されて魔物が増えて階層を越えて上がってきた。しかし、一階層が海だったので、二階層までしか上がれなかったのだろう。
冒険者ギルドでドロップ品の一部を見せて情報を提供した。二階層への階段の方角と大体の距離、そして大きなサメの魔物が階段周辺にいること。そして二階層の状況が報告内容だ。
冒険者ギルド側は最初は半信半疑の様子だったが、ドロップ品の提示と障壁スキルで空中を歩いて見せたら信じてくれた。情報提供料として幾ばくかのお金がもらえた。
その日は疲れて早々に休むことにした。
翌朝、昨日のドロップ品を確認することにした。各魔物の魔石、これはスピーダーの燃料だな。アーマードゴリラは硬い毛皮をドロップした。ローレンス商会にお土産にしよう。キラーシャークは肉と小さい箱をドロップした。サメ肉は時間が経つとアンモニア臭がするんだったか。マジックバッグに入れておけば関係ないか。そのうち、バターソテーにでもして食おう。小さい箱の中は青い宝石が入っていた。確かダンジョンでの宝石はレアドロップ扱いだったはずだ。運が良かったらしい。記念に持っておこう。
早朝に市場に行って追加の海産物を大量に仕入れてリビアに帰ることにした。来た時同様にスピーダーで爆走して帰った。
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