たった一人のあなたへ捧げる物語

香田

第1話 プロローグ

「君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな」

海辺を歩く少女二人。その一方が突然、悲しそうな顔で和歌をよんだ。

「急にどうしたの?」

急に和歌をよみだしたことに驚いて、もう一方の少女が心配そうに和歌をよんだ少女の顔を覗き込んだ。

「ねぇ、さっちゃん。」

覗き込まれた少女は、もう一方の少女の名前を呼び、まっすぐ彼女の目を見つめてこう言った。

「この先、どんなに辛いことがあっても、孤独を感じても、決して諦めないで。生きていて。他の人たちの心ない言葉や行動のためにあなたが犠牲になることはないの。あなたはたった一人の大切な存在なんだから。」


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