ルターと印刷技術

 ルターというのは、宗教改革(1517年)を開始したドイツの有名な人です。

 宗教改革でルターは、「95ヶ条の論題」を発表して、それまで西欧で権威を持っていたカトリックを批判しました。そしてプロテスタントの一つであるルター派という宗派ができました。


 ルター派が人々の間に広まった理由は、「親しみやすさ」にありました。

 これには、宗教改革のちょっと前に起こった、活版印刷技術の発明が関与しています。

 どういうことか、詳しく見ていきましょう。


 ルネサンスの三大発明(というよりは、中国の宋で発明されたものがヨーロッパで改良されたもの)として、火薬、羅針盤とともに数え上げられる、活版印刷技術。

 諸説ありますが、グーテンベルクという人が15世紀に作ったのだと言われています。

 ヨーロッパにおいて印刷機の開発と生産は特に容易でした。中国などの漢字文化圏と違って、アルファベットには26文字しか種類がないからです。

 こうして発達した印刷技術は、ヨーロッパの多くの人々の間に、広く知識を届ける役割を果たしました。たくさん本を刷ることができれば、たくさんの人に情報が行き渡りますよね。


 ここでルターの話に立ち返ってみましょう。


 ルターの基本的な主張は、「聖書に書いてあることに従い、心の内面から信仰を行なうこと」です。

 これを実行するには、人々が聖書の中身を知っていなければなりません。聖書を民衆にも理解してもらう必要が生まれたのです。

 これは難題でした。これまで聖書と言うのは、ラテン語で書かれており、教会などにのみ置かれていて、一般の人からは遠い存在だったのです。


 そこでルターは新約聖書をドイツ語訳しました。

 これが、活版印刷によって刷られました。


 専門家でなくても読解できる聖書が、大量生産できるようになったのです。

 読める、しかも手に入る。聖書はぐっと「親しみやすい」存在になりました。


 こうして、聖書の内容およびルター派の教えが、人々の間に広く知られました。信徒を多く獲得したルター派は、急速に力をつけていき、大きな勢力となって、その後のヨーロッパや世界の歴史を大いに揺るがすことになります。


 人々に知識を広めることができる活版印刷技術は、世界史上においても非常に重要な役割を果たしたのですね。

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