線香花火
ばみ
線香花火
まだ、私は蕾でもない。
最後の線香花火が地に落ちた。私の夏は落ちもせず終わった。私が友達と呼べる人は少なく、いつも決まって3人で遊んでいた。しかし、この夏の友達は線香花火だけだった。
え、友達の2人はどうしたのだって? 聞きたい? え、聞きたくないの。いや、お願いだから聞いて!
今の時代、ネットがあれば何でもできる。そう、憧れた有名人に会うことも自分が憧れられる有名人になることも。多分、これを書いちゃっている人もそれを夢見ているんじゃないの。まあ、これは置いといて、友達2人ともネットの力で有名になっちゃったわけ。そんなことで私だけが一人ぼっちになっちゃった。
それで私、思っちゃったことがあるの! 人と線香花火ってめっちゃ似てるって。そう思わない? え、何言っているかわからないって! それじゃあ、今から説明するからよーく、耳の穴かっぽじって聞いときな!
線香花火をWikipedia見てみたら、着火からの線香花火の状態に名前がついているんだって。まず、花火に火を付けると火薬の部分が丸くなっていくよね。この状態を『蕾』ってい言うんだって。その後に火薬の部分がパチパチってなってもうすぐで弾けそうってなるときの状態を『牡丹』って言うんだって。このときのまだかな、まだかなって感じのハラハラ感が私は堪らないんだよね。ごめん、ごめん、話が脱線しちゃったね。えーっと、その『牡丹』の後が、線香花火の最大の見所の激しくバチバチバチって四方八方に火花が飛び散っているときの状態。これを『松葉』って言うんだって。このとき、みんな映える写真を撮ろうと必死になっているよね。私もその一人。そんなことより、火花が一気に飛び散った後はどんどん線香花火の勢いが衰えていくよね。このことを『柳』って言って、最後に燃え尽きて落ちそうな時を『散り菊』って言う名前になっているんだって。
私もね、調べてみて初めてこんな名前があるんだって知ったんだ。ん、え、なになに?人と線香花火が似ている理由の説明は?って。焦るな焦るな、ほとんどの人わからなかったでしょ、一番最初の一文。まずは説明するのにも相手の知識が無いとわかりやすい説明が出来ないでしょ!これからするから、人と線香花火が似ていることの説明を。
今、色々な世界で活躍している人達って、何かのきっかけがあって今、輝いていると思うの。線香花火も同じで、火薬に着火というきっかけがなければ輝かないよね。
そして、人は輝くために挑戦をし続けないといけないと思う。私はそれをやらなかった。それをやった友達二人は今、各々の世界で活躍している。一人は小学校から続けているスポーツで、もう一人は自分の持つ特技で。
スポーツで輝いている友達は、この夏のインターハイで優勝をした。その友達の輝くきっかけは、中学の頃のやりきれなかった思いだった。その友達は中学3年の最後の大会の前日の練習で足を痛めてしまった。肉離れだったそうだ。それにより、試合に出ることができず、チームはその友達がいなかったためか、初戦で負けてしまった。その友達のチームは新人戦で全国まで進んでいた強豪でその中心メンバーの一人がその友達だった。そのため、その友達は自分のせいで負けたと強く自分を憎んでいた。そこから、その友達は漫画の主人公が歩むように進み、今、こうして輝いている。
もう一人は、ギターの演奏で今、SNSを中心に輝いている。その友達の輝くきっかけは私らしい。元々はギターではなく、バイオリンをやっていた。元々、ギターをやっていたのは私だった。その友達は私の家を度々訪ねては私の弾くギターの音色に魅了されていった。そこで、その友達はギターを弾きたいと思い、バイオリンを辞めてギターを始めた。そして、この夏に遊び半分でSNSに投稿したギターの演奏が美しいとバズりまくって、今、その友達はファンのために日々、ギターの練習に明け暮れている。
そんな二人がいても私はきっかけを自分で潰してしまっていた。高校に入った頃、私はスポーツで輝いている友達に一緒にやらないかと誘われていたが、自分でやってもいないのに無理だと決めつけて断った。ギターの演奏で輝いている友達にも一緒に演奏したものSNSに上げてみよ、とまだ輝く前に誘われていたが、恥ずかしいの一言で断ってしまった。
『散り菊』、私はこれを人に置き換えると挫折だと思う。『松葉』という輝きを通さなければ、挫折することもできない。輝きを知らずに挫折したと思うのであれば、それはまだ挫折ではない、私と同じで逃げているだけだ。人と線香花火は似ていると言ったが、似ているどころではない、まるっきり同じである。
人はきっかけという着火から輝くための準備の『蕾』。そこから、少し輝き出した『牡丹』。各々の世界で時の人になる『松葉』。プレッシャーに押しつぶされそうな『柳』。挫折を経験する『散り菊』。このように人は回っているのだと思う。例えば、スポーツで輝いている友達で考えると、最後の大会前の怪我が『散り菊』であり、またきっかけでもあった。
線香花火が終わると新しい線香花火に火をつけるように、『散り菊』は人が真新しく変わる時でもある。
それなのに、私は何をしているのだろう。私は湿気った線香花火なのだろうか。私は自分に嫌気が刺していた。
私はこれから輝く。
線香花火 ばみ @bami_409
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
切れた、しつけ糸/ばみ
★6 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
烏有文集(うゆうぶんしゅう)2024年版最新/そうげん
★11 エッセイ・ノンフィクション 連載中 359話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます