共有しよッ!

星埜銀杏

その一、レアポテチ

 …――僕は昔を懐かしみます。


 静かに佇み、この気持ちを共有したいと願います。


 とても不思議な味で、その味がクセになるポテチを食べながら。


 パリと。


 そうですね。なにから話しましょうか。ええっと?


 僕には愛する人がいました。その人は、もう地球にはいません。


 性格がくせ者で、付き合っているとクセになる感じの人でした。


 そうですね。ある日、その愛する彼女から衝撃的にも程がある告白をされてしまいます。10年近く付き合って初めて知る数々の事実をです。とても信じられないような事の告げられてしまうのです。返事に困るような、そんな感じなものです。


 けども、


 暴露される少しだけ前から話し始めた方が、色んな意味で良さそうにも思えます。


 そうですね。そうしましょう。


 その日は、数日前にプロポーズを決めて返事を待っているドキドキな状態でした。


 もちろん、愛する彼女へのプロポーズなわけです。


 そして、何気なく、いつも買い物をするスーパーに行きました。


 もちろん食べ物や消耗品を買う為。馴染みのお店ですから、どこに何があるのか把握しています。なので、さほど時間は、かかりません。あとは、お菓子コーナーを横切ってレジに向かうだけ。さあ、早く帰ろう、と早足でレジへと急ぎます。


「あれ?」


 と驚いて、思わず、ひとり言。


 そうなのです。お菓子コーナーにあり得ない物が在ったのです。


 つまり、限定味のレアポテチを発見したわけです。


 そのポテチはレアと呼ぶに相応しいもので、買う事はもちろん、商品として置いてあるのを見たものすらいない四次元的な物です。存在すらもあやふやな代物だったという事です。まさか買える時がくるなどとは露ほどにも思っていませんでした。


 無論、念の為に周りを確認して安全確保ののち、レアポテトを買い物かごの中へ。


 かごの中に入れたあと何故だかビクビクして会計を済ましてスーパーを出ました。


 出たあとスマホをポケットから取り出してレアポテチをパチリ。


 写真を撮って、共有する為に。


 もちろん、愛する彼女とです。


 レアポテトの画像を添付してメッセージを送ると直ぐさま返事が返ってきました。


 苦笑いでしょうか。スタンプだけなのですが困ったような熊の顔が印象的でした。


 僕は思います。自分が先に手に入れたかったレアポテチを僕が先に手に入れた事が気に入らなかったのか、それとも、そもそもレアポテチに興味がなかったのか、などと、少々、困惑しました。そして、ともかく帰ろうと自宅へと足を向けました。


 と、続けて返事がありました。


 大事な話がしたいからさ。これから呑みに行かない? とです。

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