4.リニモからJR
透一は夢見心地から現実に戻りつつ、リニモ、愛知環状鉄道、JRと乗り継いで帰る。
(こんな出会いがあるとか、まじで万博って良いイベントだわ)
透一は元から万博反対派ではないが、実際ここ長久手で行われている万博が「自然の叡智」などの大それたテーマに見合ったものだと思えるほど素直な人間でもなかった。
だからエキゾチックな異国の異性と出会うという即物的な出来事があって初めて、透一は万博のありがたみを実感する。
(それにしても『あなたが外国の異性に興味にあるように、私も日本の男の人に興味があります』って、彼女はどんな意味で言っとったんだろ。このお付き合いは、社会勉強だってことか?)
JRの車窓の外の家々や工場の灯かりをじっと見つめて、透一はサフィトゥリと交わした会話ついて考えた。
食堂で話していたときから薄々なんとなく感じていたが、サフィトゥリが透一に向けている興味は恋愛に結びついているわけではなさそうだった。
サフィトゥリは宇宙人が地球人を観察するように、透一を見つめている。
だからサフィトゥリに透一の考えていることがわかっても、サフィトゥリの考えていることは透一にはわからない。
(だけど綺麗なだけじゃない、そういうミステリアスなところがまたいいんだよな)
透一はすっかりサフィトゥリの謎めいた言動に魅了されて、そわそわした気持ちをこらえる。サフィトゥリのことを考えると、普段は長い気がする乗車時間もあっという間に過ぎ去った。
今日から透一にとっての万博会場でのアルバイトは、ただのアルバイト以上の価値が待つ時間になるのだ。
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