Episode 51「アキ」
「えっと、トッププレイヤーのコスプレ、とか、なりきり、とかじゃないよね?」
「そんなのしないよ……」
「じゃあ、本当に、あのトップの、アリスちゃんを泣かせた、ツユってこと?」
「うん、間違ってはないだけど、『アリスちゃんを泣かせた』って言うの、やめてほしいな」
「別にトッププレイヤーのツユが悪いとか思ってたわけじゃないんだけど、事実だし」
「ぐっ。ま、まぁ、その通りなんだけど」
「にしても驚いたぁ。確かに、言われてみればお姉ちゃんに似てる……というかお姉ちゃんだ……」
「あそこまで叫ばれるとは思ってなかったけど」
「そりゃ叫ぶでしょ。好きなゲームの、イベント一位が、最近始めたばかりの実のお姉ちゃんだったんだよ? どんな確率よ」
「まあ確かに……」
「ん? てことは、昨日の戦争はお姉ちゃんが潰したことになるんだよね?」
「潰したって……んまぁ、そうだけど」
「ということは、だよ」
「ん?」
「昨日、私との約束を忘れた理由に、この戦争が絡んでたということになるね。なるほどなるほど、それなら納得だよ」
「当然のように戦争のことを知られていたのはともかく。お昼以降は戦争も終わってたわけだし、私が悪いよ、本当にごめんね?」
「うん、お姉ちゃんが悪い」
自分から言ったのに、わざわざはっきり言わなくても……いや事実なんだけどさぁ。
「んー。ま、私でも、自分が当事者になった戦争に朝から参加したら、そりゃ約束のひとつやふたつ忘れるからね。今回は許してあげるよ」
「それはそれで良くないとも思うけど……ありがとね」
「ぬへへ~。――そんじゃ、三層でも回る?」
「ん。そうしようかな」
「オッケー! 私が三層の穴場を隅から隅まで教えてあげるよ!」
「お手柔らかに」
◇ ◇ ◇
◇トートン村◇
森を少し進めば、ある村に辿り着いた。
村と言っても、見た感じとても大きな村だった。昨日攻略した山のストーリーダンジョンでイベントをこなしたあの村とは大分の差があった。
あっちあっちで、静かそうな雰囲気がして個人的には好きだけどね?
だけどこのトートン村は真反対。街と呼んでもおかしくないくらい、賑やかだ。
本物の二層の街と比べると、城も無く、カジノやギルドなど、大きな建物もあまり無かったけど、お店は多いし、NPCやプレイヤーもいて、賑わっていた。
アキに聞いたんだけど、ここは『商業の村』と呼ばれてるらしく、お店が多く品揃いが良いことに納得できた。プレイヤーの中にも、ここにお店を持つ人は多いとか。
それで今日は、この村を隅から隅まで紹介してくれるらしい。うん、アキもめっちゃ気に入ってるようだった。
◇スキルショップ◇
「おぉ~! 二層のよりも大分多い……」
「でしょでしょ! レア度的にはあっちに敵わないんだけど、それでも掘り出し物とかを見つけによくここに来るんだ~」
なるほど、古本屋さんみたいな感じかな?
それとも、百均に通う感覚なのかな? 安くて、すこしでも役立ちそうだと、ついつい買っちゃうみたいな。まぁ百均はあんまり行かないけど。というか、私ってば宝箱で入手したスキルを習得するはいいものの、大半が使うじまいなんだよね……。
いつか、スキル整理とか、能力のお試しとか、そんでもって強そうだったら今後も使ってみたり。そういうことを近いうちにしよう。うん。そうじゃないとなんか勿体ないし……。
(SR)
――『トレジャーマップ』――
・パッシブスキル
――【EFFECT】――
・同フィールド内の、マップ、プレイヤー、モンスター、宝箱、特殊部屋、トラップ、などがあらかじめマップに記載される
――――――――
(5ゴールド)
――『DROP・UP』――
・パッシブスキル
――【EFFECT】――
・戦闘終了後のドロップ品を20%の確率でひとつ増やす
・ドロップアイテムのレア度が上昇する
――――――――
(6ゴールド)
(R)
――『自爆』――
・パッシブスキル
――【EFFECT】――
・魔法やスキル使用時に自らのHPを削る場合、自爆攻撃の威力が上昇する
――――――――
(80シルバー)
――『棘』――
・パッシブスキル
――【EFFECT】――
・拳などの直接的な物理攻撃を受けた場合、攻撃者にダメージを与える。
・ダメージは受けた攻撃の威力に依存する
――――――――
(3ゴールド)
うん、確かにSRやRでも使えそうなものがいくつもある。
勿論それらは即買いしたんだけど、まぁやっぱりと言うべきか、私はレア度の高いひとつのスキルに目を輝かせた。
(SSR)
――『居眠り術』――
・パッシブスキル
――【EFFECT】――
・あらゆるパーセンテージが10%上昇する
――――――――
(4ゴールド)
私にピッタリだ。というか、これのおかげで今の私があると言っても過言じゃないと思う。
『道化師のナイフ』のスキルバージョン。
まあ強い分、習得条件がLUK1000以上という、難しいのかそうじゃないのかよくわからない条件だったけど、私の低くなったステータスでも普通に超えてたから迷わず買った。
これであらゆる確率が30%上昇することになる……。もうね、ちょっとだけ吹っ切れたのよ。
当然BANの危機は免れないのだけど。でも今すぐにそうされるってこと無いだろうし、今日のお昼に社長さんと会うし、その時にさらっとお願いしておこう。
「んー……」
「アキ? どうしたの? 買ったげようか」
「え、良いの?」
「うん。お金はあるしね」
「え、えっと、別に大丈夫だよ。全部買っちゃうとめっちゃ高いしさ」
「どれなの?」
アキが欲しいと言うスキル巻物を全部聞き出す。
ひとつひとつが高いというよりも、量が多かった……。
全部で23本……計47ゴールド20シルバー。
それでも50ゴールドにすら満たない。
贅沢なことに、正直これくらいは今の私にとってはした金だね。ほんと、贅沢なことに。
「良いよ、全部買ってあげる」
「うん、ありがと――え、全部?」
「大丈夫、お金はあるから」
「あ、あるの!? いやいや、あったとしても、中々の大金だよ? 自分で言っておいてなんだけど、別にこれ全部が今すぐ欲しいってわけじゃないし――」
「大丈夫大丈夫、全部買っても、150ゴールドくらい余るから」
「だ、ダメだよ! 一気に半分以上も使っちゃうなんて」
「え? なんで半分?」
「え? だって……――あれ? 今、なんて言ったの? 15ゴールドって言ってなかったっけ?」
「いや……150ゴールド」
「……………………」
「……………………」
「――はあぁぁぁああッ!?」
「……それに私って、装備とか武器とか、スキル巻物以外のアイテムにすらお金使わないから、これくらい平気だよ。カジノポイントも貯まってるし……」
「――あ、うん、そう言えばカジノの事件もお姉ちゃんが引き起こしたんだっけ…………」
「私はただゲームをプレイしただけなのになぁ……。はぁ……、まぁいっか。とりあえず、スキル巻物買っておくね」
「あ、あぁ、うん……ありがとうございます……」
――【ツユ】――
・LV「26」☆
▷MONEY「25,456,380」
▷CASINO「40,000,000」
――【STATUS】――
・POINT「0」
・HP「760/760」
・MP「760/760」
・SP「760/760」
(全ステータス60%上昇)
▷STR「228」(760)
▷VIT「228」(1160)
▷INT「228」(160)
▷DEX「228」(350)
▷AGI「988」(530)
▷LUK「2280」(50)
――【WEAPON】――
▷両手「白龍鱗のショットガン」
▷右手「道化師のナイフ」(納刀中)
▷左手「道化師のナイフ」(納刀中)
――【ARMOR】――
▷頭「毒龍のヘルム」
▶手
▷右「毒龍のガントレット」
▷左「毒龍のガントレット」
▷胸「毒龍のアーマー」
▷腰「毒龍のスカート」
▷足「毒龍のブーツ」
▷その他
「毒龍のマント」
「毒龍の心臓」
――――――――
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